2005年08月22日「社長の遺言」「シモネッタのデカメロン」「さすらいの女王」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「社長の遺言」
 高橋がなり著 インフォバーン 1260円

 ご存じ、SODの社長さん。いまは社長を引退し、悠々自適の充電期間。
 思えば、この人を有名にしたのはあの「マネーの虎」だよね。あれがなけりゃ、ただのAV屋だもの。
 だから、人ってバカにしちゃいけないのよ。
 とくに中小企業のオヤジは、身体張って仕事してきてるからね。味わいがあるっていうか、癖があるっていうか、「自分の言葉」を持ってるわけさ。

 「苦労してる時に逃げ出す人って、たいていは、その苦労が一生続くと勘違いした人なんだ。だから、必ず楽になる時が来るって、いまはガマンして目先の壁と格闘していて欲しい」なんてね。
 こんな言葉、頭でこねくり回しても出てきますよ。
 けど、身体張ってつかんだ言葉と、頭で考えた言葉って、やっぱ重みが違うわけよ。重みというのは、歴史というか、時間。そこに汗と涙、悔しさなんかが密度濃く詰め込まれてるのね。
 これが本物と偽物の違い。

 こんな言葉、二代目、三代目が言っても迫力なんて感じないものね。

 「登山中に休憩するのと、山頂で休憩するのとでは、気持ちよさが雲泥の差だよ」
 「僕は中内さんにはなりたくない。本田さんになりたい」
 だから、元気な中にリタイアしちゃったわけでしょ。いいお手本がいたわけさ。
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2 「シモネッタのデカメロン」
 田丸公美子著 文藝春秋 1550円

 著者はイタリア語の同時通訳者。でもって、身の回りの出来事を洒脱な文章で書くエッセイスト。
 というと、ロシア語通訳の米村なんとかさんを連想しますね。
 この2人、お友達なのね。
 で、どちらの本も面白い。
 面白いけど、エッチな箇所が多い分だけ、田丸さんの勝ち。

 まっ、しょうがねえじゃん。片やロシア、片やイタリアじゃ勝負になりません。

 わたしもイタリアは好きですなぁ。「前世はイタリア人」ってよく言われますもの。友人も多いしね。マカロニウエスタンも好きだったし、ゴッドファーザーも好きだったしね(ゴッド姉ちゃんは大嫌い!)。

 さて、この人、Fカップなのね。で、下ネタ大好き。というか、イタリア人とつき合うと、どうしてもジョークもそうなってくるし、誘いをうまくかわすには下ネタ混じりの切り返しが必要なのよ。
 だから、下ネタの帝王、いや、女王になってしまうのよね。

 「女にもてる最大の秘訣は、マメであること」
 外見やお金は二の次、三の次なのよ。これ、ホント。よく聞きます。接待王ともいうべき銀座のママさんたちだって、同じことを言ってます(まっ、本心はお金だと思うけどさ)。
 でも、一般的に言ってマメというのは大事だねぇ。

 たとえば、合った瞬間は、そんなにしつこく誘わない。けど、朝いちばんにホテルに花束を届けさせる。
 でもって、お礼の電話がかかってきた時、「ぜひご案内したい美術館があるんですよ」とさりげなく誘う。
 花束で舞い上がってるし、美術館という高尚な趣味がまたいいのよ。成功間違いなし。

 バレンタインデーだって、イタリアでは男性側からのプレゼントなわけ。
 これはいい。わたしみたいに毎年2月14日が来るたびに憂鬱にならないですむじゃないですか。だれからもらったかわからないから、整理券発行してるくらいだもの。

 あと、チャンスを徹底的に活かすということも大切。まっ、彼ら、女を見たら口説く。これがマナーだと思ってますからね。
 とびきり美人のある女性。間違いFAXが届いてしまった。これを知らせてあげたら、「大事なレターでした。来月、日本に行くので御礼します」と食事に誘った。
 で、これが縁で結婚へとゴールイン。
 これも縁なんですね。縁のない人って、物欲しげな顔で安売りしてても負け犬のままだしさ。縁のある人は、こんな縁でもゴールイン。

 イタリアで、「セックスが終わった直後、どうするか?」というアンケート調査がありました。
 17% 煙草を一服。
 13% 水やビールを呑む。
 11% シャワーを浴びる。
  3% そのまま眠る。
 53% 服を着て家に帰る。

 へへ、これ、最高。あなた、どれ? わたしは・・・です。

 そういえば、ポルノ女優で議員をやってるチッチョリーナという人がいましたね。いまもいるけど。
 この人、議員時代に10以上の法案を提出してるんですね。これはなかなか頑張ってます(数合わせのスケート選手とは違うんですな)。
 中でもいちばん力を入れてたのが、「売春の自由化」。これ、ようやく、昨年可決されました。1人または2人ならば、自宅で独立開業できるってわけ。つまり、管理売春はダメということね。
 政府の狙いは、もちろん、税収アップにあります。
 なんてったって、イタリアの地下経済はGDPの28%にもなるんですからね。ナポリじゃ半分ですよ。

 わたし、ネクタイを締めることはほとんどありません。講演くらいかな。
 でも、ネクタイ数本持ってます。すべてグッチとミラ・ショーン。すべてといっても、片手で足りるくらいなんだけど。

 ミラ・ショーンって、モンテナポレオーネ通りの名物マダムでしょ。元々、ダルマチアの貴族と結婚して贅沢三昧。けど、夫が事業で失敗してから、離婚。
 子どもを抱えて、どうしたか?
 ファッション業界に進出したわけよ。服はすべて、パリのオートクチュールで注文してたから目利きではあった。
 裏地のない一枚仕立てのスーツで一世を風靡。
 彼女自身、ショップとオフィス、自宅を毎日、行き来する際、3回も着替えをしてたわけ。
 「モンテナポレオーネ通りのファッションショー」と言われるゆえんです。

 ブラボー!
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3 「さすらいの女王」 中村うさぎ著 文藝春秋 1350円

 ご存じ、ショッピング中毒の女王。
 最近はNHKでホステス役などもしており、その活躍は目を見張るばかり。

 それにしても、この人、「実験型作家」「冒険作家」「自転車操業作家」と言っていいでしょうねぇ・・・。
 整形はプチ整形の域を超えてます。フェイスリフトから豊胸手術へと。また、ホスト狂い。
 そしてショッピングの女王へ。
 毎月、数百万円というお買い物を止められない。いや、買うのは自由です。けど、買ったらお金を払わなくちゃいけないわけ。
 で、カード払い。
 てことは、あとから「銀行引き落としの刑」が待ってるわけですよ。
 これが大変。カード払いのほうを優先するから、当然、税金、国民年金などは無視。だから、住んでる港区役所から差し押さえを喰らい、かつまた、役所の魔の手は出版社にも伸びた。
 印税差し押さえなど、さすがに取れるところからはガンガン取るという体質ですな。

 わかっちゃいるけど、止められない。
 これ、病気?
 いえいえ、精神安定剤がわりと考えれば、いいんじゃないかな。

 整形のスタートは2002年の秋。顔にメスを入れた。
 「次はオッパイだよね、と口では言ってたけど、あくまで冗談のつもりだった。オッパイが欲しいなんて、それほど切実に願ったことは若い頃から一度もない」

 けど、あるといいなぁとは思ってたのよね。
 いまさら大きく下トコろで、誰が喜んでくれるというのか?
 じゃ、20代だったら整形しただろうか?
 いや、しない。これは確実に忍び寄る老いへの恐怖。女としての賞味期限切れという過酷な現実を前にして、他社へのアピールではなく、自己確認というニュアンスがものすごく強いのね。
 で、45歳の女王様はシリコンパックを入れたというわけです。

 この人のモチベーションはすべてナルシシズムが根底にあります。
 たとえば、
 「なにかしらの才能を認められたい→作家という仕事の選択」
 「お洒落でハイソな女になりたい→ブランドの買い漁り」
 「若くてハンサムな男にチヤホヤされたい→ホストクラブでの遊興」
 「いつまでもグラマーな女になりたい→整形手術」
 一貫してますなぁ。

 ある意味、正直だと思いますよ。
 だって、これ、多かれ少なかれ、だれにでもある願望だもの。
 たいていの人は経済的な理由、羞恥心、やる気の問題、あるいは理性などがブレーキをかけるんです。けど、たがが外れたら、みな一緒でっせ。
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