2010年10月10日「マリア・カラスの真実」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 昨日ご紹介した「マリア・カラス 最後の恋」は俳優による演技でしたけど、これは、本人ご出演のドキュメント。誇張も演出もなく、淡々とカラスをみせてますな。

 なんといっても、ご本人の舞台。27曲も披露してますからね。オペラ好き、カラス好きにはたまんないでしょうな。



 私? ルイーザ・ラニエリ主演も好きです。なんたって、いい女だもん。
 カラス本人? う〜ん。悪いけど、美人とは言えません。ギャオス? うん、あれ。ま、31歳のときに超ダイエットで肥満から解放されるんだけどね。
 そんな外見の美よりも、声と存在感が人を魅了したんだと思う。化粧で美しくなる女性は多いけど、彼女は舞台映えするんだな。

 「ノルマ(ローマ軍人を愛して子を産む敵国ガリアの娘。犠牲になることを決意する)が好き。吠えるだけのライオンじゃないから。寛大さ、高貴さがあるから。自分に似てるというわけじゃないけど」
 「愛のためにすべてを犠牲にするのよ」

 彼女の未来を予言するようなインタビューですな。

 1957年、ベストドレッサー省に選ばれるわけ。プッチーニの孫ビキがスタイリストについたからね。これが第2回目の変身。

 「それまでのマリアは百姓娘の晴れ着姿よ」

 この映画は贅沢ですよ。オナシス、チャーチル、グレース・ケリー、ジャクリーン(後に結婚すんだけど、妹もオナシスの愛人)、ジャン・コクトー、ビスコンティ、パゾリーニ・・・全部ホンモノ。

 へぇ、オナシスってこんなオヤジだったんだ。おカネに物言わせて・・・という感じはしませんでしたね。やっぱ女性は「輝いてる男」「精力的な男」「一途な男」「真剣な男」「強い男」に惹かれると思う。年齢は関係ないな。

 昔の映像を巧く編集してまして、なかなか魅せる記録映画になってますよ。「最後の恋」でもそうだけど、ここでも母親との確執が描かれてます。

 どうして母親はマリアを愛せなかったのか? 産後すぐに男の子を亡くしてるんですね。で、妊娠したときに男の子を心から望んだ。けど、生まれたのは女の子。母親は4日間、わが子と認めなかった。
 マリアに罪はないんだけどね。ま、母親にはホントは時間が必要だったんでしょうな。区切りのね。でも妊娠のほうが早かった。ここに悲劇があるし、ここにカラスが声楽を志す原点があるんですね。

 マリア・カラス没後30年(2007年)にミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座で上映された作品。

 亡くなってギリシャで埋葬されたとき、遺灰が盗まれた。2日後、路地で見つかった。彼女の望み通り、エーゲ海に散骨された。たぶん、その遺灰は彼女のものではなかったでしょう。
 遺品もすべてオークションにかけられ散逸してしまいました。マリア・カラス博物館も計画だけ。
 彼女に残されたものは「声」と「映像」のみ。この2つで構成された作品です。観る価値はありますよ。

 けど「マリア・カラス 最後の恋」もいいよ。やっぱりね。