2005年04月11日「サクラ、サク」「真実の言葉はいつも短い」「いい人は成功者になれない!」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「サクラ、サク」
 藤原和博著 幻冬舎 1260円

 著者は元リクルートのフェロー。で、二年前から杉並区の和田中学校というところで校長先生をしてます。
 つまり、ビジネスマンが教育者になっちゃったというわけ。
 てなわけで、本書はそんなキャリアを持つ著者が、たとえば、中学生が1年だけ校長をやった。その中でいろんなことをする。
 「経営という観点から考えれば、それはこんなことだよ」
 マネジメント用語をなるべく使わないでマネジメントを教えよう、という作品になってます。
 NHKの「課外授業」の中学生版といったところでしょうか。
 マネジメント用語をバンバン使っても中学生なら理解できるでしょうけど、それじゃつまらない。編集者はおそらく、「13歳のハローワーク」+「あたりまえだけど、とても大切なこと」を足して2で割ったような内容を狙ったのではないかな。

 子どもたちに、「会社ってこんなとこだよ」「学校でやってることも会社でやってることと変わらないよ」と伝えよう、とする気持ちが伝わってくるような気がしますね。

 先週、新宿で会った時にご贈呈頂きました。
 「世界一やさしい経営の教科書」って帯コピーにも書かれてます。この「やさしい」は「易しい」ではなく、「優しい」と理解してもらうといいかも。
 200円高。

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2 「真実の言葉はいつも短い」
 鴻上尚史著 光文社 780円

 著者のエッセイはほとんど読んでます。昔からのファンです。
 なんというか、「ユーモア(ウイット)+哲学+意地」みたいのがあって、気分は学生演劇のままだからいいね。

 わたし、第三舞台、好きなのね。芝居、ミュージカルは国内外を問わずにそうとう観てるはずだし、大衆演劇から歌舞伎、狂言、オペラもカバーしてると思う。で、その中でも第三舞台はいいね。

 普通、座長が有名になると劇団もメジャーになって有名になり、俳優も食えるようになり、テレビにそれぞれガンガン出たりする。
 当然、チケットも簡単に完売。
 けど、肝心の芝居といえば、これがどんどんどんどん、ドンドンドンドンつまらなくなっちゃってるケースがあります。

 だれとは言いませんが、たとえば、料理番組やバラエティ番組の司会から映画まで幅広くこなしている方の劇団。
 これ、つまらない。
 最初から最後まで、あまりのつまらなさに恥ずかしくなってしまったことがあります。「笑わない」「笑えない」を超えると、「恥ずかしくなっちゃう」のよね。

 この人、若手お笑い番組の司会もしてるんだけど、これ、明らかにキャス・ミス。
 せっかくドラ・ドラやインパルスが盛り上げてる「笑いの空気」を、この人がしゃべったとたん消しちゃうの。これね、波長が違うのよ。笑いの波長が。
ツービートが登場してきた時、コント55号が頑張ってるようなもので、見てるほうが辛くなるというか、悲惨さを感じちゃうわけ。

 で、第三舞台はそれがない。
 どうしてかなぁ、どうしてだろう。考えてみましょう。

 さて、鴻上さんの本はもったいないことにほとんどが絶版なのよ。ほら、この人、どういうわけか、時事ものが多いからさ。で、その中でまだ使える内容、普遍的な話を総まとめしたのが本書というわけ。

 やはり、おもしろい。頭だけで書かれた本じゃないね。
 ジョジョ・マッコイの発言を引用してる部分があって、これが笑える。

 「理屈を言う女優に美人はいない」
 「演技とは悪魔憑きのことだ」
 「意味を伝えるのではない、意味の裂け目を伝えるのだ」

 「女の出世は速い!」
 ビートたけしさんが言ってました。昨日まで「片岡鶴太郎さん」と言ってたのが、タケちゃんと一回寝ちゃうと、翌日にはもう「鶴ちゃん」になってる。
 「女にとって知識、技術、体力だけじゃなく、カラダも立派な武器」

 演劇という世界でも(どこの世界にもいると思う!)、この武器をフル活用して成り上がっていく人がいるそうです。
 けど、こういう人は凋落もものすごく速いそうです。
 その場合、「片岡鶴太郎さん」というレベルにもとどまれません。あっという間にもっと下に転げ落ちてしまうわけ。

 理由は、それだけのスピード出世に耐えうる器がないからです。
 「器」ってなにか?
 一晩経っても、「鶴ちゃん」じゃなくて「片岡鶴太郎さん」という世界にとどまろうとする謙虚さかな。
 250円高。
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3 「いい人は成功者になれない!」
 里中李生著 三笠書房 530円

 はじめてこの著者の本を読みました。カメラマンでもあるし、作家でもあるという人です。競馬本で当てたらしいですね。テレビにもよく出てるそうです。
 硬派でカッコつけずにガンガン本音で話してるところがいいですね。

 いい女と悪い女を選別する目がなんとシビアなこと。男の生き方にロマンを持ってる感じ。
 今時、少ないね、こういう人は。
 いわば、「王様文庫の高倉健さん」と言ってもいいでしょう。

 いろいろ経験した人じゃないと、言えない発言ですな。
 たとえば、裏切る人間はあなたを見ている。あなたが貧乏で力のない男だとわかっているから裏切る。金があり、人脈に富み、精神が強靱に見える男を裏切ろうとはしない。反対にやられてしまうと恐れるからだ。強い男は裏切られないのだ。
 たしかにそうだよね。だれをリストラしようか、社長も上司もよく見てますし、性悪の女はだれを、どのくらい騙してやろうか、手ぐすね引いてますよ。
 こんな箴言がたっぷり。
 200円高。
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