2007年04月23日「国家と神とマルクス」 佐藤優著 太陽企画出版 1680円
出ましたね、愉しみにしてました。佐藤優さんフリークの私としては、心待ちにしていた1冊です。
「タイトルがどうもねぇ」「今ごろ、マルクス?」と感じる人もいるかもしれませんね。けど、そこは稀代のインテリである著者にしたがってじっくりチェックしてみましょう。すると、ああそういうことか、と胃の腑にすとんと落ちてくると思いますよ。
帯に「ウルトラ・ダラー」の手嶋龍一さんが推薦の辞を贈っています。曰く、「著者を襲った試練の日々は、真のインテリジェンス・オフィサーを日本に誕生させた」とあります。
たしかに、外務省に語学屋はいても、これだけの交渉屋がいたとは驚きです。いま、北朝鮮の拉致問題が閉塞状態にあるのも、外務官僚の怠慢というよりも無能にその真因があり、鈴木宗男さんがこの「ラスプーチン」を重用した理由も、仕事人間の鈴木さんならではのキャスティングと理解すべきでしょう。
国民は1度誤りました。けど、その後、鈴木さんをカムバックさせ、ラスプーチンにはメディアの寵児として復活させるチャンスを与えた。
この間、外務省と外務官僚、そして国家の意思に与した検察庁と特捜検事の実態のみがあぶり出される結果となったようです。
いま、全国的に立て続けに検察の捜査ミスが発生しています。ラスプーチンではないけれども、捜査における国家権力の強大さは弁護士とは比較にならないのです。捜査権、証拠集め、証人召集、そして弁護士側証人への圧力等々、捜査権力は国家権力のためにはどんなことでもするわけで、そこには「真実の追究」など欠片のあるわけがありません。
2007年1月31日、東京高裁はラスプーチンの控訴を棄却。懲役2年6ヵ月、執行猶予4年という一審判決を支持しました。
「このような結果になることは最初から予測していた。国家が総力をあげて作り出した事件を被告人と弁護人の力で跳ね返すことはできない。日本の刑事裁判は起訴された事件のうち、なんと99.9%が有罪になる。この有罪率は旧ソ連よりも高い。
しかし、負けるとわかっていても最後まで筋を通して戦わなければならないときが人生にはあると思う。従って、弁護人に即日上告の手続きをとるようにお願いした」
負けることを承知で、売られた喧嘩を買う。これは武士の魂があればこそできる仕業であり、現在の外務官僚のような根っからの町人にはとうていできないことなのでしょうな。
いま手元に「月に響く笛 耐震偽装」という1冊の本があります。著者はイーホームズ社長の藤田東吾さん。元々、文藝春秋が出版を確約し、「たとえあなたが死んでも出版します」と幹部が約束したにもかかわらず、本人が生きている間に反故にした曰く付きの本です。
まだ、日本には出版人の良心が残っているらしく、自費出版の本を山下書店のトップがすくい上げ、講談社に繋いで今週、いよいよ出版されることになりました。「通勤快読」でもご紹介する予定です。
この本は私の講談社本を一貫して担当してくれている局長と編集者によってこの世にもう1度息を吹き返してわけです。捨てる神あれば拾う神あり。
藤田さんもラスプーチン同様、負け戦を覚悟で筋を通す武士の1人として、われわれは拍手喝采を贈るべきではないか、と思います。
耐震偽装を見破れなかった人間にどうして拍手なんか・・・と言いたい人もいるでしょう。だが、彼が真実を述べなければ、今ごろ、どうなっていたかを想像してみてはどうでしょうか? あのアパグループの経営者ご夫婦もニコニコとテレビに出ずっぱりでホテルも繁盛、マンションも完売でしょうね。
「政治裁判とはこんなものだ。もし事件発生当時の外務大臣が麻生太郎氏で、外務事務次官が谷内正太郎氏だったならば、このような事件は作られなかったと確信している」と、ラスプーチンは述べている。
たしかに、この2人ならば少なくともこんな姑息な手段には与しないはずだ。
「サッカーで言うならば、ゴールキーパーであるべき検察官僚が、プレゼンお客ワードが弱いからといって前に出てきて、しかも手を使っているというのが国策捜査だ。その結果、国民に検察の政治性が見抜かれ、司法の権威が落ちる」とラスプーチンは述べている。
一連のミスリードによって、「検察は死んだ!」とは私はけっして思わない。それどころか、むき出しで挑んできているとさえ感じますな。
本書は、佐藤さんの自己弁護の本ではない。佐藤流の情報の読み解き方、歴史観、政治観、人物観、そして外交論と哲学をあますところなく語りかけてくれるものだ。
まずは「あとがき」から読み進めることをお勧めする。理由は? 読めばわかる。300円高。
「タイトルがどうもねぇ」「今ごろ、マルクス?」と感じる人もいるかもしれませんね。けど、そこは稀代のインテリである著者にしたがってじっくりチェックしてみましょう。すると、ああそういうことか、と胃の腑にすとんと落ちてくると思いますよ。
帯に「ウルトラ・ダラー」の手嶋龍一さんが推薦の辞を贈っています。曰く、「著者を襲った試練の日々は、真のインテリジェンス・オフィサーを日本に誕生させた」とあります。
たしかに、外務省に語学屋はいても、これだけの交渉屋がいたとは驚きです。いま、北朝鮮の拉致問題が閉塞状態にあるのも、外務官僚の怠慢というよりも無能にその真因があり、鈴木宗男さんがこの「ラスプーチン」を重用した理由も、仕事人間の鈴木さんならではのキャスティングと理解すべきでしょう。
国民は1度誤りました。けど、その後、鈴木さんをカムバックさせ、ラスプーチンにはメディアの寵児として復活させるチャンスを与えた。
この間、外務省と外務官僚、そして国家の意思に与した検察庁と特捜検事の実態のみがあぶり出される結果となったようです。
いま、全国的に立て続けに検察の捜査ミスが発生しています。ラスプーチンではないけれども、捜査における国家権力の強大さは弁護士とは比較にならないのです。捜査権、証拠集め、証人召集、そして弁護士側証人への圧力等々、捜査権力は国家権力のためにはどんなことでもするわけで、そこには「真実の追究」など欠片のあるわけがありません。
2007年1月31日、東京高裁はラスプーチンの控訴を棄却。懲役2年6ヵ月、執行猶予4年という一審判決を支持しました。
「このような結果になることは最初から予測していた。国家が総力をあげて作り出した事件を被告人と弁護人の力で跳ね返すことはできない。日本の刑事裁判は起訴された事件のうち、なんと99.9%が有罪になる。この有罪率は旧ソ連よりも高い。
しかし、負けるとわかっていても最後まで筋を通して戦わなければならないときが人生にはあると思う。従って、弁護人に即日上告の手続きをとるようにお願いした」
負けることを承知で、売られた喧嘩を買う。これは武士の魂があればこそできる仕業であり、現在の外務官僚のような根っからの町人にはとうていできないことなのでしょうな。
いま手元に「月に響く笛 耐震偽装」という1冊の本があります。著者はイーホームズ社長の藤田東吾さん。元々、文藝春秋が出版を確約し、「たとえあなたが死んでも出版します」と幹部が約束したにもかかわらず、本人が生きている間に反故にした曰く付きの本です。
まだ、日本には出版人の良心が残っているらしく、自費出版の本を山下書店のトップがすくい上げ、講談社に繋いで今週、いよいよ出版されることになりました。「通勤快読」でもご紹介する予定です。
この本は私の講談社本を一貫して担当してくれている局長と編集者によってこの世にもう1度息を吹き返してわけです。捨てる神あれば拾う神あり。
藤田さんもラスプーチン同様、負け戦を覚悟で筋を通す武士の1人として、われわれは拍手喝采を贈るべきではないか、と思います。
耐震偽装を見破れなかった人間にどうして拍手なんか・・・と言いたい人もいるでしょう。だが、彼が真実を述べなければ、今ごろ、どうなっていたかを想像してみてはどうでしょうか? あのアパグループの経営者ご夫婦もニコニコとテレビに出ずっぱりでホテルも繁盛、マンションも完売でしょうね。
「政治裁判とはこんなものだ。もし事件発生当時の外務大臣が麻生太郎氏で、外務事務次官が谷内正太郎氏だったならば、このような事件は作られなかったと確信している」と、ラスプーチンは述べている。
たしかに、この2人ならば少なくともこんな姑息な手段には与しないはずだ。
「サッカーで言うならば、ゴールキーパーであるべき検察官僚が、プレゼンお客ワードが弱いからといって前に出てきて、しかも手を使っているというのが国策捜査だ。その結果、国民に検察の政治性が見抜かれ、司法の権威が落ちる」とラスプーチンは述べている。
一連のミスリードによって、「検察は死んだ!」とは私はけっして思わない。それどころか、むき出しで挑んできているとさえ感じますな。
本書は、佐藤さんの自己弁護の本ではない。佐藤流の情報の読み解き方、歴史観、政治観、人物観、そして外交論と哲学をあますところなく語りかけてくれるものだ。
まずは「あとがき」から読み進めることをお勧めする。理由は? 読めばわかる。300円高。