2005年08月08日「人生にはチャンスが三度ある」「バカチンたちに捧げるバラード」「小さなスナック」
1 「人生にはチャンスが三度ある」
萩本欽一著 ビジネス社 1365円
欽ちゃんの本です。
わたし、欽ちゃん好きなんで、ぜーんぶ読んでます。
ノンプロ野球チームのゴールデンゴールズを結成したでしょ。それについても、いろいろ書いてます。
このチームには、PL出身で、甲子園で横浜高校の松坂大輔と投げ合ったピッチャーがいますね。どういうわけか、いま、アナウンサーやってるヤツ。
彼よれもだれよりも早く入団決定したのは、あの片岡安祐美さんなんですね。
しかも、その理由がふるってます。
「できる人間は顔でわかる。ぼくが入れた選手は顔でしか選んでません」だって。
なんでかな?
「素人のボクが、プレイを見て入れたなんて言ったら、選手に失礼。ボクは選手たちの顔を変える作業をしてる。技術的にはすごいのに、いまのこの顔じゃあなあ・・・」
顔さえ変われば、スターになれる。
人の顔って、整形なんてしなくてもガラリと変わっちゃうの。
とくに目は変わります。これは芸能人も同じ。というか、芸能の世界で芽が出る人間を見ると、みな、目が違う。パッと輝いてるわけ。
だから、顔で選ぶわけ。表情がイキイキしてるヤツ、ってわけ。ということは、ほとんど、築地の鮪の仲買人と同じなのね、採用方法が。
次に大切なのが、言葉。
顔と言葉が揃うと、運が向いてくるわけさ。
欽ちゃんが野球チームを本格的にプロデュースする時、考えたのは、いまのプロ野球に絶対的に足りない要素を入れよう、としたわけ。
それが「言葉」と「演出」。これがドラマを生むわけ。
スポーツは筋書きのないドラマ、っていうけど、プロ野球はほとんど筋書き通りに進んじゃう。だから、つまらなくなってるのさ。
運というのも、筋書きのないドラマなわけ。
だから、自分が考えたように進む、っていうのはよく考えると、運がいいんじゃないんです。
「納得いかない」「おかしい」って考えた時、実は運が向いてきてるんです。
たとえば、人事異動。
あるテレビ局でバラエティ番組のヒットメーカーと呼ばれるディレクターがいました。
けど、この人、突然、営業に異動させされちゃった。
「おかしい、納得がいかない」と欽ちゃんの顔を見るたびに愚痴ってるわけ。
で、テレビ局の社長に、「あいつ、怒ってましたわ」って伝えた。
すると、その社長曰く、「でも、あいつ、営業で優れてるから」だって。
バラエティで覚えた会話が、スポンサーに大好評、それまでの営業って、きちっとネクタイして堅い会話ばかりだったからね、ウケたんです。
「制作部に戻って番組作りたい」
「バカだね、おまえ。営業にいれば2階級特進で部長だよ。それでも戻る?」
「うーん、部長ならいる」
いま、この人、局長さんに出世しちゃってる。でも、まだ、顔を見ると、「納得いかない」ってこぼしてる。
「運てのは、自分の好きなところや得意なとこにはない」
これ、欽ちゃんの哲学ね。
だって、欽ちゃん自身がそうだったもの。コント55号を解散して、最初の仕事は司会業。司会なんて、お笑い芸人がやるもんじゃなかったの。笑いは得意だった。だから、お笑い以外の仕事は断ってたわけ。
でも、義理でむりやり頼まれた。
けど、進行なんて覚えてない。お笑いの舞台はほとんどアドリブでしょ。その場でセリフを作っていく世界。
で、結局、司会の進行もセリフも忘れちゃった。で、勝手にしゃべってた。
けど、それがウケた。いままでなかった司会のやり方だ、ってね。ぜーんぶ、アドリブなんだもの。
「人の才能なんて、自分で決めるものじゃないよ。才能を見抜くのは他人だよ」
これも欽ちゃんの哲学。
「えっ、おれってこんなところに才能があったの? 信じられないや」
人がとんでもない優れたことするのは、欠点が花開いた時なのね。
欽ちゃんの会社(浅井企画)には関根勤、小堺一機がいますね。
彼ら、欽ちゃんに会いたくて、会社、入ってきたの。
で、マネジャーが「あの2人、欽ちゃんに会いたいらしいんです」
「じゃ、5年間、待たせといて。ボクに会いたいという理由だけでこの世界に入ってきたなら、さっさとやめるから」
5年経った時、マネジャーがひと言。
「あいつら、まだいますけど」
「えっ、ホント! じゃ、会おうか」
バラエティ番組を夜の十時台に持ってきたのも欽ちゃんです。それまでは、ドラマの時間帯だったのね。
欽ちゅんがこの時間帯で成功すると、テレビ局は右へ倣えでみな、進出してきたんです。
それ見てね、「そのうち、視聴者は飽きる。いいドラマ見たいなって」。
で、ラジオ番組で知り合った日大芸術学部の先生に、「ドラマのシナリオ書けるの、ちょうだい」って頼みます。
2人来る予定が、1人逃げちゃった。で、来たのが君塚良一という学生。
「ドラマ作家に弟子入りしても、師匠を超えられないよ。でも、ここなら、明日からきみがいちばん!」
そのまま、欽ちゃんの会社に入っちゃう。けど、ドラマなんて書かせない。お笑い番組の構成とか、させてた。
「10年経ったら、きみはすごいよ」
君塚さん、10年後に脚本を書きます。
どうして書けたのか? それまでバラエティ班にいたディレクターがドラマに移ったわけ。
「おまえ、むかしからドラマ書きたいって言ってたな。書いてみな」
で、できたのが「ずっとあなたが好きだった」。例の冬彦さんブームの火付け役なんですね。
映画の脚本も書きましたね。「踊る!大捜査線」がそれ。
彼、いまでも「仮装大賞」では、「どこから来たの?」って、せっせとインタビューしてるんです。
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2 「バカチンたちに捧げるバラード」
武田鉄矢著 集英社 1300円
ご存じ、金八先生こと、武田鉄矢さんによる人生相談です。
これ、週刊プレイボーイに連載されてたものです。だから、というか、質問が若い方からたくさん。
しかも、おもしろいのね。
「芸能人になりたいんです。どうしたらなれますか?」なんてね。
パラエティ番組、たとえば、「踊る!さんま御殿」などでも、ゲストはみな、「イス」に座ってますね。
このイスという意味は2つあります。1つは、イスとりゲームのイスであること。つまり、ほかのゲストを押しのけてでも自分が座る、つまり、出るという意味。芸能界では、この押しの強さ・・・というか、押さなくても出てしまう積極性とかオーラが大きいですよね。
それともう1つのイスという意味は、「自分の居場所」ということね。
居場所とは、「個性」「売り」、あるいは「ブランド」といっていいかもしれませんね。「あぁ、それなら、彼がいちばんだ」という定評のことかな。ちょっと流行の言葉で言うと、「コンピタンシー」ってことになりますかね。
でもって、金八先生は杉田かおるさんのことを例に出してます。
ところで、わたし、この人、好きじゃありません。「パパと呼ばないで」のチー坊は別にして、それ以来、たとえば、「青春の門」の織江役の時から、わたし、どことなく好きじゃないんです。
はっきりした理由はないんです。「どことなく」です。
どことなく田舎くさい(田舎そのものだったらいいんですけどね。くさいのは嫌です)、どことなく下品、どことなく育ちが悪そう・・・。言い過ぎをあえて承知で言うと、こうなります。
で、この人、これまでヌードになっても、なにをやってもダメだったんです。でも、最後の最後まで、この芸能界という世界でしか生きていく道はない。その意識が強烈にあった。だから、自分の「売り」をあれやこれやとアピールして、イスとりゲームからはじき飛ばされないように必死にしがみついてきたんです。
で、ようやく居場所を見つけた。「これなら生きられるかも」って居場所。
それが「負け犬」であり、計算し尽くした「セレブ」への転身でした。
いまのところ、彼女の夫である鮎川さんは実は知人です。彼、このしたたかで必死な芸能人にまんまとしてやられたんだ、とわたしは見てます。頭の良さより、ずるさに負けたんですね。
命がけで「ここぞ!」という時に勝負に出た女は強いんです。
こういうタイプ。たくさんいますよ。
たとえば、ある出版社の社長など、社員である女性編集者に、飲み会の席で、「わたし、腹、括ってます。愛人にしてくれませんか」と直談判されたと言います。翌日、男性社員をすぐに集めて、「あいつだけには手を出すな」と指令を出した、と言います。
彼女にしてみれば、転職組だけに自分の居場所を見つけるのに必死だったのだと思います。
いま、その編集者の口癖は、「身体、張ったことある?」だそうです。もちろん、後輩はキョトンとしてますよ。「ええ、徹夜で仕事してます」と答えるしかありませんものね。
で、「芸能人になりたい」「あの番組に出たい」なんてレベルの願望じゃダメなんです。
「これがやりたい」「これならだれにも負けない」という売りがないと、イスには座れないんですよ。
しかも、このイス、キャラがかぶるとダメです。同種の中からはたった1人しか座れないんですね。
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3 「小さなスナック」 リリー・フランキー&ナンシー関著 文藝春秋 1500円
リリーさんの本の紹介、3冊目かな。とくにこれはナンシー関だもの。
強烈だよね。
いま、ナンシーがいたら、なんていうかね。
杉田かおるさんとかさ、叶姉妹ってのもいたな(まだいるか)。あと、細木数子さんとかね。参議院議員のレンホーとさ、チェ・ジ・ウとかも、なんていうかね。
ご意見番というほどでもないんだけど、「そうそう、それが言いたかったのよ」と溜飲を下げるようなピンポイントを射抜くようなコメントってないじゃない。
とくにテレビのコメンテーターって、ろくなのいないでしょ。女子アナのなれの果てとか、パレーボールのOGとか、どんな記事を書いてたか知らない新聞記者のOBとかね。はっきりいって、オヤジ、オバサンの感想文そのものなわけ。
「そうそう、視点が違うね。やっぱり、コメントで金、取れるよ、この人」というのが皆無。
毒も薬もないのよ。副作用もないし、もちろん、効果なんてないの。なんていうかな、気休め、箸休めってな感じ。
どうして、こんなのをテレビに出すかね。
リリーさんとナンシー、いいね。この組合わせ。テーマはあるんだろうけど、もう関係ないね。
勝手にしゃべってていよ、てな感じ。
リリーさん、18歳からこの名前だって、そりゃ、本名は中川さんだよ。けど、当時、友だちがローズて呼ばれてて、その関係で、リリーってつけられちまったわけ。
いまなら、「ボタン」ってつけられたはずだよ。
わかる?
で、フランキーってのはね「フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド」というバンド名からぱくったわけさ。
で、ナンシーにしてもリリーさんにしても、こんな名前をつけたってことは、こんなに長続きするとはまったく思ってなかったってことだよね。肩の力が抜けててさ、「まっ、いいよ、適当で。名前なんか、記号なんだからさ」っていうスタンスがいいよな。
リリーさんて、遅刻の常習者で、締切を守らないことで有名でしょ。落とすのなんか日常茶飯事。
毎日、電話しても関係なし。だから、「リリーさんの担当者になると、生理が止まる」って有名ですね。
これ、すごいね。
けど、わたしもある意味で、「生理が止まる」と怖れられてます(ウソ!)。
話は変わるけど、松崎しげるさんの元ツマって、B’zの稲葉さんのいまの奥さんらしいね。
まっ、いいか、そんなこと。
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