2000年09月30日「昭和上方漫才」「素晴らしき吉本芸人たち−−前田五郎写真館」「笑芸人」
さて、今回はお笑い本を3冊ご紹介します
1「昭和上方漫才」 桂米朝・上岡龍太郎著 朝日新聞社 1800円
米朝、上岡の対談集だ。後半はいとし・こいし師匠を交えたインタビューになっている。芸人に関するエピソードのオンパレードである。エンタツ・アチャコのずっと前から話がはじまっている。わたしはどうも芸能ネタ、とくに漫才、落語が好きで(林家ペーさんの芸が好きで追っかけだった)、この手の本は条件反射で買ってしまう。
ところで、いとし、こいしは上岡にとって命の恩人らしい。というのも、彼は当時、薬(といっても睡眠薬)にアルコールを飲むとハイな気持ちになる、という遊びに凝って、とうとう出番に穴を開けてしまったらしい。場所は岐阜の柳ヶ瀬だ。遅れながらも駅まで駆けつけるが、漫画トリオのほかの二人のメンバーに顔向けができない。
そこでトンズラしよう、芸能界から足を洗おうと決意したのだが、駅でたまたまいとし・こいし師匠とバタリ。「なにしてんねん。こんなとこで。みんな探してたで。すぐに電話せい」。電話すると、「今日はええから。明日たのむでぇ」と救われる。これで首がつながった。こんな経験があるから、「ボクはトンズラする芸人の気持ちがようわかる」と上岡は言う。厚かましいヤツなら行けるけれども、悪いという気持ちがあるからよけい顔を出せないのだ。
都はるみのうなり節は作曲家の市川昭介さんから教わったと思ってたら、実はそうではなかった。彼女の母親がタイヘイトリオという女二人、男一人のギター漫談のなかのタイヘイ夢路の歌い方が大好きで、それをそっくり真似させたらしい。これは発見だった(大した発見じゃないけれど)。
米朝さんはテレビ局の楽屋にいると、大蔵大臣当時の田中角栄とバタリ。「愛想がええ人で、三代目宮川左近が大好きで、この物真似でむかしは拍手をもらったものだ」とひとくさり。米朝さんは先代の節回しを聴いたことがない。すると、「こんな感じだよ」と角栄さんが物真似で唸りだした、という。「あの人はやっぱり人の心をつかむわ」と述懐。
こんな人間模様がたくさん散りばめてある好著。写真も豊富。わたしの大好きだったWヤング(自殺した中田軍治が元気だった頃の)、若いはんじ・けんじももちろん出ている。
2「素晴らしき吉本芸人たち−−前田五郎写真館」 同文書院 1500円
前田五郎とは、あのアホの坂田の相棒。コメディ?1の一人である。
大のカメラ好きで最初の給料で買ったカメラほど。そのカメラでずっと吉本の芸人たちや舞台、演芸館といった写真を撮ってきた。それはいまとなっては貴重で、新聞社の芸能部からも貸し出しを依頼されるほどである。
写真八割、文章二割といったところだろうか。仲間内でしか知らないようなはちゃめちゃな芸人人生が語られている好著。
3 「笑芸人−−第二巻」 白夜書房 1500円
ムックである。ブックとマガジンの中間だ。どうして、これを買ったかというと、サブタイトルに「笑点」とあったからである。
笑点とはあの笑点である。日本テレビの看板番組。お笑い番組の「サザエさん」だ。
日テレというのは、業界では別名「金魚やさん」と呼ばれている。そのこころは、「夏はいいけど、冬さっぱり」。良かれ悪しかれ巨人戦のある夏はいい。しかし、オフシーズンになるともうダメ。いまは三冠王の業績らしいが、むかしはこう呼ばれていた。
そのなかで、笑点はずっと高視聴率を取ってきた。わたしも好きで毎回見ている。
懐かしい芸人ばかりが登場している。
キザを売り物にした小円遊。この人は好きだったな。もともと、古典落語を得意としたものの、ときにど派手なスーツを着込んで立って漫談をしたことがあった。これは逸品だった。歌丸との掛け合いは最高だった。
春風亭梅橋。あの柳亭小痴楽だ。いつもブラックユーモアばかりで毒のある回答が多かったが、味のある天才的な落語家だった。酒で身を滅ぼしたが、ホントに好きな芸人だったな。
この番組はもともと「金曜笑席」といって「イレブンPM」の前にやってたのだが、視聴率がいいので夕方に持ってきた。談志が初代司会者だと思ってたら、初代は円楽だったらしい。ところが、「あまりの下手さ」のためにほんの数回(四回、つまり二週分の収録)で止めた。そこでそもそも企画した談志の登場となったわけだ。
とくに司会では三波伸介がいちばん好きだった。芸人に情け容赦なかったからだ。この人は落語家が回答すると、そのたびにカメラをアップにさせて自分のコメントをしゃべっていた。それが毒々しくておもしろかったのだろう。いまの司会者円楽は番組がはじまってから台本を見る。だから、ずっと視線を下に落としたままだ。棒読みである。
しかし、それにしてもみんな年を取ったナァ(わたしも取ったということだ)。
1「昭和上方漫才」 桂米朝・上岡龍太郎著 朝日新聞社 1800円
米朝、上岡の対談集だ。後半はいとし・こいし師匠を交えたインタビューになっている。芸人に関するエピソードのオンパレードである。エンタツ・アチャコのずっと前から話がはじまっている。わたしはどうも芸能ネタ、とくに漫才、落語が好きで(林家ペーさんの芸が好きで追っかけだった)、この手の本は条件反射で買ってしまう。
ところで、いとし、こいしは上岡にとって命の恩人らしい。というのも、彼は当時、薬(といっても睡眠薬)にアルコールを飲むとハイな気持ちになる、という遊びに凝って、とうとう出番に穴を開けてしまったらしい。場所は岐阜の柳ヶ瀬だ。遅れながらも駅まで駆けつけるが、漫画トリオのほかの二人のメンバーに顔向けができない。
そこでトンズラしよう、芸能界から足を洗おうと決意したのだが、駅でたまたまいとし・こいし師匠とバタリ。「なにしてんねん。こんなとこで。みんな探してたで。すぐに電話せい」。電話すると、「今日はええから。明日たのむでぇ」と救われる。これで首がつながった。こんな経験があるから、「ボクはトンズラする芸人の気持ちがようわかる」と上岡は言う。厚かましいヤツなら行けるけれども、悪いという気持ちがあるからよけい顔を出せないのだ。
都はるみのうなり節は作曲家の市川昭介さんから教わったと思ってたら、実はそうではなかった。彼女の母親がタイヘイトリオという女二人、男一人のギター漫談のなかのタイヘイ夢路の歌い方が大好きで、それをそっくり真似させたらしい。これは発見だった(大した発見じゃないけれど)。
米朝さんはテレビ局の楽屋にいると、大蔵大臣当時の田中角栄とバタリ。「愛想がええ人で、三代目宮川左近が大好きで、この物真似でむかしは拍手をもらったものだ」とひとくさり。米朝さんは先代の節回しを聴いたことがない。すると、「こんな感じだよ」と角栄さんが物真似で唸りだした、という。「あの人はやっぱり人の心をつかむわ」と述懐。
こんな人間模様がたくさん散りばめてある好著。写真も豊富。わたしの大好きだったWヤング(自殺した中田軍治が元気だった頃の)、若いはんじ・けんじももちろん出ている。
2「素晴らしき吉本芸人たち−−前田五郎写真館」 同文書院 1500円
前田五郎とは、あのアホの坂田の相棒。コメディ?1の一人である。
大のカメラ好きで最初の給料で買ったカメラほど。そのカメラでずっと吉本の芸人たちや舞台、演芸館といった写真を撮ってきた。それはいまとなっては貴重で、新聞社の芸能部からも貸し出しを依頼されるほどである。
写真八割、文章二割といったところだろうか。仲間内でしか知らないようなはちゃめちゃな芸人人生が語られている好著。
3 「笑芸人−−第二巻」 白夜書房 1500円
ムックである。ブックとマガジンの中間だ。どうして、これを買ったかというと、サブタイトルに「笑点」とあったからである。
笑点とはあの笑点である。日本テレビの看板番組。お笑い番組の「サザエさん」だ。
日テレというのは、業界では別名「金魚やさん」と呼ばれている。そのこころは、「夏はいいけど、冬さっぱり」。良かれ悪しかれ巨人戦のある夏はいい。しかし、オフシーズンになるともうダメ。いまは三冠王の業績らしいが、むかしはこう呼ばれていた。
そのなかで、笑点はずっと高視聴率を取ってきた。わたしも好きで毎回見ている。
懐かしい芸人ばかりが登場している。
キザを売り物にした小円遊。この人は好きだったな。もともと、古典落語を得意としたものの、ときにど派手なスーツを着込んで立って漫談をしたことがあった。これは逸品だった。歌丸との掛け合いは最高だった。
春風亭梅橋。あの柳亭小痴楽だ。いつもブラックユーモアばかりで毒のある回答が多かったが、味のある天才的な落語家だった。酒で身を滅ぼしたが、ホントに好きな芸人だったな。
この番組はもともと「金曜笑席」といって「イレブンPM」の前にやってたのだが、視聴率がいいので夕方に持ってきた。談志が初代司会者だと思ってたら、初代は円楽だったらしい。ところが、「あまりの下手さ」のためにほんの数回(四回、つまり二週分の収録)で止めた。そこでそもそも企画した談志の登場となったわけだ。
とくに司会では三波伸介がいちばん好きだった。芸人に情け容赦なかったからだ。この人は落語家が回答すると、そのたびにカメラをアップにさせて自分のコメントをしゃべっていた。それが毒々しくておもしろかったのだろう。いまの司会者円楽は番組がはじまってから台本を見る。だから、ずっと視線を下に落としたままだ。棒読みである。
しかし、それにしてもみんな年を取ったナァ(わたしも取ったということだ)。