2009年04月08日「ゴッドファーザー」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 どうしてこの忙しい中、こんな映画観るんかね。締めきりに追われるとついつい映画を観たくなる。自分で自分の首を絞めることがわかっているのに・・・。
 一種の逃避願望なんやろうね。試験勉強しなくちゃいけないのに、お菓子食べたり、鉛筆削りだしたりしてなかなか始めない、みたいな? 悪い癖です。これさえなければ、もっと仕事がはかどるんだけどねえ。ま、いいか。

 さて、この映画。たしか中3のときに観てるんだよね。「エマニエル夫人」が高1の大晦日だったからね、たしか。いまはなき「日比谷みゆき座」だったなあ(みゆき座閉館のとき、毎日新聞にインタビュー記事が大きく掲載されたなあ)。

 全3作540分を一気に観ちゃいましたよ。何度も観てるんだけど、飽きませんなあ。かなりディテールまでわかってるのに新鮮ですなあ。
 こういう映画は少ないねえ。日本映画だと「戦争と人間」「仁義なき戦い」くらいかなあ(こっちのほうが長いわな)。


♪広い世界の片隅にぃ。ニーノ・ロータの旋律はええのお。

 いったい何が魅力。やっぱ、アウトローの魅力つうか悪の魅力でしょ。善人面した悪、悪党面した悪。こういうキャラクターが混在して群像劇を繰り広げているとこに魅力を感じるんでしょうな。
 悪への憧れみたいな? ほとんど中学生のワル願望かつっばり気取りに近いわな。

 全3作で印象に残ったもの? そうですなあ。
 中学生の時から記憶してるのは、フランク・シナトラとおぼしき歌手兼俳優が、「カムバック」するためにこの映画(「地上より永遠に」つう映画なんだよ)の役をとりたい、とゴッドファーザーに懇願。けどシナトラを嫌悪するプロデューサーは拒絶。すると深夜、就寝中にもかかわらず、いつの間にか、6000万円(だっけ)もする愛馬の血だらけの首がベッドの中に置かれてた。そのときの叫び声。シーンを換えてリフレインする映像が印象的ですな。

 画像はこれだけど、言葉・シナリオ・台詞として記憶に残ってるのはこの1つ。

「敵を憎むな。憎むと冷静な判断ができなくなるぞ」

 これ、銃弾に倒れたゴッドファーザー(マーロン・ブランド)が後継者マイケル(アル・パシーノ)に囁くひとこと。これ、至言ですな。

 憎悪ってのはものすごいエネルギーになるかもしれないけど、やっぱ余計な感情が余計な行動をさせ余計な結果を生み出しちゃうもんね。

 逆に、敵を愛するつうか包み込むようなスタンスでいると、ちと次元を換えて相手をしかと観察できますな。すると、よく見えてきます。正しい判断ができるようになります。ああ、ここを突いたらいいな、こう仕掛けたらこう出てくるな、とシナリオを冷静に描けるようなるわけ。

 ま、理想論ですけどね。たいていは感情の赴くままに爆発つうか自爆テロしちゃうケースが多いんだから。
 そういえば、あの松下幸之助さんだって、昔、同業者から安売りを仕掛けられたとき、売られた喧嘩は買うでと頭に血が上ったことがあったんです。「あんたの行動は大将の勇か、それとも匹夫の勇か、どっちやねん」と指南役ともいうべき加藤大観さんに注意されて思いとどまったことがありましたな(結果はすぐに同業者が経営破綻すんの)。 

 あの幸之助さんですら頭に血が上ると判断を間違えるわけ。けど、組織を率いる人間は個人の感情のまま動いたらあかんねん。

 普段から憎悪したりされたりしてるアウトローが、修羅場の歴史の中からつかんだひと言はかなり重い、と思うわけ。
 事実、映画でも血気にはやる長兄ソニー(ジェームス・カーン)は罠にはめられて殺されちゃうわけだし、慎重なマイケルは爆発しながらも次の瞬間、理性を取り戻して冷徹な判断を下してゴッドファーザーへと駆け上がるわけだしね。「短気は損気」とはよく言ったもんですな。

 そういえば、「パート?」でマイケルが親父世代のボスから窘められたとき、「パパからはたくさんのことを学んだ。まず相手の立場に立ってものごとを考えろ、と」とつぶやいてますな。これ、まさしく「孫子の兵法」でしょ。敵を知り己を知れば百戦して危うからずってさ。

 ま、540分も観てこのくらいしかキャッチしてないんだから話になんないけど。