2009年02月24日「ホームレスどっこいお気楽名言集」 矢野勘八著 ベストセラーズ 720円
駅・公園・地下街・橋の下・川っぺり・・・なぜか海にいないのがホームレス。
段ボールだけでなく、見事な「家」を作ってますよね。こういうのもホームレス?
ホームレスには2つのグループがあるらしいですよ。1つは移住型。もう1つは定住型。
移住型ホームレスは、ホームレスになって間もないタイプに多く、短期的にあちこち移り変わる。一方、定住型は移住型の卒業生というか、もう疲れたんでこのへんで落ち着きたいと「ねぐら」を決める。もち、縄張りがあるし警察もうるさいから、微妙に決めなくちゃいけないようです。
そういえば、横浜スタジアムそばの交差点に夫婦のホームレスがちょぅど2人入れるくらいの段ボールハウスを作って住んでたんですけど、いつの間にか無くなってました。そりゃ危ないし、うるさいよね。
交差点ですよ、交差点(ま、中じゃないけど)。
で、この本、ホームレスの方々に見開き2ページでインタビューした本。
「ホームレスになりたいなあ」「羨ましいなあ」などと考えるビジネスパースンが最近多いようです。本書のタイトルも「お気楽」と銘打ってるけど、たぶん、現実は厳しいだろう・・・と思ってた通り、ほとんどの人がやっぱ苦しんでますね。
移住型と定住型というように分類してますけど、本書を読んでると、「じり貧型」と「ドカ貧型」に分けられるのではないか、と感じるんですよ。
じり貧型というのは、こうすればこうなるとわかっていながら対策も立てずにホームレスになっちゃったというタイプ。
たとえば、儲かって笑いが止まらない。連日、銀座で豪遊してた社長がいます。この人、ある分野では有名な印刷会社を経営してたのね。で、IT革命で出版印刷業界に大変化が起こる。ま、具体的に言うと、写真屋さんもそうだけど、もう印刷屋さんに依存しなくても、早く安く綺麗な印刷ができる時代が来る・・・と3年前にはわかってた、というわけ。
経営者というのは、業界の変化にはいちばん敏感なはず。だけど、この人、なんの対応もしなかった。のみならず、連日、豪遊を続けるわけ。
で、ある日突然、仕事がなくなります。一斉にね。
これ、他人事ではありません。私はいろんな仕事してまして、出版ビジネスにも頭を突っ込んでます。ある日突然、出版社がバタバタ潰れたらどうなりますか? しかも私と縁のある出版社がバタバタ倒産したり縮小したりしたら・・・どうなるか?
もし私が作家とか物書きという仕事しかしていなければ、ホームレスになるのは時間の問題です(まあ、私、ええとこのボンボンやから実家に戻ればいいだけの話なんですけど)。
つまり、1本足で立つのは危険なんですね。2本足、3本足。できたらムカデみたいにたくさんの足=仕事=収入先を準備してないとあかんのよ。
この仕事、業界、分野に100年に1度のツナミがくるとわかっていたら、浮き袋やボートを用意するか、安全地帯に逃げ込むか、ツナミが去るまでやりすごせる資金を手当てしておくこと・・・が大切ですよね。
で、わかっていながらやらないという「じり貧」タイプが、実は少なくないんです。どうしてやるべきときにやらないのか? 不思議でしょ? 不思議なはずです。本人もそう言ってるんだから。
原因? もちろん、わかってると思います。性格です。危機意識はとってもあるんだけど動こうとしない。こういう人って少なくありません。先か見えるんです。そして、そのあまりの恐怖に金縛りにあって身動きすらできなくなる。いつの間にか、ツナミに飲み込まれてしまう。従業員や家族は災難ですけどね。
もう1つの「ドカ貧」タイプは、急に会社が無くなった。「ならば転職すれば?」というのは力のある人のいう言葉。
学歴無し。専門能力無し。人脈無し。運転免許等の食える資格無し。なにより貯金無し(ご存じの通り、私もそうだけど)。さらに言うと、立派な実家無し(ホームレスの皆さんと私の大きな違いはこのセイフティネットがあるかどうか)・・・では、リストラの翌日からホームレスですよ。
「派遣切り」が話題になった時(いまもなお根本的になんの解決もされてませんけど)、たぶん2つの疑問が湧いたと思います。
1つはどうして貯金がないの? 寮に入って給料もらってたんだろ? 貯金できたんじゃないか? ほとんどの人は貯金できたと思います。だから、ちゃんとアパート借りてシューカツしてると思います。
でも、中には貯金ができない人も少なくない。なぜか? それまでの借金があるからです。サラ金・闇金ね。つまり、ある時点から収入と支出のアンバランスが始まった。いつかカバーしようと思ってたけど、ツナミが来て自己破産寸前。
ここで2つめの疑問が出てきます。どうして故郷に帰らないの? 実家に帰れば少なくともアパート代は助かるジャン。そういう人もたくさんいると思います。「電車賃がないんです」なんてレアでしょう。だって、最悪の場合は送金してもらえばいいわけでしょ。銀行口座はあるはずだしね。
でもね、本書を読むと、家族でホームレスしてるケースはありませんでした。ひと組だけ夫婦というケースがあっただけです。
これがなにを意味するか? 帰るべき故郷なんてとうの昔にないんですよ。頼るべき家族なんてないんです。すでに家族関係が崩壊してるんです。崩壊してなかったら「仕事なくなっちゃってさ。故郷帰るからカネ送ってくれ」といえるけどね。
家族関係が壊れてる? 理由は? 本書ではなにも触れてないけど、たぶん家族との人間関係を上手に作っていく能力がないからじゃないかな。家族というのは人間社会のいちばん小さなユニットですよ。家族関係が崩壊してたらなにもできんでしょ。
どんなに頭が良かろうと、人間関係をきちんとできる。これ、いちばん大事な「能力」ですよね。営業マンなんて生命線じゃないかな。
困ったときでも頼れない。調子よくお金を借りられない。「仕事させてよ」と頼めない。「オレに向いてる仕事ないかな?」と聞けない・・・。なにより、「あいつは可愛いから雇っておこう」と依怙贔屓されない。
以前、ハーバード大学ビジネススクールで、功成り名遂げたビジネスパースンたちを後追い調査したことがあんの。で、彼らに「いまのあなたの成功にいちばん貢献した能力はなんですか?」と質問したことがあんのよ。
この回答が最高。フィナンシャル・スキルでもなければマーケティング・スキルでもないのね。ダントツに多かったのは「インターパーソナル・スキル」。まっ、人間関係構築能力ってやつ。平たく言うと「人間通」。
人間社会をわたっていくのにいちばん大切なのは、人間と上手く付き合っていく能力なのよ。
能力というよりキャラかも。バカでも明るくて愉しくて前向きなヤツ。え、麻生さん? そうそう、最近、元気ないけど、ああいうタイプ。根拠のない自信を支えにしてるヤツ。いいのいいの、それで。「女は愛嬌とゆうけど、男も愛嬌やで」と松下幸之助もよく言ってましたな。ホント、これだけでも十分生きていけまっせ。200円高。
段ボールだけでなく、見事な「家」を作ってますよね。こういうのもホームレス?
ホームレスには2つのグループがあるらしいですよ。1つは移住型。もう1つは定住型。
移住型ホームレスは、ホームレスになって間もないタイプに多く、短期的にあちこち移り変わる。一方、定住型は移住型の卒業生というか、もう疲れたんでこのへんで落ち着きたいと「ねぐら」を決める。もち、縄張りがあるし警察もうるさいから、微妙に決めなくちゃいけないようです。
そういえば、横浜スタジアムそばの交差点に夫婦のホームレスがちょぅど2人入れるくらいの段ボールハウスを作って住んでたんですけど、いつの間にか無くなってました。そりゃ危ないし、うるさいよね。
交差点ですよ、交差点(ま、中じゃないけど)。
で、この本、ホームレスの方々に見開き2ページでインタビューした本。
「ホームレスになりたいなあ」「羨ましいなあ」などと考えるビジネスパースンが最近多いようです。本書のタイトルも「お気楽」と銘打ってるけど、たぶん、現実は厳しいだろう・・・と思ってた通り、ほとんどの人がやっぱ苦しんでますね。
移住型と定住型というように分類してますけど、本書を読んでると、「じり貧型」と「ドカ貧型」に分けられるのではないか、と感じるんですよ。
じり貧型というのは、こうすればこうなるとわかっていながら対策も立てずにホームレスになっちゃったというタイプ。
たとえば、儲かって笑いが止まらない。連日、銀座で豪遊してた社長がいます。この人、ある分野では有名な印刷会社を経営してたのね。で、IT革命で出版印刷業界に大変化が起こる。ま、具体的に言うと、写真屋さんもそうだけど、もう印刷屋さんに依存しなくても、早く安く綺麗な印刷ができる時代が来る・・・と3年前にはわかってた、というわけ。
経営者というのは、業界の変化にはいちばん敏感なはず。だけど、この人、なんの対応もしなかった。のみならず、連日、豪遊を続けるわけ。
で、ある日突然、仕事がなくなります。一斉にね。
これ、他人事ではありません。私はいろんな仕事してまして、出版ビジネスにも頭を突っ込んでます。ある日突然、出版社がバタバタ潰れたらどうなりますか? しかも私と縁のある出版社がバタバタ倒産したり縮小したりしたら・・・どうなるか?
もし私が作家とか物書きという仕事しかしていなければ、ホームレスになるのは時間の問題です(まあ、私、ええとこのボンボンやから実家に戻ればいいだけの話なんですけど)。
つまり、1本足で立つのは危険なんですね。2本足、3本足。できたらムカデみたいにたくさんの足=仕事=収入先を準備してないとあかんのよ。
この仕事、業界、分野に100年に1度のツナミがくるとわかっていたら、浮き袋やボートを用意するか、安全地帯に逃げ込むか、ツナミが去るまでやりすごせる資金を手当てしておくこと・・・が大切ですよね。
で、わかっていながらやらないという「じり貧」タイプが、実は少なくないんです。どうしてやるべきときにやらないのか? 不思議でしょ? 不思議なはずです。本人もそう言ってるんだから。
原因? もちろん、わかってると思います。性格です。危機意識はとってもあるんだけど動こうとしない。こういう人って少なくありません。先か見えるんです。そして、そのあまりの恐怖に金縛りにあって身動きすらできなくなる。いつの間にか、ツナミに飲み込まれてしまう。従業員や家族は災難ですけどね。
もう1つの「ドカ貧」タイプは、急に会社が無くなった。「ならば転職すれば?」というのは力のある人のいう言葉。
学歴無し。専門能力無し。人脈無し。運転免許等の食える資格無し。なにより貯金無し(ご存じの通り、私もそうだけど)。さらに言うと、立派な実家無し(ホームレスの皆さんと私の大きな違いはこのセイフティネットがあるかどうか)・・・では、リストラの翌日からホームレスですよ。
「派遣切り」が話題になった時(いまもなお根本的になんの解決もされてませんけど)、たぶん2つの疑問が湧いたと思います。
1つはどうして貯金がないの? 寮に入って給料もらってたんだろ? 貯金できたんじゃないか? ほとんどの人は貯金できたと思います。だから、ちゃんとアパート借りてシューカツしてると思います。
でも、中には貯金ができない人も少なくない。なぜか? それまでの借金があるからです。サラ金・闇金ね。つまり、ある時点から収入と支出のアンバランスが始まった。いつかカバーしようと思ってたけど、ツナミが来て自己破産寸前。
ここで2つめの疑問が出てきます。どうして故郷に帰らないの? 実家に帰れば少なくともアパート代は助かるジャン。そういう人もたくさんいると思います。「電車賃がないんです」なんてレアでしょう。だって、最悪の場合は送金してもらえばいいわけでしょ。銀行口座はあるはずだしね。
でもね、本書を読むと、家族でホームレスしてるケースはありませんでした。ひと組だけ夫婦というケースがあっただけです。
これがなにを意味するか? 帰るべき故郷なんてとうの昔にないんですよ。頼るべき家族なんてないんです。すでに家族関係が崩壊してるんです。崩壊してなかったら「仕事なくなっちゃってさ。故郷帰るからカネ送ってくれ」といえるけどね。
家族関係が壊れてる? 理由は? 本書ではなにも触れてないけど、たぶん家族との人間関係を上手に作っていく能力がないからじゃないかな。家族というのは人間社会のいちばん小さなユニットですよ。家族関係が崩壊してたらなにもできんでしょ。
どんなに頭が良かろうと、人間関係をきちんとできる。これ、いちばん大事な「能力」ですよね。営業マンなんて生命線じゃないかな。
困ったときでも頼れない。調子よくお金を借りられない。「仕事させてよ」と頼めない。「オレに向いてる仕事ないかな?」と聞けない・・・。なにより、「あいつは可愛いから雇っておこう」と依怙贔屓されない。
以前、ハーバード大学ビジネススクールで、功成り名遂げたビジネスパースンたちを後追い調査したことがあんの。で、彼らに「いまのあなたの成功にいちばん貢献した能力はなんですか?」と質問したことがあんのよ。
この回答が最高。フィナンシャル・スキルでもなければマーケティング・スキルでもないのね。ダントツに多かったのは「インターパーソナル・スキル」。まっ、人間関係構築能力ってやつ。平たく言うと「人間通」。
人間社会をわたっていくのにいちばん大切なのは、人間と上手く付き合っていく能力なのよ。
能力というよりキャラかも。バカでも明るくて愉しくて前向きなヤツ。え、麻生さん? そうそう、最近、元気ないけど、ああいうタイプ。根拠のない自信を支えにしてるヤツ。いいのいいの、それで。「女は愛嬌とゆうけど、男も愛嬌やで」と松下幸之助もよく言ってましたな。ホント、これだけでも十分生きていけまっせ。200円高。