2001年06月11日居場所のない男の犯罪

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過去への復讐


 まずは、大阪の亡くなった8人の子どもたちに心より哀悼を捧げたい、と思います。

 それにしても最近、おかしな人間の犯罪が目立ちますね。レッサーパンダの男は知的障害者。今回の大阪の事件も精神障害者で、「気○○○に刃物」を地でいった犯罪です。

 殺人事件は、ホントは普通の健常者(なのかなぁ)のほうが精神障害者の倍以上の確率で引き起こしているんですけど、こういう特異で目立つ大事件があると一気に世間は「抑えていた偏見」を表面化すると思いますよ。

 

 ところで、容疑者の父親らしい人の発言がものすごく印象に残りました。

 「いつかやると思ってた。責任能力は問えますよ。20年前に勘当したんです。いつも逃げ道を用意してからやるんです、あいつは」

 20年前といえば、この男がまだ17歳のときです。喧嘩や素行の悪さで工業高校を中退した頃ですね。もうこのときから、親には捨てられていたんです。また、妻からも捨てられています。どこに勤めても長続きしない。会社からも捨てられました。借金の山、車のローンも家賃も滞納。それでいて、就職の当てはない。永遠にない。さらに地検からの事情聴取。

 だれからも相手にされない自分。この男にはこの世に居場所がなかったんです。

 劣等感の奥にあるのは「自分の不運はすべて周囲が悪い」という被害妄想。だから、エリート層を狙うわけです。

 今回の惨劇は用意周到に計画された犯罪だと思うのです。その根底にあるものは自分を捨てた人間たちへの復讐です。こんなオレでもこんなに大きなことができる。やってしまえば、借金や絶望感、孤独感からも解放されるから一挙両得だ。

 この事件は男にとって「一世一代の晴れ舞台」だったはずですよ。

 精神障害者を装った小心者ですよ、この男は。



えせヒューマニストたちが跋扈する

 精神障害ということでいままで大目に見てもらったツケがここに来ていちばん弱い子どもたちに向けられたんですね。

 事件後、小泉総理はすぐに関係各方面に「刑法改正」の方向に指示を出しました。会見で語る言葉も人間の感情があらわれてました。

 一方、鳩山さんの発言はまるで「青年の主張」ですね。

 「責任の一端は政治にある。力でねじ伏せてはむしろ犯罪を生む。そうではなく、一人一人の生きる権利を自由に伸ばしていける社会を作り・・・」

 つまり、何も考えてないってことですね。

 個人の病理を社会の病理にすり替えてしまうことは簡単ですね。ヒューマニズム溢れる人徳者のように見えますよ。

 でもね、それは政治家の発言ではありません。だから、この人からはいつも現実感が伝わってこないんです。

 悲しいかな、行政ではまだ犯罪予防という観点からの議論はなされていません。「精神障害者による累犯をどう防ぐか」という議論のスタートラインにようやく立とうとしているところです。



 この国では、このような大事件をあと何回繰り返せば、まともな対策が出てくるんでしょうかね。危機管理など、ほど遠いことです。

 これは政治家、行政、そしてわたしたち国民の怠慢が引き起こした事件です。

 ご冥福を祈ります。