2003年01月13日「すぐやる人になれば、仕事はぜんぶうまくいく」「聞いちゃった!」「デザートのカリスマ」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「すぐやる人になれば、仕事はぜんぶうまくいく」
 金児昭著 あさ出版 1400円

  信越化学工業の顧問、早稲田の客員教授という人ですね。
 以前、この「通勤快読」のコーナーで「教わらなかった会計」(東洋経済新報社)という本を紹介したと思います。あの著者です。
 ですから、彼がビジネスマンとしてのキャリアを振り返って、「あっ、これが大事だな」と感じたことを、あまり整理せずにそのまま書き込んだ雰囲気がしますね。
 わたし、整理された文章より、こういうアトランダムのほうが好きですね。

 著者はの仕事に対するモットーは三つあります。
 「正確さ、迅速さ、誠実さ」ということでやってきました。これって、最低限必要な資質でしょう。いま、どこも厳しい経営を強いられてますから、結果として、ビジネスマンはいままでよりもきつい要求が提示されてきてますね。この傾向は加速しこそすれ、後退することはない。
 となると、仕事のスキルといったものがモノを言ってくるわけ。

 若い頃、この人は従業員七人という子会社に出向していました。仕入れから販売から代金回収、帳簿漬けまで、すべてを一人でやらなくてはいけない販売員の仕事をしてたんです。
 その時、ある得意先から五十万円の売り掛けが回収できなくなります。いまだと、もっと多いカモね。
 何度請求しても「金がないんだ」と相手にしてもらえません。
 上司に報告しても、「いろいろ工夫をして、なんとしても、イのいちばんに五十万円をもらってくるように」という強い要求。「この嫌な仕事も君を育てる大事な仕事なんだ」とかね。
 そんなことは、わかってます。この会社、小さな会社で本当に経営が厳しそうだった。だから、なおさら回収仕事が嫌になっちゃう。
 でも、回収しなければならない。
 いったい、どうしたらいい?

 「この会社の状況を改善できれば、支払い能力があがって払えるのではないか」という考えが頭をよぎります。
 ここで二つに分かれるだろうな。
 「そんなの、オレの仕事じゃないよ」
 「いや、そうしないと回収できないし、あの会社も苦しんでるから助けなくちゃ」
 で、この会社の商品を彼は知ってる会社に紹介して、売上増に貢献するんです。すると、この会社も少しは業績が良くなったのか、最終的には代金を全額、回収できたって話。
 これって、誠実な性格じゃないとできないよね。
 いま、経営的な苦しい会社が多くて、社員もリストラだなんだかんだと苦しいと思います。わたしなんか、毎日がリストラ、毎日が失業ですから、サラリーマン時代のボーナスなんて、いまとなっては夢の話ですよ。
 でね、スキルだ、資格だと言いますけど、「誠実さ」って大きいと思う。上司なら、会社と部下への誠実さということになるのかな。
 でも、要領のいい人間のほうが出世するのかな。そのほうが成果があがるからね。要領が良くて、誠実であること。これを目指したいね。
 できるし、できた人。これが著者です

 どんなに誠実な人でも、手帳を開くと、すぐにでもしたい仕事もあれば、これはやりたくないな。後回しにしたいな、そう考える仕事が必ずあるものです。
 嫌な仕事は嫌だ。だれでもそうですよ、著者もそうです。官僚、政治家が重要課題であるにもかかわらず、拉致問題、構造改革の問題など、たくさんのやるべきテーマを先送りにしてきたのは、「やりたくない」という理由があったからですね。

 さて、「すぐにはできない」という理由をどう対処するか。たいてい、やりたくない理由は次のモノですよ。
1 そんなことに時間をとられたくない。
2 自分がやらなくてもいい。
3 やってもムダ。
4 単調な仕事でとっつきにくい。
5 気分が乗らない。
6 だれも評価してくれない。
7 やっても楽しくない。
8 やってもだれも喜んでくれない。
 で、著者はこれらを認識しながら、「自分にやらなくちゃ」と思い込ませる技術を開発しました。
 といっても、簡単なこと。「いつかはやらなくてはいけない、という言葉を声に出して十回言うことにしてる」んですって。すると、三〜五回くらいまでは嫌々やってるけれども、七回を超えると、「自分はいつか必ず、この仕事をやらなければならないんだ」と自分で自分を納得しちゃう。その気になってくる。
 これも仕事ができる人のモチベーションの技術ですね。
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2 「聞いちゃった!」
 永六輔著 新潮社 590円

 これは永さん一流の取材力で稼いだ市井の人々の「発言のエキス」。まっ、何も考えずに読んで共感するところがあれば、良しとしましょう。
 「いると困る。いないともっと困る。そういう人に私はなりたい」
 「呑む、打つ、買うの三拍子揃って、それで尊敬されるような人間になってみろ」
 「人間、批判されはじめたら、一人前になったということさ」
 「自分の欠点を自覚しろ。自覚できたら直さなくたっていい。欠点のまま魅力にしろよ」
 「無理させておいて、無理をするなよっていう奴、いるよ」
 「困った時はおいでといわれていたんだよ。たでからさ、困ったからさ、行ったんだよ。そしたらね、考えが甘いって叱るんだよ。そういうことなのかい、困ったらおいでということは・・・」
 「そんなことなんだったら言ってくれればよかったのに・・・そういう奴は言ってもダメ」
 「歯に衣を着せず、率直なご意見をっていうから、遠慮しないで意見を言ったら、失礼だって怒りだしやがって・・・」
 「常に冷静、常に余裕、常に第三者」
 「無能な奴が努力しているのは、見ているだけで疲れます。努力は有能な奴がやればいいんです」
 「貧乏暇無しならいいんだよ。貧乏で暇があると・・淋しいよ」
 「落ちこぼれの子はいません。落ちこぼれの親と落ちこぼれの先生に育てられた子はいます」
 150円高。購入はこちら


3 「デザートのカリスマ」
 内海悟著 ビジネス社 1300円

この著者は、03年1月度「キーマンネットワーク」の特別講師です。
 パシフィックコンサルタント、ドッドウェルエンドコムパニーリミテッドなどで、営業戦略立案、宣伝販促プラニング、消費開発・分析、マーケットリサーチなどをマスターしたあ、85年にミックビジネスシステム、00年にデザート・カンパニーを創業します。
 この人の名前を聞いたのは、28歳で商社の新商品開発リーダーとして、年商40億円を超えるロングセラー商品を開発したでしょうね。これは、いまでも業界の語りぐさとなってます。

 で、このデフレ不況下、「デザート」を切り口にして、逆風をものともせず、外食、流通、サービス、メーカーをクライアント、たった2年で250社、計1000店舗とコンサル契約を結んで(まだまだ急増中)、連戦連勝の成功を導いてるんですね。

 わたしはデザート、好きではありません。でも、周囲の女性、たとえば、女子大生とか20代、30代の女性から、さらに熟女といわれる人までヒアリングすると、「あたし、デザートの内容で、店、選ぶ」という人が少なくないんですね。
 メインディッシュがいちばん大事でしょうが?
 「メインディッシュって、ほとんど、どこの店も味が変わらないもの」
 そんなものですかねぇ。

 でも、デザートは別腹というのはよく聞きます。ということは、別勘定なんですね。
 ということは、理屈抜きに心をとらえるビジネスでもあるんですな。

 で、著者もデザートを導入したことがない企業、たとえば、居酒屋、回転寿司、カラオケ店などなどから契約をドーンともらってるわけ。
 外食産業はもうアップアップです。努力の上にも努力してます。価格破壊、新メニューの提案をここ数年、短期間に何度も繰り返してます。もう、次の段階は残された盲点、サイドメニューである「デザート」がクローズアップされてるんです。
 和食の世界ではまだ浸透してませんけどね。この世界、まだまだ男性中心のメニュー構成なんですね。だから、客数の落ち込み、売上の伸び悩みで深刻なんですよ。
 いまの時代、女性をつかまえないことには商売なんて成立しませんもの。

 それにね、「はしご」がなくなりつつあるんです。
 もう一店完結型。すなわち、一店舗の滞留時間がそれだけ長くなるってことです。
 そういえば、わたしがよく使ってた「蝦夷御殿」「光林坊」なんて店は、座敷で飲んだ後、もうその場所で二次会セット。引き戸を開けると、ジャジャーンとカラオケがせり出してきますもの。
 なんだ、なんだと驚いてる間に、二次会はもう始まってるというわけ。

 女性が主役なんですね。
 いままで食ビジネスは、「美味しさ」「安さ」「早さ」を求めてきました。効率重視のマニュアル世界でもありました。この食の世界で忘れたモノ、それが「楽しさ」なんですね。

 楽しめる要素は何か?
 それがデザート。
 不思議なことに、原価率を高めに設定してもオーケーですよ。「美味しくて安い」と感じちゃいます。原価率はメインメニューの二倍でも集客アップ、採算も合います。トータルで利益率が上がる。これがデザートビジネスの「魔法のマーケティング」なんです。

 ただし、どんなデザートでもいいかというと、そうではありません。この世界、かなり深いんです。
 たとえば、どんなものでも定番がありますね。洋生菓子ではショートケーキ、シュークリーム、モンブラン、焼き菓子ではフリアン、マドレーヌ、ミルフィーユ、和菓子では饅頭、大福、どら焼き。これが御三家です。
 だから、この定番を外さない仕掛けが大事なんですね。たとえば、「いちご大福」「フルーツあんみつ」といったヒット商品がありますね。これなんか、よく考えれば、イチゴと大福、フルーツとあんみつといった、昔から人気のある食べ物をミックスしただけでしょ。
 デザートというのは斬新さが求められているように見えますが、実は安心して食べられる味、すなわち、定番を外さないことがポイントなんですね。

 この会社の提案では、菓子職人を雇う必要もありません。店側にデザートの知識も必要ありません。それでいて、各店独自の個性的なデザートを提案できるんです。しかも、納入価格100円弱(送料込み)です。それを店頭価格300〜500円で販売できるんですね。
 回転寿司屋でいちばん売れてる商品が「チーズムース」だなんて、初耳ですね。
 小さな会社が儲ける「魔法のマーケティング」のヒントをいろいろ教えてくれる本です。
 もちろん、キーマンネットワーク定例会にもご参加ください。よろしくね。
 250円高。購入はこちら