2013年09月04日続きの続きの続きの税金の話。。。

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 昨日、一昨日の続きです。ま、税金については奥村眞吾先生と共著も出してるからいいでしょ。けど、あまりにも詳しくお話しすると逆についてこられなくなりかねませんからね。詳しくは原原でお話しします。

 世の中には裏もあれば表もありまんな。たとえば企業の資本金で実効税率が決められてますが、その通りに税金を収めている企業など、大企業ことに輸出企業にはありえません。

 経団連に代表される連結決算企業など実効税率は10%以下ですね。

 日本の法人税収を支えているのは中小企業です。この9月の「文藝春秋」に中央大学名誉教授の富岡幸雄さん(元国税庁職員)が発表してますね。「税金を払っていない大企業リスト」は評判になってます。

 原原の皆さんには1年前にお話しましたね。もっと詳しいデータをご紹介しました。

 連結決算の大企業は海外展開の恩恵にあずかり、少ない税負担で許されてきました。株の配当は課税所得から除外されてますし、法人税制では、企業が他社の株式を持っていてもその受入配当は益金に参入しないでもいいんです。景気が上向いて収入が増えても、繰越欠損があれば課税所得は増えません。

 税引き前当期純利益と法人税収の間には大きな乖離があるわけです。

 それにそれには輸出企業への還付金。これが大きい。これについても1年前に講義でご説明した通りです。いまごろ話題になってます。

 消費税つうのは、そもそも部品などの製品が譲渡されるたびに各段階で5%ずつ税金を納めるものですね。利益ではなく売上にかかってきますから赤字企業でも納めなければならない。予定納税制度なんてふざけたものがありますから、なんらかの事情で売上が上がらなくても、昨年度分の消費税納税分を納めなければならない。もちろん、後日、還付されますけどね。

 これがカラクリなの。

輸出企業にはたくさんの下請けがあります。国内の下請け企業が100万円の部品を輸出企業に納入。100万円+消費税=105万円を下請け企業に払います。下請け企業は受け取った消費税を納税します。

 輸出企業は海外に輸出します。海外で販売した場合、日本の消費税を課せません。つうことは、消費税分5万円が宙に浮いちゃう消費税は最終消費者が負担する税金です。そこで国は輸出企業に消費税を戻せる=還付金制度を用意したわけですね。別名、「輸出戻し税」です。

 いったい、この消費税還付金=輸出戻し税はどれだけあるのでしょうか?

 上位10社だけでも8000億円。トータルではなんと年間3兆円。直近の消費税収が12.5兆円ですからいかに大きいかがわかります。

 還付金制度は一つの補助金ですね。もし消費税率が引き上げられたら、たとえば現行5%が10%になれば、売上が同じなら消費税還付金は「倍返し」になりますね。つまり上位10社で1.6兆円。トータルでは6兆円。消費税に換算すれば、2.5%分です。

 道理で経団連が消費税率アップに賛成するはずです。

 この還付税制度について、原原メンバーにお話すると、「まともに税金を払う気がしなくなります」といいます。その気持ちはよくわかります。

 けど、わたしは輸出企業が恩典や特典にあずかってもいいと考えています。

 国内で経営することも大変ですが、世界を相手に戦うのは過酷ですよ。プラザ合意でアメリカに押し切られ、ただでさえ突然の円高で構造改革を成し遂げざるをえなくなり、結果、日本を脱出せざるをえなかった。いままで政府は輸出企業になにをしてくれたんでしょうか。

 日本以外のほとんどの国はエネルギーの割引料金や研究開発費の全額税控除など、考えられる限りの特権を与えています。そうやって外貨を稼いでもらっているんです。

 最たるものが韓国です。輸出企業のために為替誘導までしてきました。サムスンなどおもしろいことに営業利益と純利益がほぼ同じです。還付金が納税額を上回っているからでしょうね。

 ここまであからさまにする必要はありませんが、日本政府は輸出企業をもっと大切にしなければいけない。輸出企業が元気でなければどうなるか?
 従業員数にしても協力会社を含めて桁違いに裾野が広いんです。輸出企業の市場は1億2000万人ではなく71億人です。

 いままで海外からジャパンマネーが環流していませんでした。ようやく「外国税額控除制度」が見直されて海外子会社から親会社が受け取る配当は全額益金に不算入(国外所得免税)とすべき、という法案が成立しました。これで一律95%算入しないで済みます。「法人間配当無税制度」も完備されました。おかげで某社の受け取り配当金はこの6年間で2兆3000億円です。

 輸出企業は研究開発と技術開発でしのぎを削っています。すべての法人のうち0.3%で1000万人を超える従業員を抱えているんです。99.7%で5000万人とは問題になりません。

 いま、日本の不景気を一身に背負っているパナソニックやシャープがさらにどん底に落ちたら従業員はリストラ、協力会社は倒産。その従業員たちは職を失ってしまいます。パナソニックやシャープでもそれぞれ200万人に影響を与えます。しかも日本の協力会社はパナソニック一筋、シャープ一筋というケースが多いんです。1社が不景気になると景気が戻るまで歯を食いしばってがんばってしまうんですね。

 日本の輸出依存度は15%しかありません。日本は内需国家です。しかし内需企業は輸出企業に比べて厳しい競争にさらされていません。生産性はそれほど高くありません。輸出企業は生産性が高くなければ競争に負けます。

 生き馬の目を抜く修羅場で戦っている輸出企業をその他大勢の企業と同じ次元で考えてはいけないんです。

 輸出企業は日本社会を安定させる軸です。軸がはずれては日本社会そのものが崩壊してしまいかねません。還付税などの恩典など安いものです。

 それに大企業優遇、中小企業冷遇と小児病患者は叫んでいますが、実は零細中小企業にも税の恩典があるんですよ・・・それは明日お話ししましょう。


 さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『大韓民国の物語 韓国の「国史」教科書を書き換えよ』(李榮薫著・文藝春秋)です。詳細はこちらからどうぞ。