2013年02月12日「中島孝志の 聴く!通勤快読」 特別に全文紹介! 大前研一著『クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道』(小学館)

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 2011年の貿易収支が31年ぶりに赤字に転落しました。超円高と東日本大震災、それに続くエネルギー価格の上昇と燃料の輸入拡大……。

 規模の拡大を目指すボリューム国家に対して質の向上を目指すべき、というのが大前さんの主張です。

 国際競争力ランキングで1から4位のスイス、シンガポール、フィンランド,、スウェーデン。1人当たりGDPが400万円以上でクオリティ国家の条件を満たしていない国は、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)、オーストラリア、カナダなど資源国ばかり。

 日本は政府の国家戦略会議が策定した「日本再生戦略」で、2020年までの目標として、「新車販売に占める電気自動車など次世代自動車の割合を5割に」「理系博士課程修了者の完全雇用」「木材自給率を50%以上に」「訪日外国人旅行客を2500万人に」「格安航空の割合を2割から3割に」「第1子出産前後の女性の継続就職率を55%に」など11分野に450もの政策を掲げ、それによって900万人超の雇用を生み出す、としています。

 70年代半ばから日米間で貿易不均衡がありました。自動車産業はアメリカへの輸出を減らして現地生産にシフト。自動車メーカーと部品会社が合わせて95社。300万台近くをアメリカで生産しているわけです。当時、アメリカ企業はしきりに海外に工場をつくっていたんですね。つまり、アメリカの雇用を日本企業が守っていたわけです。

 半導体についてもアメリカに言われるまま。全体の2割を輸入すると約束しました。韓国メーカーに半導体製造のノウハウを習得させたところ、彼らはすべて盗作。基幹技術をブラックボックスにするか、自ら乗り込んで製造すればよかった。

 保護していたはずのアメリカの鉄鋼企業など、アルセロール・ミタルにどんどん買収されていきました。77年に日本製カラーテレビに関する市場秩序維持協定ができました。自主規制です。ところが、最後まで残ったゼニスもメキシコに移転した後、韓国のLGに買収されています。日本の妥協は何の意味もなかったわけです。

 昨日ご紹介したスイスの国際競争力が強い理由は、国が企業を支援しないからです。人口800万人足らずですから、海外に出てグローバル化するしかない。逃げ帰る祖国がない。成功するまで頑張るしかない。背水の陣なんですね。
 日本とスイスは天然資源がない。国民が勤勉。ただし日本は国家が何でも出しゃばります。スイスは国立大学はチューリヒ工科大学とローザンヌ工科大学の2つしかない。大学進学率は3割未満。バカが大学に行く無意味なことはない。職人の地位が高い。尊敬もされています。

 スイスのネスレの海外比率は96,9%。資産は95.8%が海外にあり、売上の97.8%が海外で計上され、従業員の97.0%が海外です。グローバル企業の海外比率ランキングを見ると、上位に日本企業は入ってません。上位に位置するのは世界で二輪車を販売するホンダ。海外比率70.7%で41位。日産自動車が60.9%で62位、ソニーが59.4%で68位。日産がソニーより上位となったのはカルロス・ゴーン効果です。

 花王や味の素が世界化できない理由は日本市場だけでそこそこ生きていけるから。グローバル企業にとって税金問題を除けば、本社がどの国にあるかは重要ではない。グローバル企業になればなるほど本社は小さくていい。

 スウェーデンはボルボやサーブが経営危機に陥ったとき、政治は保護も救済もせず潰してしまいました。解雇が規制緩和されていて、企業は従業員を解雇しやすい。その分、制度としてセーフティネットが確立されています。

 ま、著者の主張だけでなく、私の批判を10倍ほど濃くしたのが「中島孝志の 聴く!通勤快読」なわけ。おバカな主張に洗脳されなくていいと思うよ。