2005年05月30日「伊勢丹な人々」「お笑いの世界に学ぶ 教師の話術」「タレント力」
1 「伊勢丹な人々」
川島蓉子著 日本経済新聞社 1575円
伊勢丹って、百貨店の中でもちょっと違うよね。
たとえば、三越(日本橋店)とか高島屋とも違うし、男から見るとぜんぜん違うかも。
元々、百貨店て女性がいくとこだったじゃない。それが証拠に、たいていの店では紳士物はせいぜいワンフロアしか扱ってないでしょ。
それが伊勢丹は「メンズ館」という形で、一棟まるまる紳士物。大学生の愚息など、買い物ははいっつも伊勢丹だもの。
わたし?
わたしはいろいろ。あっちこっち。というか、あまり気にしない。あるものを着る。なければ、同じものをずっと着てます。
さて、伊勢丹。
といえば、新宿でしょ。
1933年9月オープン。アールデコ調の建築ですよね。
けど、元々は、1886年、神田明神下の旅籠町に伊勢屋丹治呉服店として産声を上げたわけ。
もちろん、歴史の長さでは、三越、高島屋、白木屋(いまは無き東急日本橋店)のほうがずっと上。
どこも呉服屋さんというスタート。中国の呉の服を売ってたんですね。
で、対抗企画として、1909年に「帯の展覧会」を仕掛けたわけです。帯は服飾美の中心、女性の精神を象徴するものだ、という提案です。
これが大成功。
服は着られればいい、身につける物ではなく、精神をまとう物、人間性そのものだという切り口ですね。
いま、売上は三越に次いで二位。けど、衣料品に関してだけ言えば、トップ(1255億円)。
伊勢丹に行けば、なにかやってる。なにかある。たとえば、子供服でも愚息はヒステリックを着てたんだけど、値段とデザインでいったらシップスのほうがリーズナブルでベター。
これ、置いてるの、伊勢丹くらいでしょ。銀座松屋にもあったっけ。
1985年、百貨店としてははじめて、DCブランドばかり集めた「シンデレラシティ」を開設。細い通りの両側にブティックがずらり。原宿を練り歩く楽しさを提案したわけ。
売場中央には、服だけじゃなくて、アクセサリーとか靴、バッグを並べた自主編集売場も作った。
いま、どこでもファッション雑貨が人気の的でしょ。もう、この時、仕掛けてたのよ。
「おもちゃ箱をひっくり返した」ような売場ね。
これがピュアヤングに受けた。というか、受けるように作っていった。
ピュアヤングってのは、16歳から22歳くらいの世代。当時で言えば、ばなな世代。
三越、高島屋って、マダムの店ってイメージだけど、伊勢丹はもっと若いよね。せいぜいOL、若妻とかね。
お母さんは三越、女子大に通ってる娘さんは伊勢丹てな感じ。
1990年、あのバーニーズと提携。いま、資本関係は解消されてるはずだけど、運営はまだ伊勢丹がやってるはず。
あの福助の藤巻幸夫さんがバイヤーとして出向した店ですね。
わたしの地元にもあります。最近は銀座の交旬社ビルにドーンと構えてるけど、やっぱ、最初は新宿。歌舞伎町を背中にしたところに、ドアマンまで配してちょっと違う雰囲気を醸しだしてました。
この店、ちょっと敷居が高いというか、お客の筋が違います。パンピーは近寄れない雰囲気がありますものね。「あたしぃ、バーニーズ、大好き」なんて言ってる娘がいますけど、おそらく、店員から相手にされてないと思うよ。
百貨店というと、どちらかというと、デパ地下の企画先行というイメージがありますよね。あるいは、物産展とかね。
北海道物産展なんて、どこでもやっぱり人気があるし、だから、集客力も強いしね。
けど、基本は「店としての提案力」が、どれだけあるかという一点に尽きると思うな。これがベースにあってこそ、シャワー効果も噴水効果も期待できるんであってさ。
やはり、店としてのパワーを鍛えないと厳しいよ。
伊勢丹の強みというものがもしあったとしたら、「55%攻撃論」かな。50%の成功率だと思ったら上司に相談する。55%だとオネったら、自分で判断する。そして、企画し、行動するっていう文化ね。
これ、大切です。そうは言っても、現実的には、おそらく55%と50%の間でどうするか。やっぱり、上司の顔色を見ながら、これはできそうかな、周囲から応援してもらえそうかなと逡巡するはず。
けど、「進化」「革新」に取り組む文化というか社風が根付いていれば、きっと55%と判断する人材が増えてくるはず。この勢いが百貨店には大切なんだろうね。
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2 「お笑いの世界に学ぶ 教師の話術」
上條晴夫著 たんぽぽ出版 1470円
教師って大変ですね。
超名門中学、小学校でもいまや、学級崩壊は当たり前。というか、つまらない授業なんか聞いてられませんよ。
わたしなんか、教師のレベルでやる気が起こったり、失せたりしたもの。
「あっ、こいつ、教え方、下手。こんな下手な授業なんか聞いていられない」なんてね。
そこを救ってくれたのが塾であり、予備校だったわけ。
プロの教師って、授業がうまいもの。
うまいという理由は、勉強になる。すなわち、役に立つ。飽きない。これがいちばん大きいかな。つまり、最初から最後まで聞かせる力があります。
ということは、授業のシナリオがしっかりしているということ。そして、演じる教師が巧いということですね。
シナリオとパフォーマンス。これが面白くて、ためになるから、聞かなきゃ損だとなるわけです。
昔のように、きちんと聞くべきだなんて子ども、いないと思うよ。つまらなきゃアクビも出るし、聞いてないもの。
それを子どもの責任にしたのが「学級崩壊」という言葉。
正確には、「教師失格」「教師不在」「授業崩壊」ということでしょ。
使い古したテキストを、来年も再来年も使い続けていくというマンネリ姿勢が子どもたちには見えてるんだろうな。だから、つまらない。
子どもたちは黙っていても成長するし、進化していく。教える側の教師はたんに大人という理由で、教える立場にいる。けど、成長も進化もしない、というのでは、だれも聞こうとはしないでしょう。
本書は、そんな崩壊した授業をどうすれば再生できるか、子どもたちに聞く耳を持たせることができるか。それを「お笑い」という切り口でアプローチした本。
「現状を切り開いていきたい」「変えていきたい」という熱い教師が現場にいることに感動します。
著者の本は、昔、「明石家さんま先生の何とかかんとか」という内容の本を読んだことがあるけど、あれはさんま一色。今回はいろんなお笑い芸人のケースを取り上げて、授業に取り入れられるノウハウを紹介してます。
たとえば、レギュラーの「あるある探検隊」とかね。これは授業のネタとしても使えます。
変身衣裳を着て授業をするとかね。ギター侍の格好でやった教師もいたそうです。これはガキには受けるかもしれません。けど、わたしのようなマセガキというか、人生を斜に構えて見てるようなガキは白けるだけですね。
「ここまでやって受けたいわけ?」
「まっ、十分くらいなら聞いてあげようか」ってなもんですな。
その他、爆笑問題とか、紳助ネタとか、ビートたけし、タモリとか、いろんなお笑い芸人のノウハウを授業に導入しようと努力してます。
この努力がなんか涙ぐましいね。
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3 「タレント力」
眞邊明人著 ダイヤモンド社 1575円
著者は元々、吉本興業の社員だった人。
いまや、その時のノウハウを活かして、タレントスクールの校長さん。映像作家とか芸能ブロダクションを経営したりしてる人です。
で、タレント力。
売れてる人って、どんな世界でも、みな、タレントですよね。
オフィスにもたくさんいるでしょ。
「タレントに必要な力とは、人を惹きつける力。人の支持を得る力。平たく言うと、人気を得る力。それを身につけるには、自分を商品に見立て、しっかりマーケティングをして、戦略を練ることが必須」
「タレントには他の人とは違うなにかがあり、そのことを周囲が認知しているからスゴイのである」
「違いは優劣ではない。オリジナリティだ。オンリーワンだ」
「タレント力とは、自分がなりたいものになるのではない。他人の自分に対する期待に応える力だ」
「タレント力とは、あくまでもマーケットに即したキャラクター作りを目指すもの」
「歌手なの? 俳優なの? なんだかよくわからない。これはあとイッポ君。演歌一筋三十年といった人のほうが有利」
「キャラクターは他人が決める。その典型はあだな」
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