2008年06月10日「スティーブ・ジョブズ 偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡 」  林信行著 アスキー 2625円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 ジョブズの写真とちょっした原稿でまとめられた大型本です。

 iPhoneがいよいよ発売されますね。これ、iPod+ケータイ+次世代モバイル通信機器。バカ売れ必至だと思いますよ。
 だって、この私もいよいよDoCoMoからソフトバンクモバイルに換えちゃおうかと思ってるくらいだもの。私、この世にケータイが出現した翌日にはもう購入してたんだもの。「お好きな番号どうぞ」と言われたくらい。DoCoMo歴23年でっせ。

 「今日、アップルは電話を再発明する」
 「どうあっても、コンピュータをプラスティックのケースに入れたいと思った」
 「海軍に入るくらいなら海賊になったほうがましだ」
 「Stay Hungry Stay Foolish(ハングリーであれ、バカであれ)」

 とまあ、ジョブズ語がたっぷり。


 アップルの凄さはいったいどこにあるんでしょう? マイクロソフトは時代の寵児にはなったけど、時代を創造することはありませんでした。
 たしかにOSは売れて、ビル・ゲイツは大資産家になりました。けど、時代を変えるクリエイターたちはみなMacに向かったもんね。

 Macはプロ好み、玄人好みなのよ。小池百合子さんは一般受けするけど、櫻井良子さんは意識の高い人=有識者の熱い支持を受けてるというようなものね。

 さて、彼の生みの母親は若い未婚の院生(父親は大学教授)でした。で、生まれたらすぐ養子に出すと決めてたんです。

 条件は1つ。「育ての親が大卒であること」。
 この意味、わかります? 欧米ほど学歴社会はありませんよ。しかも、学歴は遺伝するんです。富を伴ってね。これが現実なんだろね。

 ある弁護士夫婦が引き取ることになってたんだけど、いざ生まれてみたら、やっぱり女の子が欲しいとキャンセル。で、養子縁組リストの次点に夜遅く電話が行った。

 「男の赤ちゃんですけど欲しいですか?」
 「もちろん」
 
 けど2人のうち、母親は大学なんて出てないし、父親は高校もロクに出てない。だから、生みの母親は養子縁組サインを拒むわけよ。「将来、必ず大学に行かせる」と約束して、ようやく折れるわけ。
 
 17年後、彼は大学に入ります。けど、労働者階級の親の年収はすべて学費に消えるばかり。で、彼は大学を中退すんの。

 けど、これがその後の人生を決定づけてしまうのね。

 人生とは面白いね。創業したアップルを追い出されたり、末期癌と診断されて絶望の淵にさまよったりすることもあったけど、持ち前のポジティブ発想で運を引き寄せた。

 若い頃、「The Whole Earth Catalogue(全地球カタログ)」というスチュアート・ブランド製作のバイブルがありました。タイプライターとはさみ、そしてポラロイドカメラで作られたもの。
 その最終号の背表紙には朝早い田舎道の写真が1枚。どこでも見るような風景。
 その写真の下にこんな言葉が書かれてたの。

 Stay hungry, stay foolish.

 「私は常に自分自身そうありたいと願い続けてきた」と述べてます。
 アップ神話のピーク? いえいえ、始まりですね。280円高。