2001年03月26日「ザ・会議室」「ぼくらがドラマをつくる理由」「こんな人が解雇(クビ)になる」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「ザ・会議室」

 伊集院光・みうらじゅん・山田五郎著 光進社 1400円

 伊集院さんはあのデブタレ、山田さんは「アドマチック天国」に出ているタマネギ頭の人、みうらじゅんさんとなると、どこのだれだかわからないかも。わたしも顔は知ってたけど、こんなにおもしろい人とは知らなかった。
 この人の発言がぶっ飛んで良かったです。

 この本はタイトルにあるように、きわめていい加減な人たち(ということは、とらわれず、こだわらず、かたよらず、本物のブレストが期待できるってこと)が21世紀を勝ち抜くためのビジネスヒントを口から出任せで語るという趣向。でもって、役に立ったかと言われると、どうなんでしょ。
 新都税から海の家まで、どっとこんなのどうっていう企画提案が24もあるんだけど、これがいちいち業界関係者にコメントを求めてるわけ。たとえば、都税とかだと、東京都主税局総務部総務課の人がコメントしてるわけ。一方は不真面目に、もう片方はくそ真面目に答えてる。このギャップがおもしろい。でも、非真面目に回答してたら、ホントに使える企画があったかも。

 気づいた発言を以下に紹介しておきましょう。
 「カリスマ店員と店長はどちらが偉いの?」
 これは完璧にカリスマ店員です。だって店長の代わりはいくらでもいそうだけど、カリスマ店員はそんな分けにはいかないもの。ビジネスマンもカリスマビジネスマンといわれるようにならなきゃ。
 「ドラえもんの道具は1300種類」だって。でも、単行本未収録のものも数えると1800もあるらしい(けどけど、ホントは4500もあるって話もあるけれど。どれがホントなんだろう)。
 「コンビニは挨拶の良し悪しで、強盗が入るかどうか決めてるらしい」(ローソン広報の話)。実際、犯行に及ぶ前に下見に行く。そのとき、ニコニコと声をかけられると、顔を見られたと思い込むらしい。
 「むかしは競馬にシマウマを走らせようとしたことがあった」
けれども、シマウマは野生で乗用に向かず、鞍がつけられなかったために止めたそうです。
 「外食産業はいまや29兆円だと」
 すごいですね。

 「標準語は硬いから、謝るときには不便。方言は便利だね」
 ホント、そう思います。この前、うちに仙台から来ましたって、東北弁丸出しの兄ちゃん2人がやってきました。なにしてたかというと、「ネーブル買ってよ。こんな買ってくれてるから」と八百屋の前垂れをしてるわけ。それで、表に1トントラックがあるから食べて決めてくれというわけです。
 そこで、一言。
 「これ、どこの産?」
 「フロリダ産」
 「あっそ、ならいらない」
 「えっ、なんで?」
 「仙台なら、国産もってこいよ」
 これでピンときました。これ新手の詐欺ですよ、きっと。東京人は方言なら騙されると思って、わざわざ東北弁使ってんの。うちの両親は2人とも東北生まれの東北育ちだけど、話すときは東北弁消すからね。「恥ずかしいから」って。
 ところが、この若い2人の兄ちゃんたちはそれがなく、むやみやたらに聞き取れないほどの訛りプンプンで話すわけ。
 「だから、いらないよ」と答えたんです。お向かいさんも出てきてたから、「これ、品悪いよ」と大声で伝えておきました。あの2人、嫌な顔してたけど、こういうの得意だから。
 でも、ホントに仙台から来てた良心的な八百屋さんならゴメンね。けど、そうじゃないと踏んだね。
 40円高。


2 「ぼくらがドラマをつくる理由」

 北川悦史子ほか3人 角川書店 571円

 シナリオライターの北川さん、それにテレビ局の現役プロデューサー3人が絡んでヒット企画について、あぁだ、こうだと話してる本です。松嶋奈々子ちゃん主演の「百年の物語」のプロデューサーもいてなかなか面白かった(これ、再放送してくれないかな。でも、一挙に放送するとなるとたいへんだよね。半日仕事だもんね)。

 この脚本家は「ロンバケ」「ビーティフルライフ」「愛していると言ってくれ」といったスーパーヒット・シナリオを書いてるんだけど、わたし、これすべて見たことないんです。
 好きなのは、「やまとなでしこ」かな。いま新刊レンタルがあるからさっそく借りて見たけど、おもしろいね。これは中園ミホさんの脚本。
 シナリオの書き方について裏話してるけど、これは小説家も同じですね。浅田次郎さんも毎日、ふと浮かんだ言葉をちゃんとノートに採っていると言ってたけど、この人も同じ。だから、生活の匂いのある言葉が出てくるんですね。とってつけたようなキーワードじゃないもの(といっても、見たことありませんが)。

 気になったフレーズを紹介しておきます。
 「ビューテイフルライフは、これは身体が不自由な人と、心が不自由な人とのラブストーリーなんですよね」
 これ正解です。黒と白、赤と黒、善人と悪人、敵と味方・・・こういう対立関係にあると構図がわかりやすいんです。また、それが絡まるから化学反応を起こしておもしろいわけです。
 いい人ばかり出てくるドラマってあまりないものね。寅さんくらいかな。あれ、全部見たけど、悪人出てこないでしょ。泥棒でも憎めないタイプの人しか出てこないもの。
 テレビ局でも作り方が違うんですね。フジはキャスティング先行だそうです。つまり、俳優を押さえておいて、それじゃ、プロデューサーはだれにすべぇ、作家はだれにすべぇかという感じです。TBSはこの逆。
 「踊る大捜査線」の逆バリで「ケイゾク」ってドラマができたらしい。二番煎じではなく、対極に張るっていうのは目利きですね。
 「ボクは簡単に土下座できる人間なんです。この役者さんでこのドラマを見たいという気持ちがあれば・・・才能に土下座できるんです」
 これはいいセリフですね。
 「数字がすべてですよ、といいながら、それだけのはずがありません。でなきゃ、こんなハードが仕事ができるわけがない。みんな表現したいものを必ず持ってるんです」
 そうなんです。あの殺人事件を起こした少年たちもこんなことでしか表現する何ものも持たない人間なんですね(いきなり話は飛びますが)。
 25円高。


3 「こんな人が解雇(クビ)になる」

 夕刊フジ特別取材班著 角川書店 571円

 もういろんな人が出てきますねぇ。リストラって大変ですな。
 他人事のように言いますが、ホント、他人事です。
 というのも、わたし、リストラされようにもとっくの昔にサラリーマン辞めてしまいましたから。でもね独立っていっても、リストラとまったく同じ。というより、さらにものすごい。毎日、瞬間、瞬間にリストラされてるようなもんですよ。
 なぜなら、1−本が売れなければ注文は来ません。2−売れる本をプロデュースしなければ出版プロダクションとしても成立しません。3−顧問先にものすごく儲けてもらわなければ、コンサルタントとして契約が途切れてしまいます。4−おもしろくてタメになる話ができなければ講演依頼もありません。とくに年間通じて同じ聴衆相手に話をする研究会も主宰してますから、これは真剣勝負そのものですよ。5−いま6社の雑誌に連載してますが、あっちの雑誌、こっちの雑誌に同じような話を書いていれば、これまた注文はきません。6−その他にもたくさんあります。
 ということは、気分は毎日がリストラ、毎日が契約更新なんですね。

 「それは特殊技能だから、できるの?」
 違います。まったく違います。少し早く気づいて、少し早く手を打って、少し早く行動すれば、だれにでもできるんです。これ、ホントです(最悪でもわたし程度のレベルにはなれます。いま、わたしのような仕事をしたい人に直々に指導してますが、みんなあっという間です)。
 25円高。