2008年01月16日「無法バブルマネー終わりの始まり」 松藤民輔著 講談社 1575円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 いまや、世界は「連結決算」ですな。それだけに、ほんの少しの変化が金融の大動乱を起こしかねないダイナミズムを孕んでいます。

 バンカメがカントリーワイド社(住専)を救済合併?
 ご冗談を。カント社を潰せないほど資金を突っ込んでたということでしょ。
 ほらほら、日本のバブル崩壊後とよく似てますな。
 あの頃、中途半端に融資してる会社には貸し剥がしまでした銀行が、膨大な不良債権を抱えた取引先には貸し剥がしなんてできなかった。それどころか隠蔽すらしてたもんね。
 なぜか? いかにいい加減な融資をしてたか、その杜撰さがわかっちゃうからよ。

 今日の東京マーケットは大変でしたね。まっ、予想はしてましたけど。
 日経平均は4日連続の安値。前日比468円安の13504円。昨日に引き続いて昨年来安値更新です。

 理由? Citiの追加損失、小売の売上高不振、円高ドル安、疑心暗鬼のサブプライム問題・・・。さらに、個人投資家の追証発生で、ネット株、新興マーケットがガックリ来てます。

 ところで、この著者は2年前から「サブプライムがアメリカの命取りになる」「アメリカ発世界恐慌が来る」「アメリカの金融機関は連鎖倒産する」「NYダウは8000ドルになる」・・・と警告してました。
 その具体的内容については、『アメリカ経済終わりの始まり』(06年11月)『世界バブル経済終わりの始まり』(07年6月)で詳細に分析し、予測。いま、それが怖ろしいほどピタリと的中してますよ。

 07年8月になって、サブプライム・ショックで世界同時株安が起こるやいなや、新聞やエコノミストたちは一斉に「サブプライム、サブプライム」と騒ぎ立ててますが、こういう後付理論はだれでもできるのよ。
 先を見通してもらいたいわな。それが仕事だろうが。

「北京で蝶がはばたくとニューヨークでは嵐が起きる」という複雑系の世界をまざまざと見せつけられてますな。
 金融の世界はボーダーレス。先物取引やインターネットの普及で時間と空間をも超越しているため、高利回りを求める投資銀行やヘッジファンド、国富ファンドがいま大暴れしてます。

 昨日、Citiの07年下期のサブプライム・ロスが発表されましたけど、ここはどこの国富ファンドが救済に乗り出すのかね? 10年くらい前にお世話になったサウジの王様でしょうか。

「FRB(連邦準備制度理事会)が金利を下げるとき、NYダウは暴落する」
 これが前々著から一貫して主張してます。ほら、下げるたびにドカンドカン落ちてるでしょ。この1月、また下げますよ。緊急に。もう下げざるをえないもの。

「最大損失1500億ドル」と議会(07年11月8日)で証言したバーナンキですけど、そんな甘くはありませんでしたね。

 さて、サブプライムショックと騒いでるだけでは能がありません。大切な虎の子と生活を防衛しなくちゃいけないもの。

 世界と、とりわけ日本に与える影響にはどんなことがあるのか? わたしたちの生活は一変してしまうのか? 資産は保全できるのか、有効な投資運用法があるのか?
 2008年の世界と日本はどうなるか・・・予測したのが本書。


 まず第1章ではサブプライムショックの本質について喝破。『ガイアの夜明け』に出演したとき、ロサンゼルスをつぶさに視察しています。新聞、テレビではわからない現実をレポートします。
う。

 第2章では、サブプライムショックはアメリカやヨーロッパだけの問題ではなく、中国を直撃! えっホント? 中国だけは元気なんじゃないの? すく゜に復活するんじゃない? そんなことありません。
 この砂上の楼閣国家がどういう理由で倒壊するかをデータと現地視察によって指摘。

 第3章では、資源をキーワードに大国復活を目指すロシアの動きについて。

 第4章では、こんな時代にいちばん効率的な投資運用の方法をずばりアドバイス。

 第5章では、日本勝ち残りの論理を展開。その根拠はなにか?
 かつて「黄金の国ジパング」と呼ばれ、世界が憧れた日本が復活すると主張。
  
 著者は経済評論家でもなければ投資家でもありません。アメリカのネバダを中心に金鉱山事業を営む経営者なんですね。かつて、メリルリンチ、ソロモンブラザースで活躍したトップセールス。現在、国内外の投資銀行のCEOにはかつての部下も少なくありません。
 まっ、こんな本はめったに読めませんよ。目から鱗。450円高。