2003年09月22日「構造デフレの世紀」「超入門 日本国債」「大感動!」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「構造デフレの世紀」
 榊原英資著 中央公論新社 1400円

 著者は元大蔵省財務官、現慶大教授の論客ですね。「ミスター円」と言えば、この人のニックネームです。

 さて、今日、小泉内閣が発表されましたが、株は今年最大の下げ幅(500円)、3円もの円高。これは手痛いマーケットからの仕打ちですな。おそらく、竹中さんをめぐる人事問題が注目されたのでしょうか。

 この本は今年三月の発刊ですが、今回はもっと最新ニュースをお届けしたいと思います。
 著者によれば、株価が一万円を超えた理由は、8月の第3週、第4週に異常事態が発生したことによるものだと喝破しています。外国人の買い越しが第3週の一週間だけで四千億円、第4週は五千五百億円。つまり、たった二週間で一兆円の買い越しなんです。これは上がるわけです。
 情報によれば、外資系証券会社のトレーダーなど、日本株を今後も買っていくと断言してるほどですから、まだまだ上がるかもしれません。
 この三年ほど、外国人投資家は日本株から避けてました。専門用語で言うと、「アンダーウェイト」だったわけです。それがこの二週間で、「よし、買いだ!」とばかりに一挙に買い越し。オーバーウェイトですね。この間、日本の機関投資家はまったく売りっぱなしですから、マーケットではそれ以上に外国人の買いが目立ったというわけです。 

 株価が上がる理由は、政治、戦争などの国際情報、政策、政治家の発言、選挙などの国内事情もありますが、やはり、企業収益がポイントです。去年の上四半期から中間くらいで企業収益は底を打ち、上昇局面に来ています。リストラはもははや常態化し、設備投資も戻りつつあります。
 バブル崩壊後から十年間、設備投資は一方的に右肩下がりできました。前年対比マイナスが続いているのですから、株価があがるわけがないのです。
 どうして、設備投資をしなかったか?
 そんな資金があれば、銀行に返そうとしてきたんです。なにしろ、ものすごい貸し剥がしでしょ。どんどん金融機関に返してきたんです。企業人もこれからは直接金融の時代だ、と心底、認識したと思います。「銀行なんて当てにしてたら、馬鹿を見る」と気づいたはずです。
 本格的に景気が戻ってきた時、日本企業は銀行をドライに見捨てるかもしれませんね。
 血のにじむようなリストラ、構造改革を通じて、ここにきて、ようやく収益が上がってきた。将来への投資である設備投資にも明るい兆しが見えてきた。だから、株価が上がってもおかしくないのです。

 日本の機関投資家はいまがチャンス、と持ち合い株を売っぱらうと思いますが、外国人投資家は放出株をここがチャンスと買い越しているわけです。
 売り買い、どちらもチャンスと考えています。どちらが正解でどちちらが間違いなのではありません。金融機関や生保など、体力の弱いところは持ち合い株など持っていても、もうなんの役にも立ちません。売れる間に売っておけ、というわけです。
 アホなことです。
 いまこそ、買いのチャンスなんですよね。

 日本企業のいちばんアホなところは、縦割り組織という点です。「縦割り行政」という言葉は聞いたことがあると思いますが、企業も縦割りなんです。
 たとえば、資産運用セクション。同じ会社なのに、株式運用部と債券運用部は違います。よく見れば、隣同士のセクションなのに、連動したり、関連したりして、コラボレーションが行われていないのです。
 結果、どんなことが行われているかというと、株価があがって株式でボロ儲けしているのに、債券は大損するからといって、一挙に売りに出してしまう。いわゆる、「ロスカット(損切り)」です。面白いことに、日本の機関投資家は、ここまで下がれば自動的にロスカットにできるようにパソコンで管理しています。そして、さらにおかしいことにこのことを外国人投資家にも読まれているのです。
 「この値段になると、なにも考えずにあいつら売るぞ」というわけです。

 しかし、よく考えればわかる通り、資産運用の基本は分散投資です。
 資産全体を見たら儲けています。慌てて売ることはないのです。ところが、「パソコンの指示通り」に機関投資家はみんな慌てて売ってしまいます。当然、債券価格は暴落します。
 暴落することがわかっている外国人投資家は、底値でしめしめと買い占めてしまいます。ヘッジファンドはボロ儲けです。
 早い話が一部の戦局ばかり見て、戦争全体を見ていないのです。「戦略がない」といってもいいでしょう。巨人軍と同じで、捨てゲームが作れない。損して得とれ、ができない。
 機関投資家といえども、やはり、サラリーマン根性なんです。

 ところで、デフレと不況は違います。
 デフレは物価が下がること。これは今後、景気が持ち直してもも下がると思います。だって、国民にとって物価が下がって困ることないもの。アリの涙ほどの銀行金利、これからほとんどもらえなくなる年金、リストラで生活は不安。物価ぐらいガンガン下がって欲しいものです。
 そういうと、必ず、この不況はデフレ不況なのだ、と言い張る人が出てきますが、不況は物が売れなくなること。企業が儲からなくなること。雇用がなくなること。給料が下がること。リストラされること・・・です。
 しかし、いままでメーカーは物が売れればどんどん値段が下がってきたはずです。デフレが怖くて、ディスカウントストアができますか? 儲からない体質の会社、マネジメントが悪いから、儲からないのであって、デフレの責任してはいけません。

 いま、アメリカは今年下半期で4パーセント以上の成長をすると思います。でも、物価は上がりません。デフレ下の景気回復を実現しそうです。
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2 「超入門 日本国債」
 千代田圭之著 平凡社 720円

国債って知ってます? 持ってます?
 「日本の借金が増えている」とか、「こんなに発行して大丈夫なの?」とか、国債というと心配になり、不安になります。なにしろ、国家予算の半分近くが国債発行でまかなわれているんですからね。

 国債は国の借用証書です。債券を発行し、それを売ってたくさんの人たちからお金を集め、それを事業資金に回しているわけです。ということは、国もビジネスをしてるわけです。
 中には、そのビジネスが特殊法人の愚かな経営者、ずるい職員のために、永遠に採算が取れない事業になっているのは「カンポの宿」などでご存じの通りです。
 あれほどの失敗はとても偶然にはできません。わざとでなければ、できない芸当だと思います。

 今年の三月十日から、個人国債が日本でも発行されることになりました。完売ですね。
 個人国債は十年満期商品です。従来の国債は五万円からしか買えなかったんですが、これは一万円から買えます。
 金利は半年ごとの金利情勢で決定される変動金利というやつです。
 幸い、下限が0.05%と決まってますから、金利がこれ以上下がったとしても、これ以下にはなりません。実際、一回目の金利は0.09%、二回目は0.05%でした。これは銀行の十年もの定期預金よりは低く、郵便局の定額貯金よりは少し高いといったところでしょうか。

 国債は金融機関に口座がなければ買えません。といっても、簡単に口座など作れます。
 銀行の場合、年間1260円の維持管理費が取られますけれど、証券会社、郵便局は無料サービス。だから、絶対、銀行で買っちゃダメなんです。
 たとえば、百万円だと、利子より手数料のほうが高くなります。手取り利率が0.072%だから百七十五万円以上の個人国債を買わないとペイしません。

 元本保証の国債は現金と同じ。デフレに強く、またインフレだと金利が上がるチャンスも出てきます。
 しかも、2002年の税制改正で、65歳以上の人が個人国債を買った場合、預貯金などと合わせて三百五十万円までの元本に支払われる利子は非課税です。

 ところが、この国債。アメリカでは15%、イギリスだと7.4%の保有率。しかし、日本ではなんと3%以下。やはり、よっぽど政府が信用できないんですな。
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3 「大感動!」
 近藤勝重著 新潮社 1300円

 以前、この人の本で「つかみの大研究」という本を買ってしまいました。タイトルに騙されてしまったわけですが、その後、この本は文庫にもなり、そこそこ、評判を呼びました。
 わたしとだけ相性が合わなかったんでしょうな。

 本書は、おそらく、女子大生にアンケート調査して、集めたネタでまとめたんだと思います。
 たとえば、「北の国から」「高倉健さん」「加藤登紀子さん」「寅さん」「童謡」「泣ける本」「富士山」「スーパー歌舞伎」「千と千尋」「ムーン・リバー」「戦場のピアニスト」「たそが清兵衛」「星野監督」「稲垣吾郎の復帰」・・・挙げ句の果ては「小泉総理」までが登場します。

 わたしは感動とやる気は教えることができない、と考えています。
 それを「これは感動できるぞ」「これも感動ものだ」と、これでもか、これでもかと押しつける本はホントに珍しい。
 あまりユニークなんで、取り上げてみました。

 いま、感動するネタを探してるんです、という方、ぜひご一読を。
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