2002年01月21日「めざせ! レインメーカー」「ヤクザの実戦心理術」「説得の心理戦」に絶対勝つ法則

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「めざせ! レインメーカー」
 ジュフリー・フォックス著 万来舎 1300円

 レインメーカーというのは、雨を呼ぶ呪術師のこと。翻ってビジネス社会では、「いざというとき、お金の雨を降らせてくれるような頼りになる人のこと」を指します。
 つまり、この本は営業マン向けの本なのです。セールスの心得が50も書かれてるんだよ。
 曰く、「顧客を獲得し、離すな」
 「顧客の話を良く聞け、顧客がなにを必要としてるか把握しろ」
 「この顧客きなぜ、わが社と取り引きするのか?」
 「お客様、ご自身で判断してくださいますか?」
 「わたしたちの合意を邪魔しているものは何でしょう?」
 「自分の会社、商品の良さをアピールする必要はない。とこが違うのか、その差を主張しろ」
 さて、如何でしょうか。簡単に読めます。忙しい人向けに編集された本だね。
 150円高。


2 「ヤクザの実戦心理術」

  向谷匡史著 ベストセラーズ 1400円

 心理学のプロフェッショナル。まさに実戦心理学というコピーに値する。
 「借りた金は返す。これが人の道やろ。違うんか?」
 「はい、しかし・・・」
 「しかし、なんやねん」
 「金利が違法なので・・・」
 ここで、「なにぃ、違法やと! ごちゃごちゃいわんと払わんかい!」と怒鳴るのは素人さん。プロは違います。
 「ほう、借りるとき、金利のこと知らんかったんかいな」と優しく問いかける。
 「いえ」
 「知っとる? じゃ、納得ずくで借りたいうことやな」
 「でも・・・」
 「おい、こら! 注文したメシ腹いっぱい喰うてから、ゼニ払わん言うのと同じやないか。オノレ、無銭飲食か!」
 この「お互い納得ずく」というキーワードをポイントにして、巧みに絡め取るわけです。
 「借りるときは、お願いしますの米つきバッタで、返すときはふんぞり返るんか。人様の大事なゼニ借りといて、踏み倒す気か。人の道に反しとるんやないか」
 こうなりますと、金利が違法だろうと何だろうと、悪いのは自分の方だとどんどん萎縮してきます。
 これがプロの追い込み心理学なんですね。

 友人に借金を頼むとき、50万のお金が必要なのに、そこを敢えて100万円と言えるだろうか。
 「50万円、いや30万でいいよ。お願い」というのが普通の神経だろう。
 だけど、プロは違う。
 「100万円、なんとかやらんやろか」
 「ウーン」
 「このオレが頭下げてるんやで。踏み倒すとでも思うてるんか?」
 「いや、そんなことはない」
 「なら、なんや」
 「いや、最近厳しくてな。そんなに持ち合わせがないんや」
 「そうか。それは悪いこと頼んでしもうたな。そなら、50万ならどや。これなら、なんとかなるやろ」
 「そやな。それなら、なんとかなるかもしれん」
 「そうか」
 「すまんな」
 こうなります。ヤクザは懇願しないのです。どこまで行っても「交渉」なんですね。だから、相手が飲めないとわかってて聞くんですね。なぜか。交渉だからです。
 外務省とは違うんです。彼らがやってることは「交流」です。交渉は政治家とか、ほかの役所がするんです。彼らの頭の中はいまだに鹿鳴館なんですね。

 彼らはイエス、ノーで単純に答えられるような質問はしません。イエス、ノーで答えられる質問を専門的には「クローズド・クエスチョン」といいます。彼らの質問は「オープン・クエスチョン」なんです。

 「なんで、立ち退くの、イヤですねん?」
 「ここが気に入ってますねん」と言えば、「ほう、どんなとこがええんですか?」と返す。
 「公園が近くて環境がええから」
 「それなら、ほかにもありまっせ。紹介しますわ」
 どんどん交渉を展開します。
 交渉の糸口がつかめるまで、丁重に「なんでやねん」で押す。そして、ここだというツボにはまると、口調を変えるんです。
 「理由ものうて居座ることを、わいらの世界じゃ、ゴネルいいまんねん。ゴネルのは極道のやることで、カタギのやるこっちゃおまへん。あんさん、極道でっか? それならそれで、話の仕方、変えなあきまへんな」
 

 頼み事というのは、頼まれた瞬間から頼まれた方が弱くなる。
 相談事も、相談された瞬間から、相談された方が弱くなる。うーん、人間通だなぁ。

 250円高。


3 「説得の心理戦」に絶対勝つ法則
 斎藤勇著 成美堂出版 505円

 著者は心理学者です。
 交渉とか説得で有利な状況に自分を置くノウハウを紹介してます。
 
 さて、膠着状態を打開する方法として、1相談する 2自己開示する の2つの方法を紹介してます。

 誉めると、人は喜びますね。
 そこで、こんな風に使います。
 「お目が高いあなたなら、この商品がどれだけ価値があるかおわかりになるでしょう」
 「そうでもないよ」
 「いえいえ、この商品はホントに価値がわかって頂けるお客さんはめったにいないんです」
 「そうかなぁ。どれどれ、うん、これいいよ」
 「さすが、ですね」
 と、こういう具合。相手の見る目を尊敬する。賞賛する。素直に誉める。商品説明は聞かれたらすればいいんです。
 それをヘタに説明したり、ヘタな説明をしたりするから、売れないんです。

 「部長がアドバイスして頂いた通りにやったらうまくいきました。ありがとうございます」
 「これホントに重要な資料だから、きみ、コピー頼むよ」
 この言い方も同じですよ。

 セールスなんかしたくない、という人は少なくありません。わたしはこんなに面白くて頭の良くなる仕事はない、と思うんですけどね。
 新人に多いんです。セールスってのは、要らないものを無理やり売り込むものだと勘違いしてるからです。
 そんな相手には、こう言えばいい。
 「これからは営業と企画、研究開発しか仕事がなくなる。あとはコンピュータでどうにかなる。営業マンこそ、人間らしい仕事だよ」

 150円高。