2002年07月08日「金儲け哲学」「ホーム・デポ 脅威の成長物語」「ヘンな事ばかり考える男 ヘンな事は考えない女」
1 「金儲け哲学」
糸山英太郎著 かんき出版 1600円
元衆議院議員の糸山先生の本ですね。
この人はハマコー、ムネオの両氏とテイストが似てますが、どうも、この本を読んで誤解だったのがわかりました。
31歳で参議院に史上最年少で当選します。この時、100人以上の選挙違反者を出して、それが最後までついて回りました。でもね、これは冤罪ですね。どうやら、反対陣営から刺されたみたいです。
糸山さんと言えば、大金持ちで知られてますが、この人の場合、裸一貫で財をなします。
彼は佐々木真太郎という新日本観光のオーナーの愛人の子どもとして生まれます。それを知ったときにはショックで、一気にぐれたそうですね。
しかし、警察で母親や姉妹が苦しんでいることを知って半端者をやめる。
そして、中古外車の営業マンとして日本一になります。これが26歳の時。
それで独立するわけですが、遊びまくってましたから、手付け金で呑んじゃうわけですよ。ところが、その金を返さないといけなくなった。
しかし、現金がない。だれも貸してくれない。
調子いいときはおごってやったのに、不遇になると掌を返したように、みな離れていったんです。
で、しかたないので、父親が営む会社に売られます。本当に借金のカタに本人が取られたわけですよ。
「会議に参加しろ」と言われて、重役の椅子に座った直後、灰皿で頭をパカーンと叩かれる。お前は地べたに土下座しろ、というわけです。涙がツツーと流れます。
父親は彼の負けん気がわかってるんで、厳しく指導したみたいですね。
その後、父親の命令でトラブルばかり解決していきます。父親自身も匙を投げた難しい案件を、彼は持ち前の研究熱心さと根性、そしてプラス思考で可能にしていくんです。
たとえば、ゴルフ場の会員権販売。
昭和40年当時のことですよ。限られたエリートのスポーツでしたが、彼はこれを大衆のスポーツにしようと考えます。だから、安い値段で遊べるようにした。
しかも、会員権を多量に発行することはしない。そうすれば、いつでも予約がとれますから、お客には好評です。
この人、元もと、新入りで入ったときには半年間、キャディしてましたからね。気持ちがわかるんでしょうな。
銀行をフル活用して、セールスを展開します。銀行はカネを預けるところではありません。ここは預金獲得競争に血道をあげる集団なんですね。
「会員権を売ってくれたら、その分、全部、お宅に預金する」
こう持ちかけます。すると、目の色を変えてセールスしてくれるわけですよ。当時はまだ信頼されていた銀行が得意先に売ってくれるんですから、これは鬼に金棒です。
「それでも平の役員からあげてくれなかった」
さて、そこでどうしたか?
本妻の長男が社長をしてたわけですが、使い込みをして会社に損害を与えていた。
「それは背任に当たりますよ」と吊し上げます。このひと言に切れた兄が役員会議を飛びだした。
「会社に博大な損害を与えた社長を解任します」
これで、合法的に社長に就任してしまいます。その後も、一族から株を合法的に収奪していきますが、これはリーズナブルでしょう。なんの仕事もできない人間たちがたんに血が繋がっているというだけで役員になり、多額の報酬を受けているんですからね。
政治家になるきっかけは、仕事をしながら、中曽根さんの秘書をしてたんですね。
金はたくさん持ってましたから、政治資金に困ることはない。あの角栄さんが目をつけて、「うちの娘と食事しないか」と誘われることもあった。それは体よく断ったそうですが、下手をすると、婿殿になっいたかも。でも、合わないな。
投資家としての彼については、本書をじっくり読んで勉強してください。
ただ、株式投資でも30年間、チャートを読んだことすらない、とのこと。この人の基本はナンピン買いです。そして、人間心理を読み込んだ投資します。もちろん、仕手筋と戦った経験は何度もあります。そして負け知らずです。
博打はカネのあるほうが勝つんです。
考えてみれば、株式投資にしても、どんなに下がろうが、売らなければ損は確定しないんですからね。みんな、資金に余裕がないから、途中で売っちゃうわけでしょ。彼は10年くらいは平気で持ってますからね。
負けないんです。
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2 「ホーム・デポ 脅威の成長物語」
バーニー・マーカス著 ダイヤモンド社 1800円
ホーム・デポってのは、例のDIYの会社です。「Do It Yourself」のことですね。
創業が78年、翌年の店舗数3店、売上700万ドル。それが20年後には店舗数775店、売上300億ドル(3兆円)で、アメリカを代表する30社のうちの1つになりました。
この会社の凄さは成長を持続しているということですね。
一時的に風をつかまえて時代の寵児になる会社は少なくありませんが、打率を下げずに持続させていく、ということはものすごく難しいことだと思うのです。
その最高に難しいことを為し遂げつつある経営者の秘密、秘訣をまとめたのが、本書です。
創業のきっかけは、「お前たちはクビだ」というメッセージを聞いたときです。
普通のバックグラウンドしかない普通の男たち。これには意気喪失し、なんとかしなければともがき苦しんだそうです。
これは49歳にして創業することになるバーニーにしても同様でした。
さて、彼は無一文でロシアからアメリカに移民してきた両親のもとに生まれたユダヤ人です。
13歳から働きはじめ、医学部に行きたかったが資金がなく、薬学部に入ります。そして、ひょんな縁から、「おたくの化粧品売り場は最悪だ」と言ったことから、「君がやってみろ」と逆に提案され、再建してしまう。
そして、28歳で10億ドルの売り場を任される。
その時の成功の秘訣は、「自分の周囲に自分より優れた人間を集めてきたからだ」だって。なんかアンドリュー・カーネギーみたいなこと言ってます。
で、この人の自分史を見ると、68年からオーデル社に社長兼CEOとして2年間、70年にはデイリン社の副社長になります。
ここで彼は子会社の経営を任されることになりますが、これが人生の転機となるわけです。
その会社とはハンディ・ダンです。全米最大のホームセンターなんですね。
ここでこのビジネスを徹底的に勉強します。その間中にも、CEOであるサンフォード・シゴロワと対立が続きます。この男は元もとアンサー・アンダーセンで公認会計士だった人で、「無慈悲なシゴロワ」というあだ名がつくほど、数字ばかりを追い求める人でした。
それで、クビを言い渡されるわけです。
自分でホームセンターを創業しよう、と決意します。
しかし、無一文だから、出資を仰がないとけない。あのロス・ペローにも相談を持ち込みますが、結局は決裂します。理由は、バーニーの車がフォードではなく、キャデラックだったからです。そんなに派手な車はダメだ、というのです。
もし、この時、ロス・ペローが出資していたとしたら、彼は時価6兆円の資産を手にしていたことになります。それがキャデラック一台でフイです。
「ホーム・デポはスーパーではない。そこで何かをする場所である。作業場のように見える。それが基本である」
だから、材木を買う客用に裏口など作らない。業者も職人もレジに並んでもらう。フェイシングと言いますが、商品のラベルを貼ってあるほうを前にすることもしない。まさに倉庫の殺風景さをそのまま活かしたい。
倉庫だから木くずが散らかっていないといけない。床にはこすった跡ないといけない。
店員がきちんと掃除したら、「二度とそんなことはするな。もししたら、クビにはしない。そのかわり、殺すぞ」と言う始末。
彼は店でなにかまずいことが起こったら、それがルールだからといって間違ったやり方をそのまま続けることはけっしてしない。逆に、正しいやり方を見つけ、ルールのほうを変える。それが消費者にとって正しいことだ、と徹底します。
この会社の基本的に価値は8つあります。
1最高のカスタマーサービス
2社員のニーズに応える
3事業家根性を育てる
4すべての人を尊敬する
5アソシエイツ、カスタマー、ベンダー、コミュニティと深い関係を結べ
6正しいことをやれ、やり方が正しければいいのではない
7コミュニティはビシネスを薦めるために欠かすことのできない要因である
8株主の利益を守れ
これらの価値観こそが、社員がベストを尽くすことに結びつくわけです。
ある休日、いつものようにゴルフに行くとあいにくの雨。
クラブハウスで友人と座っていると、「ホーム・デポは潰れる」と話かけてきた人がいる。
「どうしてですか?」
「今週、水道の蛇口を買いに行ったんですよ。200ドルの商品をね。ところが、馬鹿な店員が、1ドル50セント出せば、使ってた蛇口を修理して使えると教えてくれた。こんなセンスのないことでは、潰れるしかない。その店員の名前は言いませんよ、クビにされたら可哀相だからね」
「クビにしないと誓約しますから、教えてくださいませんか?」
「なぜ?
「昇進させるつもりです」
「なぜですか? 会社に損をさせたんですよ、彼は」
「いえ、わたしの教えに忠実な人間だからです。社員にはお客の求めていないものは売るな、お客のお金を節約することがわれわれ任務だ、と教えています。なぜだか、わかりますか? あなたはまた蛇口がおかしくなったら、どこの店に行きますか?」
「彼のいる店・・・ですね」
「それが何よりの証拠です。売ることが重要なのではない。お客とのつき合いを深めることが重要なのです」
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3 「ヘンな事ばかり考える男 ヘンな事は考えない女」
東海林さだお著 文藝春秋 1048円
ご存じ、東海林さんのはちゃめちゃ体験記です。
「麻布十番温泉」の巻。
いいですね。ここの特徴は大広間ですね。毎日、やってくるグループがあって、その大広間でまずカラオケ、それが終わると(だいたい午後三時くらい)、今度は時代劇の旅ガラスみたいな格好で踊る人が出てきます。
しかも、顔から肩まで白粉塗ってね。もうね本格的なの。演歌の股旅ものがかかり、オヒネリまで出ちゃう。
もちろん、準備も司会も演出も登場人物も自分たちで勝手にやってるわけ。
自作自演の世界。
これで、毎日、優雅に楽しんでる人たちって・・・?
もちろん、お年寄りに決まってるじゃないの。これで、入場料、じゃなくて入浴料が大人1260円です。生ビールもあるよ。
今度、絶対、行こう。このくそ暑い中、ザブッと浸かって、この馬鹿馬鹿しくも楽しそうな演芸会に参加するってのはどうだろう。
「春の浅草食い倒れ」の巻。
またまた、いいですね。
また、これが店の選択がいいんですよ。さすが食い道楽の東海林さんだけあります。
実はわたしも浅草はよく行くんで、知ってる店ばかり出てきました。とくに、米久の牛鍋なんか、最高だよね。
昔、ちんやで食べてて、帰りに「相撲取りが来てるかと思った」と言われたことがあります。何しろ、二人で食べた量が肉八人前、ザク五人前、酒一升、ビールご本でしたから。こんなことしてるから、痛風になるんだよね。
さて、東海林さんが「食い倒れ」というのは、ホントに食べて倒れることです。
そこで選んだのは、順に「天ぷらのまさる」「蕎麦の満留賀」「どぜうの飯田屋」「牛鍋の米久」の4箇所。
そして、食い倒れることもなく、驚異のがぶり寄りですべてクリア。いやぁ、人間というのはできると思えば、できるものですね。
ほかにも、こういう素晴らしい企画が目白押し。「アイボ飼育日記」「モーニング姿で納豆を(これも最高!!)」「懐かしのギャバレー(これも最高!行こう、今度!!)」などなど。
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