2005年08月01日「プロ経営者の条件」「誰も知らない名言集」「シネマ坊主2」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「プロ経営者の条件」
 折口雅博著 徳間書店 1470円

 ジュリアナ、ヴェルファーレなどを立ち上げた「ディスコ王」として名を馳せた人ですね。
 で、いま、コムスンという介護ビジネスでガンガン攻めてる経営者。
 ゼロから10年で売上1400億円、東証一部上場企業を作り上げた人でもあります。

 毀誉褒貶が激しい人ですね。ディスコからスタートしてるから、イメージとして誤解されてる損な人。
 けど、本人はかなりの苦労人。で、この苦労がバネになってる典型的な経営者かな。

 小学生の時に父親の会社が倒産。勉強はできたけど高校への進学資金がなくて、横須賀の自衛隊少年工科学校に入学。
 そこでとんでもない訓練を受けながら、持ち前の集中力で防衛大学の試験に突破。いまでもこんな人、いるんだねぇ。防衛大って、自衛隊の人でも試験で加点されることがないからね。大変ですよ。
 
 「成功者がその秘訣を聞かれた時、運が良かったと答える言葉ほど残酷なものはありません。なぜなら、運がなければ成功できないということになるんですから」
 「日商岩井のサラリーマン時代に手がけたジュリアナ東京も、退職後に手がけたヴェルファーレも、グッドウィル、コムスンも、成功するための原因を作ったから結果が出ているのです。こうなるための原因をゼロから作ってきたのです」

 ゼロから1を創るってのは、たとえば、トヨタに入社しようと考えるのではなく、どうしたらトヨタみたいな会社を創れるか、と考えること。
 これ、すごいよね。独立意識、起業家精神てのはこういうことでしょ。
 けど、別にこのビジネスで成功したいという明確な目標はなかった。彼の目標は「いつか、でっかいことをしたい」。だから、どんなビジネスを展開することは決めてないわけさ。

 ジュリアナを追い出されて借金ばかり作った時。朝起きたら、資金繰り。月末の決済が終わって月初になったら、また資金繰り。トイチにまで手を出した。
 「こんなビジネス、やらなければよかった」という思いが何度も頭をよぎる。
 「けど、この仕事をしてなかったら、夢は追えなかったな」
 「よし、これを乗り越えて次に行くんだ!」

 で、手がけたビジネスは「性格診断機」。百円玉を入れると画面に質問が現われ、それに答えると性格診断ができるという機械。
 これ、20万円。めちゃくちゃ安いわけ。
 すぐに12台購入して、ゲーセンやゴルフ練習場に設置。収益の6割が自分の取り分。面白いように儲かった。
 こんな機械、普通なら、へぇ面白いね止まりですよ。けど、お金が欲しい。なにかいいビジネスはないかとテーマがあると、よし、これでやってみようと考えるわけ。
 そんなことをしながら、ヴェルファーレを企画し成功させて、それで借金を返済。

 介護ビジネスは今後、ますます成長するでしょうね。介護保険の予算は、2004年が5.5兆円。7年後には12兆円、20年後には20兆円と算出されてます。
 ものすごい老人大国になっちゃいますからね、日本は。
 しかも、介護ってのはわたしも少なからず経験がありますが、身内だからできるってもんじゃありません。これはプロの世界の仕事ですよ。
 プロだからできる。他人だからできる。そんな仕事なんです。看病は身内でもできますけど、介護はプロに任せたほうがベターです。

 ビジネスで成功するためには3つの条件があります。
 「夢と志」「技術と仕組み」、そして「執念と鉄の意志」です。だれにも負けない努力をしなくちゃね。
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2 「誰も知らない名言集」
 リリー・フランキー著 幻冬舎 520円

 すっかりはまってしまいました。リリー・フランキー堺さん・・・て、こんなギャグ、ウケねぇな。
 フランキー堺なんて知らんだろうな、若い人は。慶応でドラマーとして鳴らし、その後、映画界入りした人よ。「赤カブ刑事」シリーズとかに出てなかったっけ?

 さて、名言集というのは、たいてい、功成り名遂げた人が書いたり、あとでその言葉がまとめられたりするものですね。
 けど、これは極々普通の人が、日常のなんてことない一瞬に吐いたひと言。それが「名言」として編まれています。
 これ、目の付け所、最高でっせ。
 だって、そういうひと言って、ほとんど反射神経で生みだされた言葉でしょ。作為とか意識がない世界だから、いいのよね。それに別に偉人の言葉って想像がつくものが多いじゃん。
 けど、リリーさんが紹介するような人だから、とんでもないわけよ。
 「えっ、この瞬間、こんな言葉、あり?」
 「しっかし、まぁ、よぅこんなオッサンいたなぁ」
 「いいタイミングで見つけた、偉い! そのアンテナに脱帽!」
 てな具合。

 さてさて、では、名言を少しご紹介しましょう。
 「いいえ、木刀で」
 これ、DVの女性のひと言なんだよね。
 どういうわけか、人にはそれぞれ星があって、「つき合う男がいつもスカトロの女」「どういうわけだか、オヤジにばっか言い寄られる女」とかいますね。
 本人はどうしてかしらと首をかしげるものの、それにはやっぱ理由があるわけさ。
 自分の星が招いてるの。

 この女性、19歳。小柄でチャーミングな娘。街を歩けばだれもが振り返るってタイプなのよ。
 「それ、入れ墨?」
 「いいえ、前につき合ってた彼氏からむりやり、カッターで彫られたんです」
 半袖の腕に青インクの下手な字。
 「これ、胸と太股にもあるんです」
 この女性、つき合う男からいつも暴力をふるわれるわけね。その内容がほとんどマンガの世界。
 15歳の時の男には、巴投げで投げ飛ばされ、両肩脱臼。足の中指骨折。17歳のときには。橋の上から投げられた。
 で、その男が駆けつけて助けてくれると思ったら、いきなり頭をつかまれて水中にごぼごぼと沈められたらしい。
 奥歯が二本折れてる。
 「それも殴られたの? 普通じゃないね。女の子をグーで殴りますかね?」
 「いいえ、木刀で」
 「!」

 こんな女性、いるんですね。暴力の後の優しさにアドレナリンがガンガン反応するタイプね。
 これは酔っているんです。快感なのね。だから、どうしても、こういう男を惹きつけてしまうわけです。
 
 まだあるよ。
 「すみません。わたしとホテルに行きませんか?」
 リリーさんは雑誌でヌード撮影とかしてるじゃないですか。で、この日もそんな仕事があったわけ。
 「どうせブスだろう」と思ってシカト。一時間半遅れで待ち合わせ場所に行ってびっくり。
 「こ、こ、この人はだれ?」
 声もうわずっちゃう。
 「ちなみに何カップですか?」
 「Fカップです」
 もうたまりまへんでぇ。

 撮影が終わってからインタビュー。これが本当に仕事なわけ。

 「いままで何人の人と体験したの?」
 「300人くらいかな・・・」
 耳が壊れた、心臓が破れた。インポになった・・・とリリーさん。
 「わたし、一人で歩いてるとHしたくなっちゃうんです」
 そんなとき、彼女は前から歩いてきた男の腕をつかまえてひと言。
 「すみません。わたしとホテルに行きませんか?」
 
 そんな女性といるもんか? いえいえ、いますよ、たしかに。これ、本人は気づいていないけど病気なんですね。
 そうしないと、ガマンできないわけ。その男に言い寄る瞬間が快感なのね。
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3 「シネマ坊主2」
 松本人志著 日経BP社 1365円

 視聴率200パーセント男、放送作家安達元一さんが絶賛する松本さん。いったい、どんな発想力を持ってるのか、とっても気になります。

 以前、前作を紹介したことがありましたね。その続編。

 映画評論本ですけど、いいのは、評論が少しで、あとはお笑いの話に終始してるところ。とはいいつつも、いい映画はいい、ダメなのはダメ、と正直。これは悪口言えないな、という作品にもかなり的を射た内容だと思う。
 たとえば、「千と千尋・・・」なんて厳しいよ。

 「なぜ、大人が子どもになにか伝えたり、楽しませないといけないのか」
 「子どもなんて楽しいものを自分で探し出す生き物です」
 「きっと、そこがボクが宮崎アニメを受け容れられない根本的な理由のような気がします」

 これ、同感です。

 けど、見てますなあ。トータル80本でっせ。
 紹介されてる作品で、わたしも見て面白かったのは『ピアニスト』『8人の女たち』『チョコレート』『戦場のピアニスト』『猟奇的な彼女』『ラストサムライ』『誰も知らない』『血と骨』『シャル・ウィ・ダンス?』・・・。

 『8人の女たち』はドヌーヴ、エマニュエル・ヴェナールなど、フランスを代表する女優陣が総出演するミュージカル推理映画。
 「舞台でやれ」には同感です。
 この作品、かなり、いいんです。彼はまったく期待しないで見てたら、意外と良かったという評価ですが、たしかにそうだと思いますよ。
 女性が男性を映画館に連れてって、「私が誘った恋愛けどいまいちだったかな」と女性が後悔してる中、「思ってたより良かったな」と男性がほくそ笑んでいる、という映画です・・・というのはズバリそう。
 これ、封切りは渋谷のパルコ近くの映画館でしたけど、九割は女性客でした。

 ドヌーヴがとっても艶っぽいの。あの人、寅さんのマドンナにしたら良かったのにね。あと、『ピアニスト』に主演してるイザベル・ユベールも出てます。この人、好きなのよね。

 なるほど、なるほど。 さすが、松チャン、こんなアンテナしてるんだということがわかる逸品です。
 今後、しばらく、松本本の紹介が続きますよ。
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