2000年10月10日「頼りがいのある人」て何?

カテゴリー価値ある情報」

一人前なんかにならないでいい


 姪が結婚することになった。

 このシーズン。ホテルもパーティルームも結婚披露宴で賑やからしい。ど派手婚も地味婚も、まぁ一度は体験してみたらいいだろう。

 「人は理性の欠如で結婚し、忍耐力の欠如で離婚し、記憶力の欠如で再婚する」と言うが、まさしくそんなものかもしれない。白洲次郎は「結婚のコツはね。なるべく一緒にいないことだよ」と言ったそうな。名言だね、これは。

 賢明な若者は男女を問わず。「質的に豊かな生活を満喫したい」と、親と同居して結婚を控える。そのためか、結婚率はどんどん低下し、離婚率は逆にどんどん上昇している。

 世の中はどんどん内側に向かい、ミーイズムの極限まで進んでいくのだろう。それと同時に、国とか地域とか共同体とか、協力とかチームワークとかいう言葉もだんだん死語になりつつある。

 けれども、離婚したと同時に血色の良くなった人間をわたしは何人も知っている。自由と不自由は現実社会では同意語なのにちがいない。

 ところで、いつの世も男性に求めるタイプとして、「頼りがいのある人」というステレオタイプの発言がある。これ、本当だろうか?

 「頼りがいのある人」と言ってはみても、それでいて家庭に入るわけではない。自分も仕事を抱えているし、自己実現にキャリアアップにと頑張っているわけだ。

 「自分のほうから頼ろうとは思わないけれども、頼ってもらいたくない」と考えているのだろう。それが「頼りがいのある人」の意味か。あるいは、「亭主元気で留守がいい」という頼りがいか。

 知人に盲人の夫婦がいる。この夫婦は銀婚式を迎えるが仲がいい。伴侶のことを「頼りがいがある人ですか?」と訊いても笑ってなにも答えない。「いえね。わたしたちは二人とも半人前なんですよ。つまり、二人合わせて一人前なんですね。だから、別れることができないんですね、残念ながら」と屈託がない。

 なるほど、頼らないんだな、この二人は。頼ろうとするよりも、相手を支え合って生きてきたんだな、いままで‥‥‥。

 人間は一人前なんかにならないほうが、愉しくて、豊かで、ホントにいい人生をおくれるのかもしれませんな。