2002年03月18日「世界がもし100人の村だったら」「ここにいてはいけない」「哲学」
1 「世界がもし100人の村だったら」
ダグラス・ラミス対訳 マカジンハウス 838円
これってだれが作者かわからないんです。なぜって、Eメールを通じてチェーンメールのように世界中に流れたからです。
でも、どうやら、ドネラ・メドウズさんということを突き止めたらしい。
内容はデータです。
世界中の人間63億人を100人に短縮した時に見えてくるもの。いったいどんな風景が見えてくるのか。
52人が女性、48人が男性。
30人が子ども、70人が大人(うち7人が高齢者)。
90人が異性愛者、10人が同性愛者。
70人が有色人種。30人が白人。
61人がアジア人、13人がアフリカ人、13人が南北アメリカ人、12がヨーロッパ人。あとは南太平洋地域の人。
33人がキリスト教・・・。
こんな具合に数字でずばりわけてるわけ。
いったい、何が言いたいのか。
平和と博愛の大切さ、教育の重要性。思いやりや責任感について。
数字は現実の結果を表現したものですが、数字がこれだけ説得力あるものとは思いませんでした。
「あなたは、この現実をどう考えるか?」
それを突きつけたというシンプルな本なんだけど、
たかだか60ページくらい。こんなに少ないから、ページ・ナンバーすら書いてません。
350円高。
2 「ここにいてはいけない」
内藤 人著 角川書店 1000円
狂牛病にはじまって、結局、ブタも鳥も結局、インキチで売ってた大企業がたくさんありました。でも、そのわりには中毒は少ないんじゃないかな。
日本人の胃腸もタフだということがわかりました。
腹が減ったら、なんだって食べるし、砂漠で喉がカラカラに渇いたら毒でも飲むかも。
本書は食だけではなく、いろんな危険と背中合わせで生きている日本人を、ぞっとさせるようなデータが山盛りです。でも、データのためのデータってところもなきにしもあらず。
まっ、いいか。
「恋愛ができない淋しい人は心臓病で死ぬ」
こんなデータを示したのは心臓病の世界的権威のディーン・オーニッシュ博士。
これ、5倍くらいの差があるんですね。乳ガン死も2倍以上の差があります。
やっぱりワクワクドキドキってのは、心臓に悪いようでいて刺激を与えるからいいんですね。あまりお呼びでなくなったら、「わたしゃ、もう用済みか?」ってんで動かなくなるんですな。
同じく、コーヒーを1日2杯飲む人は、まったく飲まない人より、胃ガンにかかる確率が3分の2。1日3杯だと、2分の1まで減ります。
1日に平均10時間眠る人は、7時間睡眠の人より、心臓発作を起こす確率が2倍。その他の病気による死亡率は3.5倍というデータもあります。
携帯電話については、「使えば使うほど、頭痛、疲労感、耳まわりの熱感が高まる」というのもあります。
携帯電話をパソコンのそばで使うと、電磁波の威力がよくわかりますよ。モニターがぶれにぶれるからね。
「えっ、こんなに影響があるんだ」と認識します。
食品添加物では、外国で禁止されてるものが日本では大手を振ってまかり通ってますね。
見事なものです。役所は人間よりも会社を大切にしますからね。健康よりも賞味期限が1日でも長く延びて、売上が広がることを応援してるんです。
地震や原発などの事故の確率などもいろいろ調べてます。
危険の中で生きている。世は無常ですな。
150円高。
3 「哲学」
島田紳助・松本人志著 幻冬社 1300円
日テレでやってる「松本・紳助」て番組あるでしょ。あれがきっかけなんだろうね、この本。
紳助は昔から「天才、天才」って、この松本のことをいってたわけ。関西で有名な「ヤン・タン」という番組があります。紳助さんがパーソナリティを担当した最後の時、当時、まだ無名のダウンタウンを連れてきて、「オレの後はこいつらにさせてやってくれ」っていきなり頼んだらしい。
天才は天才がわかるんですなぁ。
で、対談じゃないわけ。互い違いにそれぞれインタビューしてるんです。問わず語りみたいにどんどんしゃべる。それをテープにとってまとめる。これたけで十分、面白いのに、なんで最後の最後に取材・執筆者の感想や意見などいれるんだろうね。これで中身が半減したとはいわないけど、まっ、蛇足ですな。
天才2人のあとに、凡人が感想を述べたところで、いらんでしょ。そんなもの。
これって、ページが足りなくなったんだね、きっと。
松本と紳助との初対面は、吉本興業が作った若手芸人育成学校NSCでのこと。もちろん、紳助が先生、で、松本たちダウンタウンの芸を見てるわけ。このときもたこ焼き食べながら見てたらしい。
出てくる芸人がみんな詰まらなくて呆れたらしいよ。
ところが、ダウンタウンのときに、まいったらしいよ。態度は変えなかったらしいけど、「もう、俺らの時代じゃない」とピンと来て、コンビ解消しちゃうんだから。
松本にいわせると、下手で下手でしょうがなかったらしいね。
それでも、紳助は「お笑いのセンスは生まれつき、天性のもの。残酷なようだけど、努力は関係なし。センスだけは努力でどうこうできるものではない」
でも、その時のネタって、「ヤクザはどうして、あんなに道にペッペとツバ吐くんや、汚くてかなわんわ」
「いや、それにはやくざはやくざなりに理由があるんや」
「そんなものがあるかいな。あるゆうなら、ここでいうてみぃ」
「やくざが道にせっせとツバ吐くんはな、帰り道に迷わんための目印やないか」
落ちは「でも、雨が降ったら帰られへん」
まっ、これに感動したらしいんですよ。話の内容というよりも、「間」にです。
なぜならば、紳助のテンポと対極にあったからだと思うんだよね。
紳助・竜介というのは、意識して16ビートの漫才を心がけてたわけです。それがダウンタウンの漫才の間はゆっくりなんですよ。
「あぁ、こんなやり方もあるんだな」と驚いたようですよ。
紳助は若いころに劇場とかでは漫才なんて見たことがなかったようですよ。
人生でいちばん面白いときに、そんなベタな笑いなんて聞いてられるかというわけです。
テレビで見ても、「しょうもない。つまらん」とずっと思ってたらしい。
ところが、ある時、ものすごい漫才を見たわけ。ものすごいスピード感溢れる漫才で、「自分と同じ感性をもった人が此処にいる」って感じたらしい。
で、その人に近づくためにある師匠の弟子になるんです。そうすれば、兄弟弟子になれるからね。
弟子になると、いつも付き人としてその爆発的パワーの漫才師にくっついてたんです。
それが島田洋七です。「紅葉まんじゅう!」って、あのB&Bですね。
これがやっぱり天才だからわかると思うんですが、紳助は洋七の笑いのビジネスモデルを徹底的にコピーするんですね。
まず彼らの漫才をテープにとって、それを全部文字にする。
そしてネタだけ自分流に変える。
でも、洋七は気づくんです。
「おまえ、パクルんじゃねぇ」
でもね、紳助は洋七には物足りない点が1つだけあったらしい。人間性の個性というか、面白さなんだよね。それを「色気」と言ってるんだけど、松本にはそれがある、っていうんですね。
紳助という人は計画を立て、そのためにとことん戦略を練るのが好きなんですね。
たとえば、デビュー時から30歳までの青写真を描いていた。「30歳で司会をやる。引退後はサラリーマンをやるんだ」ってのが計画だったんですね。
紳助は大阪の番組では1人で3時間くらい喋り続けてるらしい。しかも、これがめちゃくちゃ面白いらしい。
これ、わかります。
私も関西に4年住んでましたから。関西の番組というのは、めちゃくちゃ安く作ってるんだけどこれが手作りの味が出てて、めちゃ面白いんです。
たとえば、スカイパーフェクTVでもやってるんだけど、「クラブ紳助」だったかなぁ売れない若手芸人達にいろんな体験、修行をさせるわけ。それがクイズになってるんだけど、紳助、この番組の中で上の食堂からたこ焼き取ったりして、勝手気ままに放送してるもんね。ゲストも円ひろしとか、関西の友だちばかり。でも、好きなんだなぁ、この番組。
これもずっと喋りっぱなしだもんね。
紳助は自分でこの件について回答してます。
「客に向かってはそんなに喋り続けられない」って。プロ相手じゃないとダメなんだね。
これはタケシも一緒。
素人いじりで楽しめるのは欽ちゃんくらいでしょ。
松本はよく見てるよ。
この人、同期がトミーズとハイヒール・リンゴ、モモコなんだよね。彼らは売れたのに、ダウンタウンは先輩達に嫌われて全然売れない。
でも、漫才ブームの時でも周囲をよく見てるわ。
「漫才の上手下手じゃなしに、発想で勝負できるように、僕はそこに敏感に反応したというわけだ」
こんな松本でも、ダウンタウンの初期はやっぱり下手だったわけ。
「こんなおばはんにわかるわけないわ」と小屋で受けないときに思う。だから、1人でも若い客がいると、その人に向かって漫才をしてたわけ。
で、その客が笑ってくれれば、それで自分たちの中では満足だった。
それから4年後、23歳になったとき、ダウンタウンは劇場でバカ受け。
その時はおばはんも、おばあさんにも、みんなに受けてたわけ。
「つまりあのころの自分たちは漫才が下手だったんですよ」
ところで、松本と浜田のコンビですけど、これは中学時代に漫才師になろうと考えていたらしいですね。ところが、競艇選手志望の浜田が高卒時に試験を受けたら「背が高くて落ちた」んです。競艇ってのは空気抵抗と体重が少なければ少ないほどいいもんね。
で、「お前、あのときのこと、覚えてるか」と町で松本と会った時に言うんです。
それで、昔の夢がぶり返すんですね。
おもしろいね。
やっぱ、子どもの頃の夢というのは現実離れしてるけど、直感的にズバリ生き方を指南してるところがあります。周囲の先輩方に聞くのもいいけど、子どもの頃の自分に聞いたほうが案外、正鵠を射抜いてるかもね。
250円高。