2002年10月14日「マイ・ライフ」「椿山課長の七日間」「数字で考えるとひとの10倍仕事が見えてくる」
1 「マイ・ライフ」
綾戸智絵著 幻冬舎 1429円
マイド! 綾戸智絵って知ってまっか?
ばりばり関西弁のおばはんや。と思ってたんですが、なんと、わたしと同い年。
あぁ、どないしょう。ほんまに、女の年はわからへん。とくに関西弁だと、よけいわかりまへん。
ということで、わたし、この人、大好きなんです。
何か好きかって、「しゃべり」です。
さだまさしのように悟りすまさず、やしきたかじんのように、自分勝手にあらず。まっ、中庸を行くというか、微妙なバランスの上にうまいこと、唄ってます。
選曲がいいんかなぁ、やっぱし。よく考えたら、スタンダードの名曲ばかりだもんね。
あっ、言い忘れましたが、この人、ミュージシャンです。ジャズ? いちおう、そういうジャンルになるのかなぁ。
でも、あまりとらわれないほうがいいかもね。
「綾戸」というジャンル、そう思っておいたほうが身のためです。
で、この本は彼女の処女作になります。
彼女は大の音楽好き。しかも、ほとんど自己流のピアノ。すぐにスイングしちゃうのね。
「ティナ」という映画を見た人はわかるかもしれないけど、あのティナ・ターナーの子供時代と似てるんじゃないかな。
高校を卒業するのを前倒ししてもらって、渡米しちゃいます。
なんでもやったみたい。もちろん、非合法なことはしてないでしょうが、通訳、料理の先生、店員、ピアノの先生、いろいろです。
何回か、アメリカに行くうちに、向こうの人と結婚。そして、男の子ができるんですが、なんと妊娠中にもう離婚を決意。で、生まれて数日で、日本に戻ってきちゃうわけ。
ジャズが好きで、なんでもスイング。
ジャズクラブに行って、もうウキウキ。自分でも、飛び入りで唄っちゃうわけ。
そんな時、八ヶ岳のジャズフェスティバルに誘われます。もちろん、歌えってことですね。
「よっしゃ!」の一言。
で、行くと、ばんばんノリノリ。
終わると、子供が虫に刺されちゃって、救護班のとこに行く。
そこで突然、一人のおっちゃんが話しかけてきた。
「君のスキャット、素晴らしいね。日本人では、君ほどのスキャットは聞いたことがないよ。名前はなんて言うの?」
「おっちゃん、ジャズ好きか?」
名刺をくれたんで、仲間に話すと、そこには内田修と書いてある。
この人、この通勤快読の二回目に紹介した本に出てくる人だよ。
「そして、風が走りぬけて行った」という本なんだけど、これには「守安祥太郎」という人が出てきます。日本が生んだ天才ジャズピアニストですよ。史上最高のね。その人を中心にした演奏が横浜伊勢佐木町のジャズクラブ「モカンボ」であったんですよ。
ハナ肇が司会、植木等が外で受付をしてたくらい、ジャズのプロミュージシャンが自分たちが楽しむために、どんどん飛び入りでやった演奏会だよね。この時のテープをきっちり録音してた学生がいる。
それが当時、部類のジャズ好きの医学生だったこの内田さんなのね。
おそらく、このことは綾戸さんも知らないと思うけどね。このモカンボとはどういうわけか縁があって、いま、ここのオーナーとは友達なんだよね。名前の店も変わったけどね。
人間というのは、一人では世の中にはなかなか出られません。
引いてくれたり、押してくれたりする人がいて初めて、世に出てくるんです。努力はもちろん大切だけど、出世とはそういうことです。
で、彼女もこれが縁でいろんなところに出かけていきます。
岩手、秋田、青森、中国地方、富山とかね。とにかく、声を掛けられたら、夜行や始発でがんがん出かけていきます。
でも、ノンプロだからね。そんなにギャラで生活できるというわけではありません。
ある時、大阪のジャズクラブで唄ってたら、外国人が数人入ってきた。いやにノリが良いんで、「一緒にやろう」と誘うわけ。そしたら、それが抜群にいい音出すんだよね。
「あんたのサックス、なかなかうまいで」
当たり前です。カウント・ベーシのファーストアルトをしていたアーニー・ウィルキンスでした。
このノリで、アメリカでもまったく怖じずにガンガンやっていきます。あとで名前を聞いたら卒倒しそうなプロでも、かまいません。そういう性格なんです。
でもね。いいことばかりではありません。
声帯がいかれて、声が出てこなくなります。医者からは声を出すな、と厳命されます。もう出したくても出ないんですね。
絶望的になってたら、子供がけつまづいて足を蹴飛ばした。
その時、「なにすんねん」と大声が出たんですね。
「あっ、出た」ってなもんですよ。
また、新聞記事にもなりましたけど、乳ガンで手術しましたね。
この時、乳ガンとの闘病ジャズ歌手みたいな扱いをされたくなかったんです、本当は。友人の記者のインタビューに答え、記事を見せてもらってたから安心してた。
ところが、新聞を見てガビーン!
デスクが直しちゃったんですね。思い切り、演歌になってるわけ。
まっ、そんなはちゃめちゃ半生記みたいな本です。でも、彼女のステージ同様、元気になるよ。
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2 「椿山課長の七日間」
浅田次郎著 朝日新聞社 1500円
もう、こんな本、出して欲しくないね。また、仕事が手につかなくなっちゃった。ホントに、ただでさえ締切で忙しいのに、本なんか読んでる暇なんてないんです。
締切を大幅に遅れた編集者など、「中島さんの場合、本は読むもんではなく、書くもんでしょ!」と嫌みたっぷりに言うし、ホントにもう出さないでくれよ。
というほど、面白い本ですよ、これは。
この通勤快読では小説の類をあまり紹介しないのは、ほら、筋を話されると読んだ時に詰まらなくなっちゃうでしょ。とくに推理小説なんて、犯人まで書かれたら、「こんにゃろう!」ってなるじゃない。
だから、あまり紹介しないのよ。
なんてったって、小説がいちばん多いんだから、読んでるの。
で、本書ですが、これは朝日新聞に連載されてたやつです。わたしって、連載小説は読まない主義なんです。あとでドンと出された時に読めばいいものね。
それに、連載中と内容、少しだけ変える人いるでしょ。だから、困るわけよ。
で、本書ですが(しつこいね)、椿山課長ってのは、デパートの服飾売り場の課長さんなのね。
部長は古き良き時代のデパートを堪能したタイプ。つまり、上座に座って業者の接待を受ける側。この椿山課長は、まったく逆。
バブルがはじけて、いい商品は納入してくれない。三拝九拝してやっと、と主客転倒なわけ。
だから、ストレスがものすごい。で、過労死しちゃうわけですよ、接待の席で。
ここからが面白い。
七日間というのは、「初七日」のことよ。彼があの世とこの世の中間地点の改札所みたいなとこで、物言いをつけて、この世に舞い戻ってきます。もちろん、姿を変えて。これがバリバリ、イケイケのキャリアウーマン風のいい女。なにしろ、自分とは正反対のタイプに変わって再生するみたい。
ただし、七日間。しかも、そのうち、通夜、葬式と時間を使い、さらにこの世への逆送措置審判にまたまた時間がかかってますから、あと三日しかないわけです。
この間に、自分なりに「けり」をつけなくちゃ。
さて、どうやって「けり」つけるんだろうね。そこは読んでのお楽しみ。でないと、怒られそうだもの。
また、あの世で知り合った二人がストーリーに彩りを与えます。
これがまた、感動的なのよ。そこが浅田ワールドのいいところ!
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3「数字で考えるとひとの10倍仕事が見えてくる」
安本隆晴著 講談社 1300円
著者はユニクロ、アスクルの監査役です。去年、キーマンネットワークでも講師として来てもらいましたね。
本書は、いま、算数がまったく出てこない「数字力」をつける本です。
仕事ってのは、数字ですもんね。
売上、利益、期日、経費、返済など゛など、すべて数字で縛られているのがビジネスマンですよ。
だから、頭の中はもう、キャッシュレジスターみたいに、ガチャンガチャンと数字が弾かれているわけ。
でも、その割には数字に弱い人ばかりなのね。
では、いったいどこを鍛えると数字に強くなるのか。数字の見所、勘所はどこにあるのか。
そのポイントをきっちり押さえた本なんです。
内容は整理されているから、あっという間には読めます。
250円高。購入はこちら