2009年06月27日「MW(ムウ)」 手塚治虫著 小学館 610円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 ええっと、今週末(7月4日)に映画が一般公開されるようですな。コミックは3巻版と2巻版の2タイプ。私は3巻版で読みました。
 内容? おんなじ。

 手塚作品はかなり読んでると思うけどね。いちばん好きなの? 「ブラックジャック」(1973年)? 「火の鳥」(1967年)? それとも、以前、紹介した「アドルフに告ぐ」(1983年)か?
 いえいえ、ザンネン。「リボンの騎士」(1958年)なのよ。理由? そのうちお話ししましょう。今回は「MW(ムウ)」のお話です。

 さてと、この漫画、手塚作品では少し異質かも。そりゃ手塚作品だから、太い人間ドラマがドンとあるわけだけど、社会問題というか、政治問題とかだけでなく、性のタブーにも深く突っ込んで描かれてるわけ。
 異質には見えるけど、人間そのものが一筋縄ではいかんもんなあ。「いい人はずっといい、悪い人は永遠に悪い」と単純に割り切れるわけもなし。人間の本質を従来の作品とはちょっと違う方向からアプローチしてみせた。悪を徹底すれば、より善なるものが浮き彫りになってくるもんね。
 「鏡合わせ」と考えるべきなんでしょうな。

 う〜ん、そういう意味では「奇子(あやこ)」(1972年)っぽいかな。

 手塚作品というより、手塚さんがと言うべきなんだろうけど、ものすごく「予言者」ぽくてね。

たとえば、「奇子」では国鉄総裁変死事件(下山事件、三鷹事件、松川事件)を大きなモチーフにしてますけど、当時、新聞も書けなかった事件の真相をこの作品を通じて突き止めちゃったりしてるわけ。
 「MW」が描かれたのは1976年なんだけど、私、オウム真理教の地下鉄サリン事件のとき(1995年3月10日)、「あっ、MWだ。麻原はきっとこの漫画のファンだったにちがいない」って感じたもんね。

 もちろん、「MW」のモチーフは1969年7月8日、沖縄の米軍基地・知花弾薬庫で起こったサリン漏洩事故ですね。米軍関係者24人が中毒症状を引き起こしたやつね。
 サリン、VXガスなど1万3千トン。米軍は事実を隠蔽。これがばれて、沖縄では撤去運動が起こりました。当たり前のことよ。

 ネタバレなんて野暮なことしたくないけど、映画では、漫画と違って、少年愛、同性愛といった描写は避けてるそうですな。

 けどさ、毒ガスの後遺症でシリアルキラーとなり、世界が破滅するまで止められない美智雄(玉木宏さん=原作では美知夫なんだけど)に対して、裕太郎(山田孝之さん=原作では巌なんだけど。名前変えて意味あんのか!! どうでもいいけど「白夜行)の桐原亮司役良かったね)がこの「原罪」を抱え込んでいるからこそ、「俺しか止められない」という使命感、義務感、愛を貫くわけでしょ?
 ここ、押さえないでええんかいな。キモちゃうの?

 俳優のイメージが崩れるから? 別に本線に影響ないしぃ? もしそう考えてるなら、手塚ファンはずいぶんバカにされたもんですな。というか、手塚ファンではなくパンピー向けの映画ということですかな。
 ま、映画は監督(岩本仁志さん)のもんやさかいに、カーチェイスとかバイク、エアバトル中心のアクション映画にせんとお客が入りまへんねん、と考えるのもわかるけどな。ちとザンネンやな。ハリウッドちゃうねんから。
 刺身と刺身のつまを間違えたらあかんわな。

 ま、そうは言いながらも観に行くけどな。映画は映画やもんな、やっぱし。原作に縛られたらあかんわな。
 いったいどっちやねん! だから、人間は複雑なんや・・・と言うたやろ。人間はな、複雑なんや。



 どうでもいいけどさ。「そのまんま東」さんの振り付け師は、自民党が勝てないならせめて民主党には勝たせたくない、と考えたシナリオライターと同じ人だと思うよ。見え見えだけど、残念ながら、また日本人は「お祭り騒ぎ」にだまされるんだろうな。
 アメリカはよっぽど小沢さんが怖いんだな。そんなわけで、これからいろんな「お祭り」が出てきますよ。ま、どうでもいいんだけど。