2010年03月18日「中島孝志の 聴く!通勤快読」全文掲載! 「プロフェッショナルプレゼン。」 小沢正光著 インプレスコミュニケーションズ 1680円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 この本、紹介したものとばかり思ってました。完全にわたしの勘違い。
 『プロフェッショナルアイディア』という著書を2007年4月19日の「中島孝志の通勤快読」で紹介してたのね。

 遅ればせながら、ご紹介します。これ、面白くて役に立ちます。
 プレゼンテーションの技術向上に? いえいえ、シューカツでも社内の交渉等にも使えると思うよ。

 小沢さん。博報堂の常務執行役員ですね。
 
 プレゼンちゅうのはそもそも「受け手の場」なんだと。にもかかわらず、「提案する側の目線」だけで挑むから「通らない」「なぜなんだ」と嘆くんだ、と。そりゃそうですわな。逆に言えば、「受ける側の論理」で戦えば必ずうまくいくんだ、と。

 では、その方法とやらをとくと勉強しましょうよ。

※※ここまでがオープン情報。下記は「中島孝志の 聴く!通勤快読」会員対象ですが、今回はすべて公開させて頂きます。※※

「おい、あれ、とって」
 たとえば、こんなことを奥さんが言われる。
「ねえ、あれ、おねがい」
 夫がこんなことを言われる。

 不思議なことに、この代名詞の会話で通じてしまう。
 どうして? なぜ?
 相手のことをよくわかってるからだ。

 プレゼンテーションも相手のことがわかればすんなり通じる。わからなければこうはいかない。
 そして、こうはいかないというケースがほとんどなのだ。
 なぜならば、「はじめて会った」に近い状態で行われることが往々にしてあるからだ。

 ほんの些細なところにこだわった受け手がいつまでもそこにこだわれば理解の速度は遅くなる一方。
 いや、もっと深刻なことだって起こりうる。受け手が意図を取り違えたまま「理解した」と思ってしまうこと。これは危険である。
「約束が違う」「話が違う」とトラブルに発展することだってあるかもしれない。

 もし、ある程度、予備知識があればこんなことにはならない。
 そこで、著者は自分の考え方、仕事ぶりなどがわかるようなものを事前に受け手に知らせておく・・・という。
 たとえば、いままでの仕事、新聞や雑誌に寄せたコメントとかインタビュー記事、著書に関する書評。著書を読んでもらうのはしんどいからだ。
 これ、すなわち、「特別名刺」。これで仕事のスタイルをわかってもらえる。

 人間というのは、新しい考え方や概念にそれほど簡単に共感を持つことはない。興味すら抱かないこともある。
 しかし、ふだん考えていることや、問題意識を持っていることなら、すぐに受け止めることができる。興味関心だって抱く。だから、受け手のことをよく知らないと勝てない。
 受け手とはクライアントでありスポンサーだ。この受け手の考え方、価値観、その人がよく使う言葉を勉強することが必要になってくる。ときには、「その人の言葉」をプレゼンテーションにまぶす。

 たとえば、アサヒビールの広告に「すべては、お客さまの『うまい!』のために。」というフレーズがある。これなど、当時の社長がいつも言っていた言葉である。
 はじめて会った見知らぬ人に自分の考えを理解させるのは容易なことではないけれども、「受け手」の考え方を知っていれば、説明の仕方も見えてくる。

 プレゼンテーションにしたって、そう熱心に聞いてくれない。耳では聞いてるが事実上は上の空。なぜなら、聞きたいことがはっきりしているからだ。
 究極のところ、 受け手が求めることは次の2つである。

 結論はなんなのか。
 なぜそうなるのか。

 目的によって、プレゼンテーションはまったく別のものになる。方向性が違っていると感じれば修正すればいいし、どんどん深めていってもいい。叩き台になってもかまわないから、なにを差し置いても、とにかく具体的なゴールイメージをまず設定すること。
 すべてはここから始まる。
 
 ゴールイメージを描いて、受け手のことを知ったら、プレゼンテーションの目的を「ひとこと」で言えるようになっているかどうかをチェックしよう。
 プレゼンテーションは膨大な内容を1時間、30分で説明しなければならない。ひょっとしたら米国でよくあるような「30秒プレゼンテーション」もあるかもしれない。

「いろいろ話しますが、結局、ひと言でいえばこれです」

 ここがはっきりしてさえいれば、理解にブレがない。

 プレゼンテーションはできれば、リハーサルでは自分が受け手になって、だれかに話してもらおう。そうすれば、「受け手」の目でチェックできる。
 プレゼンテーションはライブだから、その場の空気に即、対応することが大切。
 そのためにも、チェックポイントの意味も含めて、3つの言葉を事前に決めておく。
「最初の言葉」「転換の言葉」「最後の言葉」である。切り出し、転換、そして締めの言葉と言い換えてもいいかもしれない。

「われわれの結論は・・・です。理由は・・・」というシンプルな切り出し=「最初の言葉」もいい。「このプレゼンテーションの最大のテーマは・・・だと考えました」というように、テーマやコンセプトを切り出してもいい。
「転換の言葉」は、たとえば、「この提案を業界他社が先にやったとしたらどうでしょう?」という問題提起。いままで自分たちとユーザーという視点でのみ考えていたのが、そこに業界の中での自分たちという視点が加わってくる。
「最後の言葉」とは「いろいろなお話をしてまいりましたが、結論はひと言でいえば・・・です」と、プレゼンテーションでいちばん受け手に理解してもらいたいことを、「まとめ」として念押ししておく。
 
 面白いことに、プレゼンテーションの現場では、受け手=クライアントは本来の自分たちとは、逆の立場に身を置いている。というのも、プランを採用したら、今度は自分たちでそれを実行しなければならないからだ。
 プランを受ける立場から実践する立場に転換するわけである。

 最後に、プレゼンテーションのコツとは?
 うまく話そうとは思わないこと。考えたことだけをきちっと話そう。これ、極意です。