2001年06月04日「デキる人は『喋り』がすごい」「おかみさんの経済学」「天気予報はこんなに面白い!」
1 「デキる人は『喋り』がすごい」
日本語力向上会議 角川書店 571円
タイトルを見て、「これを読めば説得力がつくのかな」と思ったら大間違い。そういう本ではありません。
内容からすれば、「あなたは正しい日本語を話してますか?」というタイトルにしないといけませんね。
どうしてこういうタイトルつけたんだろう?
いや、日本語ってのは難しいですね。
たとえば、ティーバックとティーバッグ。これ、語尾がほんの少し違うだけなんだけど、時と場合によっては赤っ恥をかくことも十分ありますな。
「課長からいただいたティーバック、早速使わせてもらってます」なんて、女性社員がエレベーターの中で言ったりしたら大変ですよ。社長が同乗してたりして、「君、それ、どういう意味だ。君たち、どんな関係なんだ?」って。
T-backとteabagって英語で書けば、違いがわかるんだけどね。
でも、「ハンドバック」って言ってる人はたくさんいますね。ベッドとベットもそうだし、この手の違いならたくさんあります。
実は、この本を読む前日に外資系企業の経営者、アメリカの大学院の教授たち、総勢で10人くらいの小宴会があったんです。そこで、ある人が「やっぱり世の中は1引き、2才、3学問だよ。うん、これがなければビジネスは成功しないよ」って言ったんですね。外資系とは思えない発言でしたけど、ビジネスに外資系も民族系もないんです。日本であることはアメリカにもあるんです。
「えっ、それ何ですか? もう1回 もう1回」と催促してメモしたら、この本のなかにありました。引きとは「周囲の引き立て」のこと。才は「才能」、学問は「勉強、研究熱心、努力」ととらえてもいいですね。
で、これを優先順位をつけて表現したのが、「1引き」云々なわけ。
この本の中身はほとんど知ってましたが、わからなかったのもいくつかありました。それだけご紹介しておきましょうか。あなたはどれだけわかりますか。
「ぞっとする」という言葉は聞いたことがあると思うけど、「ぞっとしない」という言葉もあるんだって。
わたしはいままでこの言葉は聞いたことも無ければ、もちろん使ったこともありません。方言なんじゃないかな。意味は「あまり感心するほどのものではない。さほど面白いというものではない」ということらしいです。「ユーモア、ファッションなどがもう一つ良くないときに使う」らしいんだけど、聞いたことありません。
「貼付」。これを「てんぷ」と読む人はたくさんいると思うけど、実は「ちょうふ」が正解。「てんぷ」はあくまでも慣用読みなのよ。
知ってた?
「稟議」って何て読む?
「りんぎ」ってか。これも「ひんぎ」が正解。
これらはわたしもちーとも知りませんでした。「貼付」も「稟議」もワープロならすぐに出てきます。ファイナルアンサーだったらどうしよう・・・。
もうちょっとやろうか。
次の日本語の使い方のうち、正しいのはどーれだ?
1「寸暇を惜しまず働く」
2「寸暇を惜しんで働く」
だんだん日能研の試験みたいになってきたけど、これは2が正解。
「惜しむ」とは「大切にする」という意味だから、「ちょっとした時間すら惜しんで働く」という意味。1と2ではまったく逆の意味になるんです。
100円高。
2 「おかみさんの経済学」
冨永照子著 角川書店 571円
おかみさんとは「浅草おかみさん会」のドンこと、手打ち蕎麦屋十和田のおかみさんのこと。
まぁ、この人、大したものです。見上げたものです。懸命に生きてきた人です。
おかみさんってのはだれも懸命に生きてるとは思うけど、偉いね。感服しました。どこがいいって。私心がないところ。ちっぽけな私心はあるんだろうけど、それよりはるかに大きな公心があるね。
浅草仲見世の中ほどにある「飯田屋」が実家。その4代目がこのおかみさん。
といっても、お嫁に行くんです。嫁ぎ先が和菓子屋の老舗「菊水堂」ですな。でも、この店、いまはありません。没落してくんですね。売れなくて。それでおかみさんの弟が当てた蕎麦屋をやるわけ。
浅草では「養子と後家さんじゃないと商売には成功しない」といわれるそうです。どちらも旦那がいませんね。旦那は遊んでばかり。それが粋でもあり、また町内会の顔役への道でもあります。
養子や後家なら遊びや女道楽に走る心配がありません。家業大事に励めますもんね。
おかみさんのところも、結局、旦那が家に帰ってこなくなります。お妾さんの芸者さんのところにいっちゃうわけです。
で、病気になる。入院先に行くと、「今日は一号さんですか、二号さんですか」と言われる。「最後はしょうもない友だちのような関係」って言ってますが、そうかもしれません。
この旦那さん、お妾さんに店を出させるために2000万円も家から持ち出したらしいですね。親兄弟からもお金を借りまくって、結局、返せない。挙げ句の果ては、おかみさんのところに手紙が届く。その中には東京駅のロッカーのキーがあった。
中を開くと、借金の証文が山ほど・・・。ウソみたいなホントの話です。それで倒産寸前まで行きますが、何とか持ち直します。
これね。テレビドラマになるな。絶対、どこかがやると思うよ。
この旦那は46歳で死にます。おかみさんは41歳。残されたお妾の面倒まで見ます。
「だってかわいそうじゃない。旦那は彼女との間に子どもは作らなかった。それだけはキチッとしてた。彼女も人がいいのよね。芸者なんだから、お客に惚れちゃいけなかったのよ。でも彼女は本気で惚れちゃった。うちの旦那も優しかったからねぇ」
ね、ドラマでしょ。いい女だね。映画は無理だけど、TBSかフジならやりそうな感じ。
おかみさんは頑張ります。怖いものがありません。元気、勇気で突っ走ります。そのために企画を立てて、人脈を頼りにどんどん突き進んでいきます。
たとえば浅草に2階建てバスを走らせます。これ、高さが道交法違反なんで運輸省がOKしなかったんです。役人は法律がご主人ですから、拒絶します。
でも、そこはおかみさん。運輸大臣のところに乗り込んで直談判。すると、あっという間に超法規的措置ですよ。これが20年前のこと。
これで話題づくりもできたし、日本中からお客さんが来て、その乗車代でン千万円も儲かった。その資金でいろんなイベントを仕掛けていくんです。
浅草といえば、カーニバルですよね。これも20年前から続いてるんです。
もともとは、伴淳三郎さんが「阿波踊りなんて古い。サンバカーニバルだよ」ってつぶやいたわけ。それが発端で、おかみさん連中はブラジルのリオ・デ・ジャネイロまで出かけていって、本場のサンバを直輸入します。
この行動力というか、好奇心というか、遊び心というか、まぁ大したものですね。
でもね、この費用が2000万円もかかるんです。その捻出のためにあちこちを駆けずり回り、そして多くのおかみさんたちと自腹を切ってまで実現させます。最初の数年は大変。でも、いまでは前夜祭のチケットまで飛ぶように売れるんですよ。
これはここまでイベントを育てたおかみさんたちの功績ですよ。
ディズニーランドに隣接した高級ショッピングモールに行ったらしい。イクスピアリのことでしょうね。
で、開口いちばん、このおかみさんが言ったのは「あぁ、しめしめ」だと。
さすがに施設はビルの中だから雨にも強い。一日中過ごせるエンタテイメントがいっぱいある。でも、レストランで食事をしても、マニュアル料理ばかりでちっとも美味しくないとのこと。
これはわたしも同感です。
オープンしてから、アンバサダーホテルにも宿泊し、レストランにも片っ端から行きました。わたしは2時間で飽きました。ホテル自慢のミッキーたちとのお食事会も不評。
「シェラトンがいい」「ヒルトンがいい」「もう2度と行かない」
「でも、ミッキーと食事できたでしょ?」
「1回でいい。もう飽きた」とのこと。
ショッピングセンターもレストランも、まっ、こんなものです。リピーターはこないだろうな。そういえば、お台場にも似たところがあるね。名前、忘れちゃったけど、あそこに似てる。つまらないところが。
「そもそも、商人てなんですか?」
「お金を稼ぐプロなんですよ」
やっぱり、これもタイトルが違うなぁ。「おかみさんの経済学」じゅなくて、「おかみさんの経営学」でしょ。
150円高。
3 「天気予報はこんなに面白い!」
平井信行著 角川書店 571円
著者はNHKで天気予報のキャスターやってる人。そう、あの若くてやせている人ですね。
この人、熊本は八代の出身だそうで、わたしの家内の実家の近くなんです。近くといっても千葉と横浜くらい離れているけど。高校まで陸上選手。学芸大で野球やってたそうです。
でも、子どもの頃から天文学が好きで、中学校の卒業文集に将来の夢として「気象庁予報官、または気象台勤務。欲をいえば、NHKの天気予報官」って言ってたんだから、もう夢が叶ってしまったわけですよ。
天気ってなかなか当たりませんよね。でも、確率は85パーセントで一頃よりははるかに良くなってるそうです。
この数字は「1週間に1回は外れてる」計算になります。でも、「当たらないな」という印象が強いのは、どうも週間予報にあるようですね。「今週の予報」というヤツですけど、これはむずかしいんですね。7日先だと65パーセントしか当たらないんです。その外れた日が土日だとこれは印象的ですよね。
95年5月18日に気象予報士制度が始まりました。
これが気象業界の規制緩和。気象庁とは違う独自予報を不特定多数のマスメディアに提供してもよくなります。それまでは気象庁の独占だったわけです(ただし、いまでも警報や台風、大雨、大雪など災害を引き起こすおそれのある現象についての解説はダメ)。
この人はNHKの職員とか気象庁の予報官だと思っていたが、ぜんぜん違うんですね。
「お天気キャスターです」とのこと。天気キャスターは天気を解説する人、気象予報士は天気を予報する人、気象庁予報官は予報する公務員だそうです。
だから、天気キャスターの多くは気象予報士の資格を持っているけれども、資格は必要ないそうです。わかりやすい解説ができればいいわけで、フジテレビでよく俳優の石原良純さんが天気キャスターをやってますが、それもありなんですね。
気象予報士は国家試験がありますが、もっと必要なテクニックは早さだそうです。
2時間半の制限時間内に25枚の天気図や雲の写真を見て、2000字前後の文章にまとめるものもあるそうですが、これを難なくこなせないと仕事にならないんです。というのも、気象予報士の仕事は1時間以内に50枚以上の天気図や雲の写真を見て、素早く予報を発表する能力を要求されるからです。
だから、1つの気象配置パターンについて最低10通りの解説方法を編み出す。また、気象と生活との関わりや身の回りに存在する不思議な天気現象を数多く勉強する。これらのことをできるだけわかりやすく、面白く伝えられるようになると、キャスターになっても長く続けられるようになります。
「私はペイペイの気象予報士。このペイペイの下がペーパー、そして上はスーパーペイペイ」とランキングをつけてます。これは面白いね。資格や免許があっても実技ができないのがペーパーってわけ。
で、1人前と認識されるのが「放送に穴をあける夢を見ること」だそうです。それだけ責任感が出てきたってことですね。
周りの上司や先輩もものすごくて、泊まり勤務の時に寝坊。放送10分前にやっと飛び起きてスタジオ入りしても、周囲はまったく何もなかったかのようだった、といいます。
「寝坊はいけないが、こういう経験もしないと大きくなれない」と上司の指摘。そうかもしれません。
天気予報の放送は2種類あって、しっかり下準備された平常放送、それと突然、台風が来たというような臨時放送。経験を積むと、臨時放送をまったく何もなかったかのようにして読めるそうな。
これはタイトル通り、天気予報ってこんなに面白いってのが伝わってくる良書です。
150円高。