2003年01月27日「授業の腕をあげる法則」「60分間・企業ダントツ化プロジェクト」「デザートのカリスマ」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「授業の腕をあげる法則」
 向山洋一 明治図書 860円

 一流の上司なら、部下を変えていく技術を持っています。
 というのも、技術というのは、だれがやっても、いつやっても、どこでやっても、同じ成果ができるものだからですね。ダメな会社に再建屋と称する人間が乗り込んだとたん、あっという間に経営が改善されてしまう。こんなことはよくありますね。
 これは方法論を知っているからです。
 この方法論のことを「原理原則」というんです。

 さて、著者は学校の先生です。
 そして、向山式という教育実践方法に取り組み、その技術を全国に広げている改革者ですね。
 「一時に一事の指示をせよ」
 「くどい説明はするな」
 「全体に大きな指示をせよ」
 「常に励まし続けよ」
 「公平であれ」
 具体的にテーマを設定し、自分の原理原則を解説するスタイルでまとめられています。

 跳び箱の跳べない子供たちを、どうやって一時間以内に跳ばせることができたか。
 あぁ、こうい方法なら、跳べるな。合点のいく方法で指導しています。

 著者はもっとも遅れている教育という分野に、もっとも進んでいる企業教育のスキルを応用し、実験し、検証しているような気がします。というのも、中で紹介されるキーワードはほとんど、ビジネスの世界では常識ですもの。
 たとえば、「指示には3種類ある」というフレーズは、「号令、命令、訓令」のことでしょ。著者は訓令については紹介してませんでしたけど、これってマネジメント用語じゃないですか。
 教育者はもっともっとマネジメントの勉強をしたほうがいいんです。他分野、他業界の人ともっともっと話をする。これが大事です。
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2 「60分間・企業ダントツ化プロジェクト」
 神田昌典著 ダイヤモンド社 1500円

 マーケティングの世界に颯爽と現れた人ですね。
 本書はいま、アメリカで脚光を浴びているノウハウを余すところ無く紹介しているのではないでしょうか。
 「なんでも第1。すべて重要」ではなく、「うちでは何がいちばん大事か、二番目は何か」と考える。
 「業務改善活動では、毎週月曜日に自分の仕事に関して、アイデアを一つ出す。そしてそのアイデアは実行しなくてもいい」
 「どこにでもある会社」から「スペシャリスト」になる。
 「消費者は怠け者」
 「商品のライフサイクルを考えよ。1顧客はどれだけいるか 2商品コンセプトが伝わるか 3それはこれから拡大できるか」
 「ネーミングの技術を重視する。直観的にわかるか、目的に合致しているか、なじみがあるか、覚えやすいか、記憶に残りやすいか」
 「つき合いたくない顧客から明確にしていく」
 「論理からではなく、感情からのアプローチで絞り込む」

 どれもポイントをきちんと突いてますよ。、
 付加価値が買い手に伝わるかどうかも大事ですね。
 「30分以内に届けます。遅れたら代金はいりません」
 これ一発でドミノピザはあそこまで大きくなったわけですものね。
 サービスの付加価値というのは、内容、効果、価格、品質などたくさんの要素がありますが、もっとも大事なことは「伝わりやすいかどうか」でしょ。
 「おいしくなければ代金はいりません」
 こんなラーメン屋さんもありますものね。で、「まずかったんで、金返せ」というお客はほとんどいませんもの。
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3 「デザートのカリスマ」
 内海悟著 ビジネス社 1300円

この著者は、03年1月度「キーマンネットワーク」の特別講師です。
 パシフィックコンサルタント、ドッドウェルエンドコムパニーリミテッドなどで、営業戦略立案、宣伝販促プラニング、消費開発・分析、マーケットリサーチなどをマスターしたあ、85年にミックビジネスシステム、00年にデザート・カンパニーを創業します。
 この人の名前を聞いたのは、28歳で商社の新商品開発リーダーとして、年商40億円を超えるロングセラー商品を開発したでしょうね。これは、いまでも業界の語りぐさとなってます。

 で、このデフレ不況下、「デザート」を切り口にして、逆風をものともせず、外食、流通、サービス、メーカーをクライアント、たった2年で250社、計1000店舗とコンサル契約を結んで(まだまだ急増中)、連戦連勝の成功を導いてるんですね。

 わたしはデザート、好きではありません。でも、周囲の女性、たとえば、女子大生とか20代、30代の女性から、さらに熟女といわれる人までヒアリングすると、「あたし、デザートの内容で、店、選ぶ」という人が少なくないんですね。
 メインディッシュがいちばん大事でしょうが?
 「メインディッシュって、ほとんど、どこの店も味が変わらないもの」
 そんなものですかねぇ。

 でも、デザートは別腹というのはよく聞きます。ということは、別勘定なんですね。
 ということは、理屈抜きに心をとらえるビジネスでもあるんですな。

 で、著者もデザートを導入したことがない企業、たとえば、居酒屋、回転寿司、カラオケ店などなどから契約をドーンともらってるわけ。
 外食産業はもうアップアップです。努力の上にも努力してます。価格破壊、新メニューの提案をここ数年、短期間に何度も繰り返してます。もう、次の段階は残された盲点、サイドメニューである「デザート」がクローズアップされてるんです。
 和食の世界ではまだ浸透してませんけどね。この世界、まだまだ男性中心のメニュー構成なんですね。だから、客数の落ち込み、売上の伸び悩みで深刻なんですよ。
 いまの時代、女性をつかまえないことには商売なんて成立しませんもの。

 それにね、「はしご」がなくなりつつあるんです。
 もう一店完結型。すなわち、一店舗の滞留時間がそれだけ長くなるってことです。
 そういえば、わたしがよく使ってた「蝦夷御殿」「光林坊」なんて店は、座敷で飲んだ後、もうその場所で二次会セット。引き戸を開けると、ジャジャーンとカラオケがせり出してきますもの。
 なんだ、なんだと驚いてる間に、二次会はもう始まってるというわけ。

 女性が主役なんですね。
 いままで食ビジネスは、「美味しさ」「安さ」「早さ」を求めてきました。効率重視のマニュアル世界でもありました。この食の世界で忘れたモノ、それが「楽しさ」なんですね。

 楽しめる要素は何か?
 それがデザート。
 不思議なことに、原価率を高めに設定してもオーケーですよ。「美味しくて安い」と感じちゃいます。原価率はメインメニューの二倍でも集客アップ、採算も合います。トータルで利益率が上がる。これがデザートビジネスの「魔法のマーケティング」なんです。

 ただし、どんなデザートでもいいかというと、そうではありません。この世界、かなり深いんです。
 たとえば、どんなものでも定番がありますね。洋生菓子ではショートケーキ、シュークリーム、モンブラン、焼き菓子ではフリアン、マドレーヌ、ミルフィーユ、和菓子では饅頭、大福、どら焼き。これが御三家です。
 だから、この定番を外さない仕掛けが大事なんですね。たとえば、「いちご大福」「フルーツあんみつ」といったヒット商品がありますね。これなんか、よく考えれば、イチゴと大福、フルーツとあんみつといった、昔から人気のある食べ物をミックスしただけでしょ。
 デザートというのは斬新さが求められているように見えますが、実は安心して食べられる味、すなわち、定番を外さないことがポイントなんですね。

 この会社の提案では、菓子職人を雇う必要もありません。店側にデザートの知識も必要ありません。それでいて、各店独自の個性的なデザートを提案できるんです。しかも、納入価格100円弱(送料込み)です。それを店頭価格300〜500円で販売できるんですね。
 回転寿司屋でいちばん売れてる商品が「チーズムース」だなんて、初耳ですね。
 小さな会社が儲ける「魔法のマーケティング」のヒントをいろいろ教えてくれる本です。
 もちろん、キーマンネットワーク定例会にもご参加ください。よろしくね。
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