2001年03月05日「あの娘は英語がしゃべれない!」「笑点の謎」「中年英語組」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 今回も3冊ご紹介することにします。

1 「あの娘は英語がしゃべれない!」 安藤優子著 集英社文庫 440円
 英会話の指南書ではありませんからね。
 16歳の小娘がミシガンのハートランドに留学します。1年間のホームステイ。飛行機のなかで、コーヒーをかけられたエア・クルーから「あの娘は英語が話せないよ」と話しているのを漏れ聞いてショックを受け、アメリカに着いたとたんに「こなきゃ良かった」と後悔の嵐。
 でも、人間味溢れるホームステイ先のベイリー家の人々にくるまれて、彼女は人間的にタフになります。
 登場人物みんな温かくていいんです。まるで、「大草原の小さな家」に出てくる人たちみたい。7歳のアンディに発音を矯正してもらったり、ママのジョイスから「言葉は話したいから他人に伝わるの。アナタは最初から他人に何か話そうとする気持ちにかけているだけ」「アナタは英語がしゃべれないんじゃないの。人前で恥ずかしい思いをしたくないだけよ」と叱咤激励されて心を少しずつ開いていきます。
 大嫌いなスピーチの授業。カウンセラー室に逃げ込みますが、「スピーチほど社会に出て役に立つ能力はない。アメリカの高校では、社会に出て生きていける勉強をさせているんだ」と発見したり、憧れのシニアプロム(ダンスコンクール)では、学校一のモテモテ男とペアを組んでクイーンになったり。
 まさに青春。若いときでなければ体験できないこと。そのすべてが凝縮されている1冊でした。
 NHKの朝ドラにピッタシなんだけど、舞台がアメリカじゃ無理かな。だれか映画かドラマにしてくれないかな。モーニング娘。のだれかに優子役をさせればそこそこ受けるんじゃないの?
 業界の人がいたら、ちょっと考えてみてよ。
 この本で彼女がとっても好きになりました。これからはフジテレビのニュースを贔屓にしようっと。
 いい本です。200円高。

2 「笑点の謎」 笑点探偵団著 河出書房新社 980円
 笑点。好きなんです。とっても。
 子どもの頃から、どんなに遊んでいても、笑点がはじまる前には絶対に帰ってきてテレビの前に座っていました。みんな集まって家族団らん。日本のいい時代の風景ですな。
 わたしが好きだったのは、歌丸、小円遊の全盛期。「はげ」「化け物」の応酬。それに三波伸介さんが良かった。出演者の迎合しないでむちゃくちゃだったもの。
 「座布団とっちまえ、馬鹿野郎」
 この乱暴な言葉。いいですねぇ。
 でも、これで35年続いてるんですよ。だれが何と言おうと、日本テレビのカンバン番組です。
 「えっ、巨人戦じゃないかって?」
 あれは季節商品。だから、日テレのことを業界では「金魚屋さん」と言ってるんです。
 その心は?
 「夏はいいけど、冬さっぱり」
 携帯電話の着メロでも、人気はベスト10に入つてるんです。わたしも電車の中で聞いて笑っちゃいました。あと笑ったのは、「出前一丁」と「吉本新喜劇のテーマ音楽」。
 ところで、あの座布団1枚35000円もするんですね。本番では55枚用意してあるらしいんですが、最近数えたところでは1枚足りなくなってるらしいです。みんな小遊三さんを疑ったらんですが、犯人は山田隆夫さんと判明しました。「お宅拝見」でその座布団がちゃんと映ってました。
 ところで、この本には間違いが1カ所あります。
 「喜久蔵ラーメンは代々木駅前と岩手県盛岡のホテル、それにバルセロナの3軒にある」と書いてますが、わが地元の横浜伊勢佐木町にもあるんです。それにスペインの店はもう閉めたはず。彼の地ではシ・エスタ(昼寝)が習慣、しかも昼飯は2時間もとる。まったく回転が良くない。それでやめたんですね。
 どうして、笑点オタクのわたしのところに聞きにこなかったんでしょうか。
 30円高。

3 「中年英語組」 岸本周平著 集英社新書 680円
 著者は大蔵省のキャリア。英語はできても英会話ができない典型。
 にもかかわらず、命令でプリンストン大学に派遣。
 そこからドタバタがはじまります。電話はかけられない、マクドナルドで注文できない。挙げ句の果ては、どこをどう間違ったのか、学生の前で講義をする羽目になるや、学生の質問してる内容がわからなくて、「いい質問だね。でも、もっとみんなにわかるようにわかりやすく質問してごらん」と逃げたり、「それはあまりにも複雑だから、あとでわたしの部屋に来るように」と時間を稼いでおいて、ほかの学生にいったいなんて訊いたのか教えてくれ、と訊く始末。
 でも、こうやって必要に迫られて、必死に「英会話」を勉強します。
 まさにドロ縄。でも、いざとなればこれだけできるんだ、という勉強法がわかりますね。
 好著。50円高。