2008年06月28日赤木圭一郎「抜き射ちの竜」シリーズ3部作

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 今月はコンサル、連載、講演・セミナー等の仕事のほかに、単行本の執筆が2冊、プロデュースも2冊頼まれてるのよね。で、ようやく、めどが付いたんで、まる1日、映画三昧しようかな?
 
 でもさ、先週先々週とプロデュース本が完了した日から1日おきに映画館に通っちゃって、あまり食指を動かすようなシャシンがないんだよなあ。
 7月5日からの封切りを待ったほうがベターだよね。

 で、その代わりといってはなんなんだけど、これ。この前、日活アクションの本読んで気になってたの。

 いいよなあ。この無国籍映画。役者というのは、「蒲田行進曲」の銀ちゃんじゃないけど、現実の世界と虚構の区別がついたりつかなかったり。つまり、人生そのものがワープしちゃうんだよね。

 赤木圭一郎(敬称略・以下同)だって、愛称がトニーだぜ。トニー・カーティスに似てるからだって。トニー・カーティスか。ジーナ・ロロブリジーダとサーカス映画に出てたっけ。
 で、宍戸錠はイドンとか自分で呼んでたみたい。



 この映画の良さは、「ありえねえ」って世界を恥ずかしくもなく見せてるとこ。で、現実にはけっして言わない(言えない)くさいセリフをきまじめに言うところ。これは成りきらなきゃとてもできない仕事だよ。
 
 えっ、どうして電車の網棚からボストンバッグが落ちてきて、しかも、それが札束がどっさり見えるように空いてるわけ。普通、チャックくらい閉めてるだろうが!
「これだけ調べるのに3ヶ月かかったんだぜ」なんて、刑事が組員に調書を平気で見せるわけ?

 ・・・というような疑問を感じちゃいけないの。



 やっぱ、赤木圭一郎も1本目は「ありえねえ」と感じたんだろうな。「どうしてこういう縁起するの?わからない」って言うこと聞かなかったらしいよ。でも、そこが映画の世界なんだよなあ。
 ほら、主人公は絶対死なないのと同じだよね。

 このDVDシリーズのいいとこは「おまけ」がついてるとこ。宍戸錠と映画評論家が映像と同時に当時の思い出やエピソードを語ってるのね。つまり、裏話が聞けること。
 もち、赤木圭一郎のことも話してるけど、脇の悪役や女優についてもいろんなこと話してるわけ。「この役者、大映で受けなくて日活にやってきた」とかさ。




 シリーズ3部の「不敵に笑う男」のヒロインは笹森礼子。この女優、好きでね。夏目雅子が登場するまでファンでしたね。まっ、いつもいちばん好きなのは浅丘ルリ子なんだけど(1部、2部は浅丘ルリ子がヒロイン)。

 ストーリー? 単純、単純。たぶん、脚本は1日で書いてたんじゃないかな。だって、ワンパターンだもの。で、それでいいの。
 お客はトニー演じる竜とジョー(銀だとかケンだとかいろいろ)との言葉の掛け合いに酔ってるわけだからさ。

 で、この「拳銃無頼帖」は「旭の渡り鳥シリーズ」と同じく、全国自治体とのタイアップ映画なのね。金沢とか四日市とか、人口30万人以上の地方都市から協賛してもらうわけ。つまり、昭和30年〜40年初めの日活というのは「町おこし」にそうとう貢献してたわけよ。

 ある意味、この方式をそっくり真似たのがその後の松竹。あの寅さん映画なんてそうでしょ? ヒロインではなくマドンナが呼び物だったけど、同時に今度はどこに寅さんが出没するか。まるで熊みたいだけど、そんな楽しみがあったわけ。

 赤木圭一郎は短足で典型的な日本人体型で運動音痴。でも、撮影になると様になるような動きをしたらしい。で、歌が下手。たしかに、この人のLPレコード持ってるんだけど、下手ですな。でも、味がある。
 部分的には欠点はいっぱいあんだけど、トータルで見ると「スター」なんだね。立っているだけ、座っているだけで、様になる。やっぱ、さすがだよ。