2001年02月26日「黒い花びら」「泡の中の感動」「ウェルチ リーダーシップ31の秘訣」
今回も3冊ご紹介することにします。
1 「黒い花びら」 村松友視著 河出書房新社 1500円
この人、水原弘を冠する言葉はたくさんあります。
たいていは「第一回レコード大賞歌手」という紹介ですが、ときに「アルコールと借金で破滅した歌手」とか「昭和の無頼歌手」とか、まぁいろいろです。ただ言えることは、歌が抜群にうまくて、ムード溢れる大人の歌手だったということでしょうか。
とくに個人的に、わたしはこの人の大ファンで、そのためにこの本をチラッと読んだときに、前作の「力道山がいた」とか、さらに前々作の「トニー谷、ざんす」と比べて、ずいぶん手抜きをしたなという印象が抜けず、買ってはいたもののいままで読まなかったのです。
けど、先日、久方ぶりにカラオケに行って大好きな「黄昏のビギン」「君こそわが命」をオヤジ丸出しで歌ったのですが、「あぁ、水原弘はやっぱりいいな」と、本を引っぱり出してきた、というわけです。探すのに1時間もかかってしまいました。
「黒い花びら 静かに散った」の歌詞は、新人作詞家の永六輔さん、曲は新人作曲家の中村八大さん。歌手はもちろん、レコード会社も新会社。すべて新人というわけです。永さん、八大さんは「上を向いて歩こう」を作ったゴールデンコンビですが、九ちゃんの登場は水原弘のあとです。
わたしたちの子供時代は、レコード大賞も権威があって、「いったい、今度は誰だろうね」と友人とコロッケを賭けたりしたものです。その第一回の受賞者なんですが、元もとこの曲はノミネートすらされていず、というのも、売れたのがその年の10月、11月、12月で競馬で言えば、完全な差し馬。なんと審査の最中に、理事の1人が慌ててレコード会社に電話してきて、「リストに早く入れろ」。それで受賞となったのです。
それにしても、勝新太郎さんを兄貴と慕うほどデカダンを気取った彼です。道で「御大(おんたい)」などと声をかけられると、「ついてこい」と見ず知らずの人間を引き連れて銀座で豪遊。いつも飲むのはレミー・マルタン。価格破壊がはじまる前のレミーですから高い、高い。当時の金で、1日に300万円も散財したとか。当然、勝さんがそうであったように借金の山。
でも、止められなかった。挙げ句の果てはお定まりの肝硬変。最後は内臓のあちこちがボロボロで血が噴き出して止まらず、小倉のホテルで救急車に運ばれて、そのまま亡くなります。42歳でした。
昭和の歌謡界、芸能界をみごとに駆け抜けていった星(スター)で最後まで格好良かったです。彼以来、どの芸能人を見ても年金を当てにしているようなタイプの人ばかりで、「俺はスターだぞ」と見得(見栄ではなく)を張り続けた水原弘はやっぱり格好いいな。
100円高。
2 「泡の中の感動」 瀬戸雄三著 清水弘文堂書店 1800円
分厚いのです。424ページもありました。それに大きいのです。A6版ですよ、この本。
それに不思議なのが、版元。マスコミの隅っこで長年仕事をしてきましたが、「この出版社がビジネス書?」と目が点になりました。だって、フロイト、ユング、デューイとか、啄木、茂吉、藤村といった本ばかり出してきた版元ですよ。
でも、読んでいくうちに氷解。今度、アサヒビールとタイアップしてASAHI ECO BOOKSというシリーズを5年間で20冊も発刊するんですと。「ナールホド」。
さて、著者はそういうわけでアサヒビールの会長さん。ただし、すべてインタビュー形式です。聞き手はアン・マクドナルドという女性。ビジネス経験のまったくない素人さん。ただし、それだけにビジネスマンにとっては当たり前のことをわざわざ聞いてくれるから、逆に瀬戸さんが深いところまで話してくれる。まさに、1人の天才より100人の愚人の質問は鋭いということが再確認できました。
この人、20代の頃はかなりやんちゃだったみたいです。
大市場大阪を預かる支店長が、きれいな女将が経営する某店ばかりに夜な夜な出かけているのが気にくわないと、同僚と押し掛けるや、いきなり「支店長がいつもお世話になってます」と声を張り上げる。と、そこにいるのは当の支店長。
それで神戸の小さな出張所に転勤。まぁ左遷です。1カ月も命令を無視していたら、支店長直々に「いつまでいるんだ。俺が連れて行ってやる」と追いやられる始末。
でも、そのおかげでアサヒの牙城だった大阪市場ではわからないことがすべて見えてきます。なんと、神戸ではアサヒはまったく受け入れられていないことを体験します。そればかりか、全国どこでもキリン人気。それから30年以上もの間、この会社はシェアが33%から9%にまでコンスタントに落ちていきます。
でも、彼のところだけはシェアを増やします。
それで本社のビール販売課長に抜擢。ところがたった10カ月で解任。わざわざ転校した子どもも元の学校に戻ります。
そんな浮き沈みのビジネスマン人生がおもしろおかしく語られた好著。わたしはこの本をいきつけの焼鳥屋のカウンターで読破してしまいました。
90円高。
3 「ウェルチ リーダーシップ31の秘訣」 ロバート・スレーター著 日経ビジネス人文庫 600円
またやっちゃいました。
この本、以前読んだことあるんですよね。これがホントのダブル・ブッキング(って言うんだろうか)。
でも、いい本は何回読んでもいいし、それに前読んだハードカバー「進化する経営」は古本屋にやっちゃったし。
そこで再読。
やっぱり、いい本はいい。ポイントをキーフレーズでご紹介しましょう。
「どのアドバイスを受け入れるか、どれを無視すればいいか。最良のアドバイスに耳を傾け、もっとも役に立つと思われる経営理念に注目する」
「手遅れになる前に改革せよ」
「現実を直視せよ」
「ナンバー1か2になる。これは目標ではなく条件である」
「他社を圧倒する見込みのある事業でだけ競争しよう」
「象をカモシカにしなければならないのだ。贅肉をそぎ落とせ」
「会社をどう変えるか決定するにあたって、聖域はない」
「古い型のマネジャーは妥協を受け入れ、ものごとをまとめたがる。これからのリーダーは問題を提起し、議論し、解決する。明日が勝負であることがわかっているから、今日の流れに逆らうことを怖れない」
「あなたが変えようとしないのであれば、変えようとする人が必ず現れる」
この本でいちばん重要なポイントは次のフレーズではないでしょうかね。
「価値観を共有して結果を出さなければ会社には残れない」
再読だけど、50円高。
1 「黒い花びら」 村松友視著 河出書房新社 1500円
この人、水原弘を冠する言葉はたくさんあります。
たいていは「第一回レコード大賞歌手」という紹介ですが、ときに「アルコールと借金で破滅した歌手」とか「昭和の無頼歌手」とか、まぁいろいろです。ただ言えることは、歌が抜群にうまくて、ムード溢れる大人の歌手だったということでしょうか。
とくに個人的に、わたしはこの人の大ファンで、そのためにこの本をチラッと読んだときに、前作の「力道山がいた」とか、さらに前々作の「トニー谷、ざんす」と比べて、ずいぶん手抜きをしたなという印象が抜けず、買ってはいたもののいままで読まなかったのです。
けど、先日、久方ぶりにカラオケに行って大好きな「黄昏のビギン」「君こそわが命」をオヤジ丸出しで歌ったのですが、「あぁ、水原弘はやっぱりいいな」と、本を引っぱり出してきた、というわけです。探すのに1時間もかかってしまいました。
「黒い花びら 静かに散った」の歌詞は、新人作詞家の永六輔さん、曲は新人作曲家の中村八大さん。歌手はもちろん、レコード会社も新会社。すべて新人というわけです。永さん、八大さんは「上を向いて歩こう」を作ったゴールデンコンビですが、九ちゃんの登場は水原弘のあとです。
わたしたちの子供時代は、レコード大賞も権威があって、「いったい、今度は誰だろうね」と友人とコロッケを賭けたりしたものです。その第一回の受賞者なんですが、元もとこの曲はノミネートすらされていず、というのも、売れたのがその年の10月、11月、12月で競馬で言えば、完全な差し馬。なんと審査の最中に、理事の1人が慌ててレコード会社に電話してきて、「リストに早く入れろ」。それで受賞となったのです。
それにしても、勝新太郎さんを兄貴と慕うほどデカダンを気取った彼です。道で「御大(おんたい)」などと声をかけられると、「ついてこい」と見ず知らずの人間を引き連れて銀座で豪遊。いつも飲むのはレミー・マルタン。価格破壊がはじまる前のレミーですから高い、高い。当時の金で、1日に300万円も散財したとか。当然、勝さんがそうであったように借金の山。
でも、止められなかった。挙げ句の果てはお定まりの肝硬変。最後は内臓のあちこちがボロボロで血が噴き出して止まらず、小倉のホテルで救急車に運ばれて、そのまま亡くなります。42歳でした。
昭和の歌謡界、芸能界をみごとに駆け抜けていった星(スター)で最後まで格好良かったです。彼以来、どの芸能人を見ても年金を当てにしているようなタイプの人ばかりで、「俺はスターだぞ」と見得(見栄ではなく)を張り続けた水原弘はやっぱり格好いいな。
100円高。
2 「泡の中の感動」 瀬戸雄三著 清水弘文堂書店 1800円
分厚いのです。424ページもありました。それに大きいのです。A6版ですよ、この本。
それに不思議なのが、版元。マスコミの隅っこで長年仕事をしてきましたが、「この出版社がビジネス書?」と目が点になりました。だって、フロイト、ユング、デューイとか、啄木、茂吉、藤村といった本ばかり出してきた版元ですよ。
でも、読んでいくうちに氷解。今度、アサヒビールとタイアップしてASAHI ECO BOOKSというシリーズを5年間で20冊も発刊するんですと。「ナールホド」。
さて、著者はそういうわけでアサヒビールの会長さん。ただし、すべてインタビュー形式です。聞き手はアン・マクドナルドという女性。ビジネス経験のまったくない素人さん。ただし、それだけにビジネスマンにとっては当たり前のことをわざわざ聞いてくれるから、逆に瀬戸さんが深いところまで話してくれる。まさに、1人の天才より100人の愚人の質問は鋭いということが再確認できました。
この人、20代の頃はかなりやんちゃだったみたいです。
大市場大阪を預かる支店長が、きれいな女将が経営する某店ばかりに夜な夜な出かけているのが気にくわないと、同僚と押し掛けるや、いきなり「支店長がいつもお世話になってます」と声を張り上げる。と、そこにいるのは当の支店長。
それで神戸の小さな出張所に転勤。まぁ左遷です。1カ月も命令を無視していたら、支店長直々に「いつまでいるんだ。俺が連れて行ってやる」と追いやられる始末。
でも、そのおかげでアサヒの牙城だった大阪市場ではわからないことがすべて見えてきます。なんと、神戸ではアサヒはまったく受け入れられていないことを体験します。そればかりか、全国どこでもキリン人気。それから30年以上もの間、この会社はシェアが33%から9%にまでコンスタントに落ちていきます。
でも、彼のところだけはシェアを増やします。
それで本社のビール販売課長に抜擢。ところがたった10カ月で解任。わざわざ転校した子どもも元の学校に戻ります。
そんな浮き沈みのビジネスマン人生がおもしろおかしく語られた好著。わたしはこの本をいきつけの焼鳥屋のカウンターで読破してしまいました。
90円高。
3 「ウェルチ リーダーシップ31の秘訣」 ロバート・スレーター著 日経ビジネス人文庫 600円
またやっちゃいました。
この本、以前読んだことあるんですよね。これがホントのダブル・ブッキング(って言うんだろうか)。
でも、いい本は何回読んでもいいし、それに前読んだハードカバー「進化する経営」は古本屋にやっちゃったし。
そこで再読。
やっぱり、いい本はいい。ポイントをキーフレーズでご紹介しましょう。
「どのアドバイスを受け入れるか、どれを無視すればいいか。最良のアドバイスに耳を傾け、もっとも役に立つと思われる経営理念に注目する」
「手遅れになる前に改革せよ」
「現実を直視せよ」
「ナンバー1か2になる。これは目標ではなく条件である」
「他社を圧倒する見込みのある事業でだけ競争しよう」
「象をカモシカにしなければならないのだ。贅肉をそぎ落とせ」
「会社をどう変えるか決定するにあたって、聖域はない」
「古い型のマネジャーは妥協を受け入れ、ものごとをまとめたがる。これからのリーダーは問題を提起し、議論し、解決する。明日が勝負であることがわかっているから、今日の流れに逆らうことを怖れない」
「あなたが変えようとしないのであれば、変えようとする人が必ず現れる」
この本でいちばん重要なポイントは次のフレーズではないでしょうかね。
「価値観を共有して結果を出さなければ会社には残れない」
再読だけど、50円高。