2002年11月25日「タカラの山」「カリスマホストたちの帝王学」「超優良企業 さだお商事」
1 「タカラの山」
竹森健太郎著 朝日新聞社 1400円
1955年、葛飾区宝町で浮き輪、ビーチボールを作っていた町工場が60年に「だっこちゃん」を発売。これが240万個も売れて、大ブーム。で、66年に「タカラ」と商号を換えます。
これがタカラの原点ですね。
伝説のおもちゃとして、翌年、「リカちゃん」人形を発売。その翌年、今度は「人生ゲーム」で、当たりを取ります。
その後、順調に会社は大きくなりまして、株式公開、二部上場、そして一部上場と駆け上がっていきます。その間、「チョロQ」が出たのは80年。音に反応して踊り出す「フラワーロック」なんてのもありましたね(88年)。
で、順当に創業者から長男にバトンタッチ。従来の直観経営から組織経営、近代経営へと変革に成功します。
ところが、これが大誤算。
おもちゃ業界、というより、おもちゃビジネスってのは、そんな組織経営がうまくいくような業界ではなかったみたいです。
たとえば、家電に代表される商品は、売れなければ値段を半額にしたり、小型化したりする。そうすれば、売れるようになります。
ところが、おもちゃは元々売れない商品は、どんなに値段を下げても売れません。
それどころか、売れている商品でも、波が去ってしまえばダメになります。
理由は明らか。おもちゃは「モノ」を売っているのではなく、「楽しさ」や「面白さ」を売っているからですね。
子供にとって、面白いと思えなければ、その商品は価値はないし、また売れないんです。
おもちゃとは本当にムダが多い商品。いや、むしろ、ムダこそが発想の資産となる代物なんですね。効率よくヒットを生み出すなんてできません。経営を管理で考える人は、ムダを無くすと利益が上がると考えます。こうすれば、間違いなく「利益率」は上がります。
ところが、こうしてあげた利益はしばらくすると、無くなってしまうんですね。まさに縮小均衡。高止まりならぬ、低止まりとなるのも、こういうことがきっかけなんです。
タカラの商品アイテムは2〜3千。そのうち、リピート発注があるのは半数にも満たないんです。
しかも、おもちゃの発売期間はたった3ヶ月。
「リカちゃん」が35年間、ロングセラーを続けていけるのも、毎年、洋服や小物の関連アイテムのラインアップを変えたり、肌の色を変えたりし、細かくアップデートやマイナーチェンジを繰り返してきた結果ですよ。
で、2000年になるとどん底を迎えます。正確にはその前年が底なんでしょうけど、95年度も37億円の赤字。99年は136億円の赤字。株価は最盛期の6千円から20分の1の300円にまで下落して、社長は解任。
その後、タカラを辞めていた次男をコンサル契約します。そして、再建委員会を設立しますが、これが創業者とそのメンバーでやっているうちにどんどんおかしくなる。で、ガラリとメンバーを一新し、次男が社長になります。
そこから、新生タカラがV字回復していくんですね。
この不景気にもかかわらず、ガンガン新製品を出します。しかも、おもちゃの常識を越えた商品を出していきます。
たとえば、「e-kara」。これはマイク一体型カラオケですね。おもちゃではありません。新技術のICチップを使った画期的な新商品です。累計2百万本もヒットしました。
「ビールサーバー」もそうです。ピール会社の拡販おまけで知ったんですが、なかなか当たらない。ならは、自分で作ってやれ。ということで、作っちゃいました。
「ベイブレード」という今風ベーゴマなど、累計4700万個の大ヒットですよ。これはテレビとのメディアミックスで大成功を収めました。
「ポケモン」「ベイブレード」にしても、一つ新商品が爆発的にヒットすると、子供は右向け右で一斉に集中します。
一番手企業だけが享受できるメリットですね。
ここで、遅れて2番手商品を出しても、その商品には寄りつきません。「おまえの偽物じゃねえか」と学校でバカにされてしまうから、逆効果なんですね。
いま、タカラでは「チョロQ」の電気カーまで作っちゃいましたね。これが1台99万円で、もう予約は完売。
マネジメントってのは、ホントにおっかないですね。
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2 「カリスマホストたちの帝王学」
じゅんぺい編著 ミリオン出版 1400円
どうでもいいけど、どうして、こう、ホストの本ばかり読んでるのかね。この「通勤快読」でも、何冊、紹介したのかね。それ以外にも、ものすごく読んで研究してますよ。
友人の心理学者に聞けば、「それは潜在意識のなせる技。きっと、中島さん、ホストになりたいんでしょ? 憧れてるんじゃないの?」だってさ。
ハイ、そうなんです。図星なんです。実は、ホストになれるかどうか。たくさんのホスト本を読んで、対策を思案中なんです。
でもね・・・。
「容姿、スタイルは?」
えぇと、熊のプーさんと思ってください。いま、流行の「癒し系」です。
「しゃべりは?」
あのぅ、一応、大学でも講義してますし、なにより、講演もかなり多いんで・・・。
「では、ダンスは?」
えぇと、トラディショナル・ダンシングは得意中の得意で、とくに「河内音頭」は勝新ゆずりです(八尾の朝吉親分、知らないの?)。
「では、歌は?」
・・・音痴というよりも、いわゆる鼻声で民謡風なのね。
てなわけで、「何、考えてるの? 無駄なあがきは止めたら?」と言われてしまいました。
さて、「ホストなんて、女を食い物にした、下半身だけが元気なパーフリン」と、バカにしてる人が殆どでしょう。世間の目というのは、そんなものですよ。
でも、この本を読むと、こんな思い込みが一新されると思います。やっぱり、どんな仕事、どんな業界でも上に行く人間はそれなりに凄いですね。もう、勉強になることばかりでした。
「トップであり続け、開ける未来は想像以上にでかいぞ。どんなに偉い人とでも、遊びの世界でなら知り合えるんだよ。たかがホストでも、トップなら相手が寄ってくる。ここから次の仕事のチャンスさえも手に入れられるんだよ」
たしかに、そうですね。
ホストクラブだって、企業だって、その本質は営利目的を追求する組織なんですね。金を儲けることが正しい社会なんです。
「女性から金をむしりとる仕事」と非難されるけど、サービスを提供した対価を受け取る。これがビジネスの常識じゃないですか。
そういう意味では、女性を主なターゲットにしてる化粧品、バッグ、腕時計といった高級ブランド商品を扱ってる会社と同じなんですね。
サラリーマンの方々には、自分をホストに置き換えてみるといいですね。
となると、会社はホストクラブですね。ホストは最低保証額だけでは食べられません。自分で顧客をゲットしなければ、食いっぱぐれるわけです。天国と地獄。いったい、どちらに行くか。
「ステージだけは貸してやる。実力と運次第で登れるものなら、どこまでも登っていけるぜ」
完全フルコミの世界。それがホストの世界なんです。
考えてみれば、女という生き物はシビアですよ。そんなに甘い生き物ではありません。
その、もっとも扱いにくい女性という客を相手にする。いちばん気前が良くて、いちばん感情の起伏が激しい女というお客を相手に商売するんですからね。たいしたものです。
実は女性客の中にも、ブランド志向があるんです。ナンバーワンてのは、いわば、エルメスですよ。事実、歌舞伎町には各店を遊び回って、ナンバーワンしか指名しないお客がたくさんいます。
歌舞伎町には2千人のホストがいます。
その中のトップたちが語るホストの帝王学。一連のホスト本の中では、ピカイチだったな。
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3 「超優良企業 さだお商事」
東海林さだお著 東洋経済新報社 1200円
まっ、忙しい人ですね。
八王子に自宅があり、仕事場は西荻窪。月曜日に出勤して、そのまま泊まり込み、土曜日に自宅に帰り、そこから野球に出かけ、日曜日は休み、また月曜日に出勤。これが、東海林さんのパターンですね。
どんな仕事をしてるかというと、月曜日は『週刊朝日』の読み物「あれも食いたい これも食いたい」、火曜日は『週刊現代』の「サラリーマン専科」、水曜日が『週刊文春』の「タンマ君」、その後、『毎日新聞』の朝刊連載漫画「アサッテ君」、そのほか、『オール読物』などの連載やらインタビューやら、単行本の執筆やら、対談やらと続くわけです。
朝起きて、簡単な朝食をすませると、すぐに新聞をチェックします。朝日、毎日、読売、産経、東京、報知の各紙に目を通すわけですね。
そして、机の横にノートを広げ、「使えそうかな」と思うと、すぐさま絵を描いておく。もちろん、これは完成した漫画ではありません。ヒントとなるような一こまの絵で、他人が見たら何のことだかさっぱりわからない。でも、それでいいんです。自分がわかればいいんです。
「長年の勘」ともいうべきで「いけるかもしれない」と思ったものを描いておく。
こういうネタ絵が詰まったノートがいまや、600冊あるそうです。でも、使えるのはここ数年の30冊程度。1冊80頁で1頁に5個のアイデア。で、計400個。30冊で1万2千個となりますね。
デビュー以来、「世の中に受けるものは何か?」というテーマを追い続けてきた。漫画って、時代感覚が大事ですもんね。
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