2009年01月31日「キャパ・イン・ラヴ・アンド・ウォー」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 この土曜日からは話題の映画が続々公開。「20世紀少年・第2章」も今日から。「禅」もいいし。アカデミー賞ダブル受賞、ケイト・ウィンスレット主演「レボリューショナリー・ロード」もいいし。

 ま、その前にこれ。数日前、大掃除で見つけたヤツ。

 見目麗しいイケメン。人妻だったイングリッド・バーグマンとつきあってたこともあって、ちょいとハリウッド映画にも出演したこともある。
 ハンガリー系ユダヤ人。本名はアンドレ・フリードマンつうかフリードマン・アンドレ。ハンガリーって、名前は日本と同じ順序なのよね。

 けど、この人がスペイン内戦、日中戦争、第2次世界大戦のノルマンディ上陸作戦、第1次中東戦争、第1次インドシナ戦争を軒並み取材した、伝説的な「戦場カメラマン」なわけ。
 そう、ロバート・キャパのことです。



 このDVD、なかなかでしてね。キャパと縁のある人が軒並み出てくるわけ。もち、彼が撮った写真もたくさん紹介されますし、彼を撮った写真、映像もやまほどね。
 時間にして85分なんだけど飽きません。たぶん、その理由はテーマが「戦争」だからではないかな。飽きる暇がない。尋常じゃないもの、やっぱり。

彼を有名にしたのは1枚の写真。1936年のスペイン内戦で、頭部を撃ち抜かれて倒れる瞬間の写真「崩れ落ちる兵士」を撮影。これがフランスの「VU」に発表されると同時に一躍、名声を手にしたわけ。

 一攫千金という言葉があるけど、写真1枚で賞金も名声も手に入れられる職業は写真家かもしれませんなあ。

 けど、彼は幸運さだけで名声を手に入れたわけじゃありません。幼馴染みであり、恋人だったゲルダのプロデュースによるところが大きいですな。キャパの売り出しに熱心だったし、事実、仕事をとってきたかんね。
 残念ながら、この恋人は内線で死にます。 

 デビュー作は18歳のときにライカで撮ったトロッキーの写真。これ、いいですよ。

 トロッキーといえば、ロシアの革命家。トロッキストの頭目。参考までに、ロシア革命はレーニンだけでは成功しませんでした。明らかに理論的支柱であり、赤軍を指揮していたトロッキーいればこそですよ。
 これだけの英雄だから、レーニン亡き後、カリスマ性のないスターリンは嫉妬と疑心暗鬼で焦って彼を追放するわけ。しかも刺客を放ってね。このへんはアラン・ドロン主演の映画「暗殺者のメロディ」でもお馴染みですな。

 で、コペンハーゲンは厳戒な警備の中にもかかわらず、キャパは小型カメラを忍ばせて、トロッキーを真下から撮影してるのよ。これが1931年。

 のちに映画にもなった「ノルマンディ上陸作戦」では、たんなるカメラマンという範疇を超えて、第1歩兵師団に従軍。ナチスドイツとの戦闘現場。しかも先発隊にいたわけ。もち、カメラマンとしては彼が撮る写真が最初の報道になります。

 100枚以上撮影したらしいけど、助手が現像に失敗してまともな写真は11枚だけ(8枚説もあるけどそんなもん)。しかも、あまりの興奮にピンぼけ。キャパが後に戦場記を書くけど、このタイトルが「ちょっとピンぼけ」。

 超イケメンだから一時、映画界に浮気したこともあるし、カメラマンの著作権を管理し、カメラマンを派遣する団体を作ったりするんだけどね。やっぱ、戦場カメラマンは現場の人ですよ。
 仲間を喰わせるためにも自分が第一線に戻る必要性にも駆られていたのかもしれません。

 いずれにしても、また、戦火のなかに飛び込んでいくわけ。で、1955年5月、インドシナ戦争の取材中、ハノイで地雷に触れて死ぬわけ。キャパはカメラをもったままね。
 ときに40歳。

  前年、来日して大歓待を受けます。日本各地で写真を撮った。心からリラックスできた最後の瞬間だったんでしょうな。

 平安にくるまれた80年の人生と、キャパ40年間の波瀾万丈の人生。「どちらを選ぶ?」と言われたらどうします?