2008年12月09日「すべての経済はバブルに通じる」 小幡績著 光文社 798円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 サブプライムショックの総括をした1冊。まあ、時系列を追って説明されています。
 1カ所、注目すべき点がありましたね。

 それは07年2月27〜28日にかけて、上海株式市場暴落に端を発する世界同時株安。
 これは上海の株価下落(株価指数9%下落)が原因ではなく、あくまでも400ドルにものぼるNYダウの暴落が犯人であること・・・という点です。この時以来、なにかと上海市場の株価推移が注目されるようになりました。

 けど、それは錯覚。時系列的に追うと、上海暴落があっても、ほぼ同時に開いている東証では、日経平均株価は微動だにせず。0.5%しか下落しなかった。つまり、誤差の範囲。
 いちばんリンクしている香港ですら1.7%の下落止まり。

 たしかに上海は暴落してたんですよ。というのも、あそこは中国政府の資金稼ぎの場ですからね。すべての株価が値幅制限10%と決められてるわけ。すなわち、ストップ安ということですね。だから、どんなに下落しようが10%がいっぱいいっぱいなわけ。

 で、こんなマーケットで9%も下落したということを考えてみると・・・。たぶん20〜30%の暴落になっていたはず。しかも、この市場は特殊で外国人による投資はかなりシビアに規制されてますからね。
 だから、どんなに暴落しようが、上海の株式市場は世界に対する影響なんてほとんどないんです。
 
 さて、この2日間で日経平均は611円、3.4%下落します。香港4.2%、英国4.1%。それぞれの下落。
 米国はというと、27日だけで416ドル、3.3%の下落。
 この時、上海と香港の市場は反転してるわけ。つまり、NYが暴落してるのに上昇してるわけ。なにしろ、10月には3000ポイントから6000ポイントまで株価指数は高騰するんですからね。
 つまり、上海と香港の市場は世界のそれとはデカップリングなんですよ。

 にもかかわらず、どうして米国ではなく上海が火元だとされたのか? ここから先は類推するしかありません。著者はどうやらヘッジファンドの始末だと考えているようです。為替が円高に振れ、株価は下落するようにポジションをとっておく。両方の市場で同時に儲ける・・・ヤツらのやりそうなことです。

 けど、これは何度もこのブログでも書いてきましたけど、米国は今回の金融危機にはぜんぜん懲りませんよ。そうでなければ、活力が失われて、それこそ米国の終わりです。
 オレオレ詐欺の連中が逮捕されても次の詐欺師が仕掛けてくるように、金融界ではまた新たな金融工学屋が頭脳を使っていろんな「ストラクチャード・ファイナンス=仕組み金融」を考えるでしょう。
 バブルって、必要悪なのよね。ないとダメなの。べた凪だと、投資って面白くないでしょ。損する人がいて得する人がいる。それに株式投資はゼロサムゲームじゃありません。どんどん膨らんで実体経済に寄与するところ大ですからね。300円高。