2012年09月08日吉田茂という人物

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 NHKが吉田茂を主人公にしたドラマを放送するそうですね。今夜あるらしいですよ。第1回目が。。。

 たぶん、マッカーサーを向こうに回して言うべきことを言った政治家だ。アメリカのご機嫌ばかり伺ってる最近の提灯持ち首相たちとは雲泥の差だ。首相たるもの、吉田のように大国を相手にしても毅然とした態度が必要だ。。。な〜んてね。

 吉田茂という政治家はそういうタイプとはほど遠かった人物でした。
 
 公職追放リストに載ってることがわかると、マッカーサーほかGHQ幹部に熱心に付け届けを繰り返し、政権を預かった盟友鳩山一郎の追放解除をできるだけ遅らせるように工作した男です。あのふてぶてしさは国内向けで、「権力者」の前では180度転換。変わり身の早さだけはたいしたものでした。

 典型的な「官僚」で「政治家」ではありません。GHQの命令通り精勤した男です。あのイメージもGHQの命令通り御用メディアが作り上げたモノです。

 佐藤栄作、池田勇人、そして田中角栄がじっと見ていました。官僚出身の2人は吉田の忠勤ぶりをそっくり真似、党人派の1人は「操り人形」から脱皮しようとしたものの、アメリカからとことん狙われてしまいました。本来であれば、政治家として抹殺されるはずが、実力でそれを阻止したのは田中角栄なればこそ。並の政治家ならばとてもとても。。。

 1951年9月8日、日本はサンフランシスコで講和条約と日米安保条約に調印しました。講和条約が執り行われたところはオペラハウス。48か国の代表が調印しました。終戦時、ミズーリ号上に並んだ国家のうち、ロシアは調印拒否、中国は招待されず、インドは参加そのものを拒否しましたよね。

 では日米安保条約は? アチソン国務長官、ダレス国務省顧問、ワイリー&ブリッジスの各上院議員。このわずか4人です。日本は? 吉田1人。しかも首相としてではなく個人としてです。肩書きを銘記していません。場所は? 郊外の米国陸軍下士官クラブですよ。まるで拉致られるように連行されてきたわけです。吉田も怖かったでしょうね。

 問題は条約ではなく、いまも禍根を残す「日米地位協定」にあります。条約は国会審議と批准を必要としますが、協定にはそんな面倒くさいことはありませんからね。旧安保条約は5箇条ですが、行政協定は29箇条もありました。で、都合の悪いことはすべてこの行政協定に紛れ込ませたんです。

 ダレスが要求したこと。。。それは「アメリカが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間、駐留させる権利」です。

 これ、変えようとすると必ず潰されてきています。鳩山由紀夫さんが「最低でも県外(普天間問題)」な〜んて発言したから、あっという間に政権は潰されました。

 普通、独立を勝ち取ったら、占領期の首相(=吉田茂)は交代するものですが、この権力欲旺盛な男は居座りました。カンチョクトさんと同じですね。

 当時、宮澤喜一(元首相)は驚きました。
「これでは独立する意味がない、に等しい・・・」

 ダレスの要求を(「アメリカが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間、駐留させる権利)を吉田は行政協定に密かにまぶして書き込もうとしたんですが、宮沢から指摘されてできなくなると、岡崎勝男というイエスマンを使って「交換公文」という抜け道でこっそり認めるんですね。「事実上の密約」です。

 おかげで岡崎は外務大臣に昇進します。吉田の首相在任期間は7年でしたが、最初の4年半は自ら外務大臣を兼務。残る2年半はこのイエスマンにまかせています。

 まだ見てませんからどんなドラマか知りません。もし「吉田ヒーロー物語」ならば、番組のエンディングに原作とか参考資料とかがよく出てきますよね。たぶんイエスマン岡崎が書いた『戦後二十年の遍歴』あたりが登場するんじゃないかしらん。吉田茂の真実を描いた名著『安保条約の成立』(豊下楢彦著)とか『さらば 吉田茂』(片岡鉄哉著)なんかは絶対に載らんだろうな。

 これだけ文句言ってるから見ない? とんでもない。どこまでこの「売国奴」が持ち上げられるか、とってもとっても興味があります。