2002年05月27日「40歳からの1日10分間科学的『株』投資法」「最強の時間管理術」「山口組若頭暗殺事件」
1 「40歳からの1日10分間科学的『株』投資法」
増田正美著 講談社 1400円
5/22発売直後からバカ売れ、とのこと。たしかに兜町界隈では話題で持ちきりでしょうな。
著者は超伝導の研究では世界的に知られる物理学者。東工大の元教授です。
「そんな人物が、どうして株投資の本など書いたの?」
と不思議に感じると思いますが、著者は定年後に株取引をしたんですね。
動機はたいしたことではありません。息子さんが独立し、家のローン残高も少なくなった。いざとなっても退職金で賄える。ならば、国債を買うのも国家公務員(国立大学の教師でした)としての義務の1つではないかと思ったわけです。
そこで、証券会社を訪れた。
これが著者の人生をがらりと変えてしまいます。
某大手証券会社の窓口に行くと、窓口の人から「国債よりも株式のほうがよろしいんじゃありませんか?」と誘われた。
「えっ、この私が株式投資?」
株式投資の相談係と称する恰幅の良い紳士がのっそりと奥から出てきます。鼈甲の眼鏡をかけ、腕には金ぴかのローレックスを巻き、どこから見てもマネーの匂いぷんぷんの男。
「ちょうどいいところに来ましたね。いま、大手企業の子会社で、これからの将来性もかなり期待できる銘柄があるんですよ」
当時、店頭登録銘柄である「ブリヂストンメタルファ」を強く薦めたわけです。
右も左もわからない個人投資家の著者は、その専門家の薦めるがままに単位株数1000株を買い込んだのです。立て板に水で説明してくれたことを100%信じました。その会社の将来を買ったようなつもりでじっくり保有する予定でした。
ところが、これが間違いの元だったのです。
購入後、この株がどんどん下がっていきます。
その間、日経平均株価は上昇しているのです。この株だけが下がっていく。
後で知ったのですが、購入した時期とは、マネー紳士が属する証券会社の経済研究所がブリヂストンメタルファの業績に疑問を持ち、その株を買えばどうなるかという予想を示す「レーティング」を下げた直後だったらしい。専門家の目には、すでにその銘柄は下がるのがわかっていたということです。
早い話が、無知な著者はカモで、すっかりはめ込まれてしまったというわけです。
著者の大学時代の友人には、いまや株式投資の専門家や経済評論家として名をなしている人間がたくさんいます。長谷川慶太郎さんがそうですね。
で、同窓会や会合で会ったときにこの話をすると、彼らは少しも驚かない。
「それは大手証券会社の常套手段だよ。証券会社が狙っているのは、大口の株取引が可能な機関投資家や個人でも医者、弁護士といった金持ちだけだ。君のような普通の客は『ゴミ投資家』って言われてるんだよ」
そうか、ゴミだったのか。だから、ゴミのように捨てられたのか。
そう気づいた著者は証券会社に復讐するために、投資理論を徹底的に勉強します。物理学では世界的権威である著者にとって、投資理論はお茶の子さいさい。
「こんなので理論なの?」
ノーベル経済学賞の学者の理論に呆れているくらいです。で、すべての投資理論の中から3つだけド素人でも使える「物差し」を見つけました。
これさえ活用できれば、だれでも成功できるというノウハウですね。このノウハウをわかりやすく紹介したのが本書です。
ところで、著者は1週間に1回程度、小遣い銭しか投資しません。でも、これで月間50万円の純理をずっと続けてます。おかげで、いまや株投資の権威になってしまいまして、オリックス証券のホームページで連載を持ったり、講義、講演などで多忙の毎日だとか。
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2 「最強の時間管理術」
青木仁志著 講談社 1300円
著者は営業専門の教育事業会社を展開する若き経営者です。
裸一貫で上京し、ひょんなことからセールスの世界に飛び込みます。以来、直販セールスで有名なあのブリタニカで日本一を連続して極めるなど、プロ営業マンとして頂点に立ちます。
そればかりか、世界一の営業マンを2人育てるなど、名伯楽でもあります。
そこで、その営業マン育成ノウハウを広く紹介しようってんで、独立を果たしたわけです。
ビジネスマンは、多忙だからこそ、ビジィな人間という意味で「ビジネスマン」と称されるわけです。
ホントに、どうすれば時間を2倍、3倍に増やせるか。これは永遠のテーマですね。
ブリタニカにジム・マイナーという世界一の販売数を記録した営業マンがいました。
世界のトップを極めた営業マンです。どのくらいセールスしたかというと、これが百科事典を月間600セットも売ったんですよ。
「すごい」「大したもんだ」と連発する人はたくさんいますが、その秘訣はいったい何なのかを究明しようとした人はなかなかいません。著者は素直かつ研究熱心だから、徹底的に研究してみたそうです。
すると、このトップ営業マンは「バードドッグ」「ジュニアスポッター」と呼ばれる協力者を組織化していたことがわかります。協力者に販売促進費という名目のコミッション料を払って、見込み客を集めてもらったり、周囲に宣伝してもらったり、当然、注文を募ってもらったりしてたわけですよ。
いったん仕組みができれば、彼は顧客を1人1人セールスして歩くことよりも、この協力者のメンテナンスを徹底すればいいものね。見込み客だけを一箇所に集めてもらい、そこに出張ってプレゼンすれば一網打尽。
「お世話係」に徹すれば、自然と売上が上がる。
これは従来のセールスのような一本釣り方式ではありません。魚のいるところに投網を投げ込んで一網打尽にする方法、あるいはトロール漁船で引っ張り上げる漁法ではないでしょうか。
うまいことを考えたもんですね。さすがです。やっぱり、できる人間というのは目の付けどころがちょっと違うね。
こういうノウハウがあれば、同じ時間でもきわめて生産性の高い仕事ができるわけですよ。
こんなエピソードとノウハウをたくさん紹介した本です。
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3 「山口組若頭暗殺事件」
木村勝美著 イースト・プレス 1700円
力作です。一気に読んでしまいました。
まさしく、仁義無き闘い、だなぁ。実は、浅田次郎さんの「沙高楼綺譚」(徳間書店)、「私の資生堂パーラー物語」(講談社)と並行して読んでたんですが、やっぱり実話が迫力をもって迫ってきますね。こっちを先に紹介しましょう。
山口組の大事件といえば、田岡3代目が狙撃された事件、いわゆる「京都ベラミ事件」ですね。それと、山口組が一和会とに分裂し、竹中4代目が暗殺されてしまった事件。
そして、本書のメインである宅見勝・山口組若頭暗殺事件。この事件以来、この組には組長はいますが、若頭は不在のまま。もう5年になりますね。
宅見若頭が暗殺されたのは、平成9年8月、神戸オリエンタルホテルの喫茶店でした。
ヒットマンについてはわかっていますが、背後関係についてはどうもはっきりしません。いったい、だれが命令したのか。いったい、ホントの首謀者はだれなのか。
本書はそんな「悪の論理」を暴いた1冊です。
銀行とコネを付け、結託することで、ウラ社会の住人たちがどんどん力を付けていく様が手に取るようにわかります。
もはや、ウラもオモテもありません。オモテ社会の住人といわれる財界首脳は、ウラ人脈を活用して、都合の悪いことを隠蔽したり、無理やり、地上げや土地の開発を展開する。ウラ社会の住人は、資金を豊富に身につけていく。そして、ウラ社会での地位を確保していく。
表裏一体ですね。
それにしても、政治家と銀行の幹部ってのは悪いヤツが多いね。
数年前、知人の紹介で飲んだ人にS銀行の支店長がいたけど、この人、飲むと態度が変わるの。急に威張り出すんです。さっきまで借りてきた猫のようにしてたのにね。
「あぁ、これが本性なんだ」
と呆れてしまいましたが、驚いたのは、翌日。なんと、支店のシャッターに銃弾が撃ち込まれたんですよ。
おそらく、危ない橋ばかり渡ってたんですね。「向こう傷は問わない」ってのは、こういうことだったのかと笑ってしまいました。
こういうホントに悪い連中から比べれば、ヒットマンの人生は「悲哀」の一語ですな。
親分筋から「殺(や)れ」と言われれば、「それはできません」「ちょっと無理です」「聞かなかったことにして」なんて、サラリーマンみたいなこと言えませんモノネ。
「殺らなければ、自分が殺られる」だけ。殺しても、殺さなくても、人生は終わりです。究極の選択ですね。
こんな連中にかき回された銀行の尻ぬぐいのために、税金が大量に投入されてるんですから、国民はもっと怒っていいと思うんですがね。
佐高信さんが銀行のことをガンガン怒ってるのも、こういう背景をよくご存じだからでしょうな。この人、松下電器、大嫌いなんですよね。だから、松下系列の出版社から本も出さないし、インタビューも受けないでしょ。
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