2003年01月20日「経営力」「姫椿」「デザートのカリスマ」
1 「経営力」
別冊宝島編集部 宝島社 552円
山椒は小粒でピリリと辛い。なかなか良くまとまってる本です。なにより、簡単、手軽。
図版を多用して、文字も大きく、十分もあれば読めますよ。
で、内容は?
いいんじゃないの。マネジメント書として読むと、ものたりないかもしれませんけどね。軽い気持ちで取り上げれば、期待を越えることは間違いありません。
「君が変わらない限り、この計画は進まない」
その活動は儲けにつながるのかどうか。
「一を聞いて十を知る」より、「十を伝えるために百を言え」なんて、なかなかいいとこ突いてるじゃありませんか。
上司のやっちゃいけないことは、「責任転嫁」「敵前逃亡」「一人転換」、すなわち、二階に上げて梯子を外すこと。たしかに。
150円高。購入はこちら
2 「姫椿」
浅田次郎著 文藝春秋 1429円
人気作家による、8つの小品が収められている本です。
「シエ」
ネコが死んで、「シエ」という伝説上のとんでもない動物を預かった主人公。この動物は「悲しみ」を食べて生きているんです。コインロッカーベビーとして育った女性。
世の悲しみを一身に背負い、最愛の男にも、いま騙されようとしている。でも、その運命を自分らしい、と彼女は受け容れようとするんです。
だから、この「シエ」は彼女のところにやって来たわけです。
どんどんシェは育ちます。
ですが、ある日、その最愛の男が殴られた。
「あんたはいい女だよ。もっと幸せになれる人なんだ」
だんだんシエの元気が無くなります。最後には・・・。
なぜ?
彼女が本当の幸せをつかみ取ろうとしているからですね。だって、シエの大好物は不幸なんですもの。 ネコ好きな著者ならではの作品ですな。
会社が倒産寸前、借金まみれの不動産屋。とうとう保険しかで、愛する妻に遺せるものはないと判断。
自殺場所をホテルに決めた。タクシーに乗ると、運転手から諭されるものの決意は揺るがない。
妻との想い出の場所まで行くと、そこには昔、懐かしい銭湯が。吸い込まれるように入ると、そこには常連のジイサン二人。説経されながら湯船に浸かり、時間がワープし走馬燈のように想い出がよぎる。
ここはお得意のファンタジックな世界ですな。
さて、主人公はどのように生き方を変えていくか。男はやっぱり過去に引きずられる生き物なんだな。
いちばん好きな作品は「マダムの喉仏」かな。
このタイトルから、どんな連想をあなたはしました?
「トラブル・メーカー」は、大企業のサラリーマン。左遷先にはトラブル・メーカーの異名を取る男が一人。おかげで妻とは離婚するわ、家を売ってオーストラリアの悪名高いコールドコースにいる息子のところへ。
不幸は続く。
どん底まで落ちていく主人公の愚痴ともいえる物語の顛末。
そのほか、もう一人の人間との出会いを描いた「再会」、運命、巡り合わせの喜劇を描いた「零下の災厄」など、いずれも堪能できる作品ばかり。でも、「オリンポスの聖女」と「永遠の緑」は面白くなかったな。
350円高。購入はこちら
3 「デザートのカリスマ」
内海悟著 ビジネス社 1300円
この著者は、03年1月度「キーマンネットワーク」の特別講師です。
パシフィックコンサルタント、ドッドウェルエンドコムパニーリミテッドなどで、営業戦略立案、宣伝販促プラニング、消費開発・分析、マーケットリサーチなどをマスターしたあ、85年にミックビジネスシステム、00年にデザート・カンパニーを創業します。
この人の名前を聞いたのは、28歳で商社の新商品開発リーダーとして、年商40億円を超えるロングセラー商品を開発したでしょうね。これは、いまでも業界の語りぐさとなってます。
で、このデフレ不況下、「デザート」を切り口にして、逆風をものともせず、外食、流通、サービス、メーカーをクライアント、たった2年で250社、計1000店舗とコンサル契約を結んで(まだまだ急増中)、連戦連勝の成功を導いてるんですね。
わたしはデザート、好きではありません。でも、周囲の女性、たとえば、女子大生とか20代、30代の女性から、さらに熟女といわれる人までヒアリングすると、「あたし、デザートの内容で、店、選ぶ」という人が少なくないんですね。
メインディッシュがいちばん大事でしょうが?
「メインディッシュって、ほとんど、どこの店も味が変わらないもの」
そんなものですかねぇ。
でも、デザートは別腹というのはよく聞きます。ということは、別勘定なんですね。
ということは、理屈抜きに心をとらえるビジネスでもあるんですな。
で、著者もデザートを導入したことがない企業、たとえば、居酒屋、回転寿司、カラオケ店などなどから契約をドーンともらってるわけ。
外食産業はもうアップアップです。努力の上にも努力してます。価格破壊、新メニューの提案をここ数年、短期間に何度も繰り返してます。もう、次の段階は残された盲点、サイドメニューである「デザート」がクローズアップされてるんです。
和食の世界ではまだ浸透してませんけどね。この世界、まだまだ男性中心のメニュー構成なんですね。だから、客数の落ち込み、売上の伸び悩みで深刻なんですよ。
いまの時代、女性をつかまえないことには商売なんて成立しませんもの。
それにね、「はしご」がなくなりつつあるんです。
もう一店完結型。すなわち、一店舗の滞留時間がそれだけ長くなるってことです。
そういえば、わたしがよく使ってた「蝦夷御殿」「光林坊」なんて店は、座敷で飲んだ後、もうその場所で二次会セット。引き戸を開けると、ジャジャーンとカラオケがせり出してきますもの。
なんだ、なんだと驚いてる間に、二次会はもう始まってるというわけ。
女性が主役なんですね。
いままで食ビジネスは、「美味しさ」「安さ」「早さ」を求めてきました。効率重視のマニュアル世界でもありました。この食の世界で忘れたモノ、それが「楽しさ」なんですね。
楽しめる要素は何か?
それがデザート。
不思議なことに、原価率を高めに設定してもオーケーですよ。「美味しくて安い」と感じちゃいます。原価率はメインメニューの二倍でも集客アップ、採算も合います。トータルで利益率が上がる。これがデザートビジネスの「魔法のマーケティング」なんです。
ただし、どんなデザートでもいいかというと、そうではありません。この世界、かなり深いんです。
たとえば、どんなものでも定番がありますね。洋生菓子ではショートケーキ、シュークリーム、モンブラン、焼き菓子ではフリアン、マドレーヌ、ミルフィーユ、和菓子では饅頭、大福、どら焼き。これが御三家です。
だから、この定番を外さない仕掛けが大事なんですね。たとえば、「いちご大福」「フルーツあんみつ」といったヒット商品がありますね。これなんか、よく考えれば、イチゴと大福、フルーツとあんみつといった、昔から人気のある食べ物をミックスしただけでしょ。
デザートというのは斬新さが求められているように見えますが、実は安心して食べられる味、すなわち、定番を外さないことがポイントなんですね。
この会社の提案では、菓子職人を雇う必要もありません。店側にデザートの知識も必要ありません。それでいて、各店独自の個性的なデザートを提案できるんです。しかも、納入価格100円弱(送料込み)です。それを店頭価格300〜500円で販売できるんですね。
回転寿司屋でいちばん売れてる商品が「チーズムース」だなんて、初耳ですね。
小さな会社が儲ける「魔法のマーケティング」のヒントをいろいろ教えてくれる本です。
もちろん、キーマンネットワーク定例会にもご参加ください。よろしくね。
250円高。購入はこちら