2009年08月06日「球界の野良犬」 愛甲猛著 宝島社 1365円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 高校野球のシーズンが到来しましたね。今年は冷夏ですから少しはましかもしれませんけど、マウンドの上は灼熱でしょうな。

 1980年夏。横浜高校優勝時のエース。ロッテにドラフト1位で入団。3年で投手に見切りをつけて打者に転向。代打の切り札として星野中日でも活躍。で、00年に引退。オールスターゲーム出場2回、ゴールデングラブ賞1回、535試合連続フルイニング出場(パ・リーグ記録)。

 ま、こういうキャリアの持ち主です。

 「最低で最高の不良(アウトロー)」と帯コピーにあんの。暴走族、アンパン、失踪、暴力、野球賭博、筋肉増強剤・・・アンパン(シンナー吸引)と筋肉増強剤だけですな、ホントにやってたのは。ほかは踏み越えなかったようですよ。

 再婚同士の両親のもとに生まれ、物心つくまえに父親が家出。母親は傷害を抱える異母兄と2人を女手一つで育てた。
 
 球界にはこういう家庭環境で育った人は何人かいますよね。今年、高知の独立リーグで復活しようとしている伊良部投手と仲がいいのは、「家庭環境が似てるからかもしれない」と述べてます。

 けど、高野連が作り上げたい高校球児のイメージとはほど遠い生活をおくってたんですなあ。たとえば、早実の荒木大輔投手とも同期。甲子園で一服してる横を荒木投手が通り過ぎていったらしいね。
 
 ま、高校時代の私ですら、たばこや賭け麻雀は当たり前でしたからね、当時の「ヨタ高(いまや進学校!)」ですから、このくらいは当たり前でしょう。クラスで暴走族ができるくらいだったんですからね。

 松坂大輔投手を育てた渡辺監督の横浜高校。名門はどこも厳しい練習で知られるけど、先輩からの陰湿ないじめにはほとほとまいったらしい。あるとき、深夜にカップラーメンつくれ、と言われて、鬱憤を晴らすように、トイレの水でつくってやったとか。こんな環境だから、夏休み前に1年生は20人くらいに減っちゃうのよ。

 清原さんの本でもあったけど、中学時代、鳴らした選手ばかりが名門に集まってくると、その中で、やっぱり「これはかなわない」「上には上がいる」とわかるわけ。それといじめ。さっさと見切りをつけちゃうんでしょう。
 
 それにしても、落合監督は一匹狼といわれた選手時代から、クールに熱い指導をしてたらしいね。熱血指導じゃないのよ。ちょっとポイントを指導して、それができているかどうか陰でしっかり観察して、ゲームでの完成度をチェックするために二軍の試合まで見に来てたらしいね。
 
 著者もそうやって指導されたとのこと。

 アーチェリーの山本博さんとは横浜高校の同級生。成績は似たようなものだった、とのこと。著者が3年間でとったノートは4ページだけ。どっこいどっこいらしい。

 わたしにとっての著者は、高校球児のときから強く印象に残る選手でしたね。
 スター選手の浮き沈みは世の常だけど、現役時代、身障児のためのチャリティなどを積極的に展開してたとは知らなかったなあ。300円高。