2005年07月11日「世にも美しい数学入門」「即系物件 裸の渋谷少女たち」「定食バンザイ!」
1 「世にも美しい数学入門」
藤原正彦・小川洋子著 筑摩書房 798円
「博士の愛した数式」、良かったですねぇ。「セカチュー」「いま会い」よりずっとね。
この作品、もちろん、映画にもできますけど、芝居がぴったり。そんな感じ。
さて、この「博士・・・」の作者小川さんとお茶大の教授の藤原さんとの対談。内容は数式もそこそこ出てきますけど、基本的にユーモア感覚に溢れた会話になってます。
なぜって、これ、資生堂のトークショー「ワードフライデー」をベースにまとめられたものだから。
「博士・・・」って本、この藤原さんの「天才の栄光と挫折」というNHKの番組が閃きのきっかけだったらしいですね。
たまたま、見てた。世界中の古今東西の数学者の人生を語っていた。いわば、数学史のような講義だったんでしょう。
「数学でなくとも、みんな同じなんでしょうね。あぁいう天才というのは、峰が高いと谷底もまた深い」
どん底に落ちたときは何倍も深いどん底になる。
数学者の本質は、しつこいこと。執念深いこと。数学に向かうその意地というか、執念というか、持続力はものすごい。
だから、これが恋愛に向かうと不幸を招いてしまうわけ。
たとえば、ハミルトン。
19歳の時にキャサリンという女性に恋をする。で、失恋する。でも、ずっと思い続けるわけです。
そして26年経ってから、彼女の家のあったところを訪れます。
すでに廃屋になっている。かつて、彼女が立っていたであろう場所に黄昏の光が当たっている。
彼はそこに跪いてキスをするわけです。
「数学者としてはよくわかる。わたしも人が見ていなければそうする」だってさ。
藤原さんは父親が作家の新田次郎さん、母親は歌人の藤原ていさん。
以前、この人の本読んでたら、「父親はいつも悲壮な顔をして二階の書斎に上がっていった」と書いてましたね。そのくらい、つらい仕事なんだ。
さて、数学者がしつこいのは「天才の閃きでぱっと解けるなんてことはないんです」だと。
「純粋数学をやりながら、人類に役立つかどうかなんて考えてる人は、たぶん、歴史上、だれもいないでしょうね。だって、数学は圧倒的に美しいですからね。それに引き込まれてズタズタになってもいいから行く、という魅力があります」
藤原さんが数学者の道を選んだ時、教授からいわれてのは「フェルマー予想だけはやるな」というもの。
このあり地獄のような証明問題に取り組んで、あたら溢れる才能をほかのテーマにはなんにも使えずに死んでった数学者がたくさんいるんです。悪魔のようなテーマ。だけど、それって悪女の雰囲気があるから、見てみたい、触ってみたいと思うじゃないですか。怖いもの見たさみたいにね。
藤原さんも1カ月だけ取り組んでみた。「やっぱ、これ、無理」と気づいて終わり。
学問というのは、基本的にそんなものですよね。永遠に解けない知恵の輪にトライしてるようなところがあります。
だから、アートなわけよ。
MBAとかの「修士号」を取ると、そこに「アート」って書いてるでしょ。やっぱ、学問というのは芸術の一部なわけ。
アートという意味は、「実用」ではないということでしょ。だから、ケンブリッジ大学ではつい最近まで「工学部」ってなかったのね。これ、実用だから。専門学校の分野なのよ。
「アジアでもヨーロッパでもどこでもそうだけど、天才の出た所って共通してるんです」
どこか?
それはアートだからね。
1つはなにかに跪く心を持っているところ。神でも自然でもいい。
2つ目は、美の存在。美しいものを見ていないと数学はできません。想像力の世界だからね。野暮じゃダメなんだろうね、ホントはね。
3つ目は、精神性を尊ぶというところです。
つまり、お金などの物欲ではなくて、もっと精神的に高みにあるんです。
で、これら3つの条件を満たしたところでしか、天才は出現しないわけ。
たとえば、ゼロを発見したインド人。
とくに南インドは天才をたくさん輩出しています。とくに最南端のタミルナドゥ州は数学者のメッカみたいなところ。
ところが、ここ、汚いんです。
そこにラマスジャンという天才が出た。極貧だから、高校しか出ていない。独学で数学やってたわけ。
当時、イギリスが支配し、愚民化政策を敷いてたからね。インドなんかに数学のわかる人間がいるとは思わない。
彼はいろいろ論文をイギリスにおくるんだけど、完全に無視。
ところが、ある日、ケンブリッジ大の教授が目に留める。そして、驚くわけ。彼は苦労して、この男をイギリスに呼び寄せます。
ラマスジャンのすごいところは、毎朝、六個ずつ新しい定理をこの先生の所にもっていったということ。
「こんなこと言っても信用してくれないかもしれないけど、ナーマギリ女神が夢の中に出てきてボクに教えてくれるんだよ。朝起きると、言われた通りに書いているだけなんだ」と友だちに答えています。
やっぱり天才です。
で、こんな天才がこんな汚いところから出てくるわけがない・・・と考えた。そして、いつもの空港から訪れる道ではなく、不潔をガマンして南端まで行ってみた。
そこには、ものすごく美しい寺院がいっぱい! だて、ここ、11〜13世紀まで、チョーラ王朝が栄えたところなんですね。で、ラマスジャンはここでずっと勉強してたわけ。
なーるほど、「天才は栄えた頃にやってくる」ってわけか。
こんな話してたら、数学に関する映画を思い出さない?
そう、「グッド・ウィル・ハンティング 」ですね。マット・デイモンとベン・アフレックの共同脚本で、アカデミー脚本賞を受賞した作品。
名門大学で掃除の仕事してるウィルが黒板らに書かれた超難題。学生が束になっても解けない問題をすらすら解いちゃう。で、教授がスカウトしちゃうわけ。
「ビューティフル・マインド」もそうかな。
ラッセル・クロウが実際の数学者ジョン・ナッシュを演じた映画ね。古典経済学の祖アダム・スミスの経済理論をひっくり返す「非協力ゲーム理論」を証明した学者。才気の反対側にある「狂気」がみごとに描かれてますね。
ご関心があれば、これも数学つながりでどうぞ。
250円高。購入はこちら
2 「即系物件 裸の渋谷少女たち」
sanzi著 ミリオン出版 1260円
なんていっていいのかなぁ。まっ、今どきの若い女性をルポしたものです。
ていうか、女性といってもいわゆる、「即系」ね。
即系というのは、簡単にセックスに応じてしまう女性のこと。
たとえば、道を歩いてて、「ちょっとカノジョおぅ、みそ汁、飲まない」なんて軽い誘いにホイホイ乗って、そのまま、身体を開いちゃう人のことよ。
「面白いこと言って楽しませてくれたから、お礼に」
「わたし、高校卒業するまでに千人切り目指してるから」
「行くとこないし、セックスしないなら寝るよ」
こんなにイージーで、チープなわけ。こんな女、1人の人間というよりモノ。物件です。
で、渋谷ね、これが。
わたし、渋谷にはほとんど足を踏み入れません。
とくに山手線の外側、つまり、東急とか西武とかのデパートのあるほう。109側ね。道玄坂とか円山町とかね。
だって、うざいんだもの。街全体がね。あそこに東急文化村があるんだから、変なの。
著者は海千山千のナンパ師。渋谷をこよなく愛してる。
だから、この街に生息してる女の心が手に取るようにわかるのかも。
この猥雑な街を歩いてると、あっ、これは「即れるな」とビビッと来るのがたくさんいるわけ。
ナンパに引っかかる女に共通する仕事。
看護婦、美容師、そしてアパレル関係者だってさ。
どれも女の園で、仕事も不規則。休みも不規則。職場以外で男とつき合うチャンスがすくないとか、限られてるってことかな。
それともう一つ。地方出身の女子大生!
どんなタイプが即れるか、即られるか?
歩くスピードに注目。どこに行くでもなし、フラフラフラフラ。極端に遅いのよ。で、キャッチセールスの声にいちいち立ち止まる。
こんなのがナンパされちゃうわけ。
で、チープでコンビニエントなセックスをするってわけさ。
ナンパ師はラブホテルなどいちいち行きません。そこら辺のカラオケボックス。ここでやっちゃう。
いまや、この町では中学生が主役。もちろん、売春の話ですよ。エンコーとかいうけど、売春だもの。
高校生とかなると、相場がガクンと落ちてしまう。
お金がなくなれば、ケータイ1つでその若い身体をオヤジが買いに来る。便利だね。
カノジョたち、どうして即られるの? 好き者だから? お金が欲しいから?
それもあるだろうけどさ。
いちばんの理由は、心に不安定な何か、があるからさ。
満たされないもの。
詳しいデータをとったわけではないけど、「3割はリストカッターだ」と著者は推測しています。
家庭なんかとっくの昔に崩壊してる。
著者はナンパしてセックスすればそれでいいというスタンスではない。
「どうして、このオレに抱かれようとしているのか、そこに興味がある。そこをクリアできてようやく満足感を覚える」のだとか。
200円高。購入はこちら
3 「定食バンザイ!」
今 柊二著 筑摩書房 820円
こういう本、大好き。だって、わたし、ホームページで「B級グルメ探検隊」やってるじゃない。
でね、こういう本が出ると、すぐに買うの。情報を得て、そこに掲載されてる店に行くのか、というと行かないんだよね。
じゃ、どうして買うかというと、「あっ、ここ、知ってる」「あっ、ここも行ったことあるよ」と確認するためです。
「なんだ、オレの店のほうがずっと美味いぞ」なんてね、張り合ったりして。
「いい店、紹介してるね」というより、定番過ぎるんじゃないかぁ。王道を歩みすぎだよ、この著者。
といって、あまりにもマニアックでディープだと、売れないしね。困ったもんだね。
で、出てます。出てます。
いもや、キッチン南海、キッチンカロリー、さぽうる、熊ぼっこ、一歩、メルシー、センターグリル、梅もと、箱根そば・・・。実は、「B級グルメ探検隊」で紹介済み、あるいは紹介しようとしてデジカメで撮影済みの店もたっくさん!
けどさ、箱根そばなら、ぜひ、コロッケそばを紹介してほしかったな。これ、コロッケがいままで何回もリニューアル、バージョンダウン、けちくさいものに変わっていったという変遷があるんだよね。
オープン当時のあのカレー風味のコロッケはどこに行った!(最近のコロッケそばはコロッケを水分を多めにしてコストダウンしてるみたいだけど。ちゃんとしたの出せ!と言いたい)。
定食っていいよね。最高! ご飯大好き!
200円高。購入はこちら