2003年01月13日笑う門には福来たる

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寄席は今日も超満員だった


 久しぶりに寄席に行ってきました。

 年末から松の内までまったく動きが取れなかったんです。クリスマス、大晦日、元旦、正月をまったく感じることなく、テレビもラジオも見ることなく、ひたすら、書斎にこもってました。

 いったい、何を食べていたかも記憶には残っておりません。親戚の子供たちへのお年玉もすべて郵便為替で処理する有様で、やっと動き出したのは先週末からでした。

 正月というのは1月のことですから、ちょっとずれてますけど、寄席に行こう。そう決意し、と言うほどのものではありませんが、行ってきました。新宿末広亭。

 昔は、しょっちゅう、行ってたんでゲスよ。ここでしょ、浅草演芸ホールでしょ、改築前の池袋演芸場、それになんと言ってもいちばん好きな上野鈴本ね。日本橋には永谷演芸場もあるしね。

 混んでました。超満員。相撲じゃないけど、満員御礼。わたしが入って、ちょうど満員になりました。二階のいちばん奥でしたもの。

 この正月シーズンの初席(元旦から十日目まで)、二の席(中席・中旬ということ)というのは、芸人がもっとも忙しいですから、出演プログラムなんてあってなきが如し。

 目当ての歌丸さんはいないわ、昼に変更になってるわで大変。

 でも、新しい芸人さんを発見できて、これはこれで良かったな。やっぱり、ライブを見ないとダメだね。

 綾小路公麻呂もいいけどさ。


コンピタンシィが無いと生き残れない

 わたしが好きなのは、実は円楽さんなんです。あの人情モノ、大ネタが好きなんです。とくに「中村仲蔵」がベスト。

 これって、荒俣さんが脚本書いて、先日、上演したんですよね。

 それと小三治さん。「通勤快読」でも紹介した通り、柳家小さんのいちばん弟子。柳家一門の重鎮。趣味は幅広く、まくらが抜群。

 若手から中堅では桂歌春さん、古今亭寿輔さん、柳亭楽輔さん、昇太にしたって、もう二十年のキャリアですよ。

 正月興行で、たとえば、落語協会、芸術協会とそれぞれ十日ずつやりますね。どちらも、いちばん客が入ってる時ですから、ここぞとはがり、一門の芸人を次から次へと出してきます。

 どれも面白いんです。創作落語でもないかぎり、話は同じです。でも、まくらは全然違う。雰囲気というか、テイストが違う。するってぇと、同じ題目を扱っていても、演者によってガラリと変わります。面白くもなれば、詰まらなくもなる。同じ話でも天地の違いが出てくる。

 そこが「味」なんですね。つまり、落語の味付けが違うってことですよ。同じ魚でも、刺身と煮付けでは味が違いますもの。もちろん、フランス料理と懐石ではまた違う。ソフトウエアの面白いところです。

 とくに、このシーズンのようにどんどん芸人が出てくると、ちょっとやそっとの力では覚えてもらえません。つまり、ひいきにしてもらえないってことです。

 では、何がいちばん魅力になるか?

 個性なんですね。「あの落語家はほかの芸人と違う」ってどれだけ感じさせるか。寿輔さんなんて、その最たるものですもんね。歌春(前座当時の桂枝八ですよ)さんは落語会のイケメンとして知られてましたけど、もう中堅。もう若くないからね。これから、また一皮むけないとね。

 ほかの人と違う。個性が輝く。キャラが映える。これって、「コアコンピタンシィ」ってやつてしょ。余人を持って代え難し、ということですもの。

 落語はいま、少しずつ盛り返しています。正月だけのシーズン演芸ではありません。

 構造不況業種に陥ったのは、スターを作ってこなかったからですね。資格制度が足かせとなった。かつての三平のように、客が呼べたら二つ目だろうと「トリ」をやらせたらいいんですよ。

 伝統ということに胡座をかいていると、補助金を受けないとやっていけない業種になっちまいますよ(ホントはいくつかの興業には補助金出てるんだけどね)。

 まっ、どん詰まりになちまうと、もう笑うっきゃありません。笑う門には福来たる・・・となればお慰み。