2008年01月20日NHK土曜ドラマ「フルスイング」

カテゴリー中島孝志のテレビっ子バンザイ!」

 この冬、各局ともドラマに力を入れてますな。ざっとみるだけでも、日テレでは「1ポンドの福音」(亀梨和也)「貧乏男子ボンビーメン」(小栗旬)「斉藤さん」(観月ありさ)、隣のTBSでは「だいすき!!」(香里奈)「エジソンの母」(伊東美咲)、フジでは「◆ハチミツとクローバー」(生田斗真)「薔薇のない花屋」(香取慎吾)「鹿男あをによし」(玉木宏)「あしたの、喜多善男」(小日向文世)で、テレ朝では「交渉人」(米倉涼子)という具合。

 いつもこのくらい力を入れてもらいたいね。

 さて、テレビドラマフリークの私の評価は、「斉藤さん」はヒットする。これ、だれもが感じてる潜在意識の欲望をうまくドラマ化してるもの。
 「喜多善男」って、黒澤明の「生きる」の一部分を引っこ抜いて膨らませた? 「エジソンの母」は演技力に「低評」のある美咲ちゃんにドンピシャの役。この人、主役にするならこの手の役しかないよな。
 「薔薇」ねぇ。率はとれますな。けど、どういいうわけか、「もうだれも愛さない」(フジ)と二重写しになっちゃった。なんでだろう?

 いや、お見事。それにしても、この前の秋のドラマは酷かっなぁ。あれじゃ、だれも見ないよね。あまりにも視聴率が低いんで、「この時間帯はだれもいない」とか言われたりして。
 たしかにいないんだよ。忙しいんだから。それに、いまや1カ月分HDDに録画しといて、評判になった番組だけピックアップする賢い視聴者も増えてる。

 でも、やっぱリアルタイムで見たいよ、1週間心待ちにしてる番組だってあるさ。もち、やっぱ率がとれるドラマなんだよね。

 で、この冬イチオシのドラマはこれ。土曜午後9時放送「フルスイング」(高橋克実・NHK)。原作は「甲子園への遺言」。版元は講談社。
 以下は講談社の担当編集者との会話。

「読売と毎日?ダメだよ、日経と朝日に出さなくちゃ」
「もちろん出します。けど、まだ取れてないんです」
「出版時期わかってるんだから。なんで押えておかないのよ!」
「すみません」
「なにこれ?こっちはなんで写真入りでこんなに大きいの?」
「この土曜日からNHKでドラマがスタートするんです」
「ドラマ?」

 これ、私がプロデュースした『無法バブルマネー終わりの始まり』の新聞広告見本を担当者が持ってきた時のやりとり。
 読みました。見ました。これはいい。ヒットします。いや、ホームランだ。
 原作もいいけど、なんといってもテレビの脚本が巧いよぉ。原作の前半部分をパッと捨てちゃって、教師になってからの部分を膨らませてる。

 これは視聴率とるよぉ。見ててごらん。口コミで広がるから。先に紹介したドラマなんか吹っ飛んじゃうかもしれませんな。よくある教師VS生徒という図式じゃない。もっと広角打法。
 教師というより人間ドラマになってる。大人が見ます。大人が見て感動するドラマだよ、これは。


やっぱりNHKの演出は巧いわ。

 ドラマの主人公は高林。モデルは高畠導宏という人。知らんかったねぇ。
 プロ選手としての実績はないに等しいけど、南海、ロッテ、ヤクルト、ダイエー、中日、オリックス、千葉ロッテと、プロ7球団で30年間、打撃コーチとして活躍した人物とのこと。イチロー、落合、サブロー、藤原(南海)などを育てた名伯楽なんだって。

「教師ってコーチに似とりゃせんですか?」
「誉めて誉めて誉め倒してやろうと思うとります」
「1試合4打席=12球の中で1球を確実に打てる技術を磨くんじゃ」

 コーチの勉強のために通信教育で教職課程を取得。勉強熱心、研究熱心。それが生きた。
 コーチをクビになり、知人の薦めで福岡の高校で実習を受けます。わずか2週間の出来事が彼を変えてしまうのね。失った夢を生徒のおかげで取り戻します。生徒も彼の長所進展法で心を開きます。
 とうとうプロ球団からのコーチ要請を断っちゃう。そして甲子園出場に賭ける・・・彼に病魔が襲います。

 教師になってからわずか2年間。「夢」にこだわり「夢」に生きた野球バカの物語。バカっていいよな。最高の誉め言葉だよ。だって、一生を棒に振っても後悔しない仕事を見つけたってことなんだもん。

 土曜が楽しみになるな。演じる高橋さん、これが代表作になるな。遅咲きの花は大きく開いてもらいたいな。こちらまで嬉しくなるな。

 追伸 やっぱ売れてますな。『甲子園への遺言』は芥川賞、直木賞の新刊2冊、『広辞苑改訂版』を押えてアマゾンで1位。『無法バブルマネー終わりの始まり』は11位(紀伊国屋等のリアル書店では1位!)。



いよいよ明後日22日(火)より「中島孝志の毒書人倶楽部」をオープンします。詳細は左枠の「玉ねぎ坊や」をクリックしてくださいね。