2002年10月14日ノーベル賞に思う

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株価上昇? 逆じゃないの!


 でましたね。ノーベル賞。物理学と化学、両方での受賞です。

 一人は物理学賞の小柴昌俊さん(東大名誉教授)、そしてもう一人は化学賞の田中耕一さん。

 とくに田中さんは学士号しか持たず、島津製作所の現役社員、しかも研究のために昇進試験も受けず、いまだに主任のままという「世紀のサラリーマン・ノーベル賞科学者」とは驚きです。

 まだ、こんな待遇してる会社があるんですなぁ。

 受賞の報道があってから、株価がぐんぐん上がったというけど、それって逆じゃないかなぁ。

 天才を埋もれさせてたわけでしょ?

 目利きがいなかったってことじゃないの?

 彼のの技術は85年にすでに開発済み。で、2年後に発表したんですけど、正当に評価したのはアメリカの研究者だったんですね。おかげで欧米各国に広く紹介されることになり、陽の目を見たわけです。

 研究開発ってのは、開発者はもちろん重要だけど、そのテーマ、内容をきちんと評価できる人がいるかどうか。そういう風土があるかどうか。これも同じくらい重要なんですね。


偶然を必然に転換せよ

 田中さんの研究は、タンパク質の精密分析を可能にするもので、ガンの早期診断や個人の体質に合致した新薬の開発など、今後よりいっそうの技術開発を急展開させるものと言われてます。

 ところが、この成果には実は「偶然の失敗」が決定的な主役を演じていたのだ、というじゃありませんか。

 「二つの物質を混ぜるつもりはなかったが、間違ってしまった。放っておいたら、従来の測定方法ではできないものが測れた。ひょうたんから駒というか、失敗は成功の元だ」

 いったい、これはどういう意味か?

 入社三年目。実験で高分子の試料にコバルトの粉末とグリセリンを別々に分析しようとしてると、グリセリン(液体)がこのコバルトに垂れてしまった。捨ててしまうのももったいないからそのまま分析すると、思いがけずに測定できちゃった。

 すべては幸運な失敗からはじまったんですね。

 田中さんの受賞は、二重、三重の偶然が重なり合ったものかもしれません。

 偶然のことを、人は「運」とか「ツキ」と言いますが、運にせよ、ツキにせよ、偶然にせよ、実はわたしたちの周囲をいつも飛び回っているんじゃないですか。気づくか、気づかないか、つかめるか、つかめないか。すべて個々人の力にかかっていると思うんです。

 偶然を活かす力、偶然を呼び起こす力、偶然を連続して引っ張り出す力・・・この力が強ければ強いほど、その人は「天才」と呼ばれるんでしょうな。

 日本企業の研究者もたいしたもんだよ。