2005年04月04日「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」「人をつくるという仕事」「叱る、だけど怒らない」
1 「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」
山田真哉著 光文社 735円
さおだけ屋ねぇ、さおだけ屋。よく車で通りますね。
「さおやぁぁぁ、さおだけ」なんて、マイクからテープ回してね。
会計士の立場から、管理会計をわかりやすく教えるためにあの手この手で解説してくれた本です。
利益を生み出すには二つの方法しかありません。
売上をガンガン上げるか、コストをビシビシ下げるか。このどちらかです。
さおだけ屋がそんなに繁盛してるようには見えないのに、どうして食えるのか。不思議でしょうがない。
実は近所の金物屋さんが商品の配達をする時、「ついで」にさおだけを積んで売ってるわけですよ。売れなくてもいいし、売れたらラッキー。つまり、本業のほかに副業としてさおだけ屋をやってるってわけです。
これはコストがかけず売上が増える方法ですね。
で、本業と副業との関係ですけど、これはバラバラにしてはいけないんです。お互いがリンクしてないとダメ。相乗効果がないとね。金物屋でもさおだけを売るけど、どうせ配達するなら、さおだけを荷台に乗せてついでに売っちゃう。これって相乗効果ですよね。
ビジネスマンってのは、自社にとって相乗効果の高いビジネスはないか、自分の技術を活かせる新規事業はないかって常に考えてるわけ。
利益をばっちり出すには、価格を高くするか、下げて大量に売るか。このどちらかしかありませんね。
高くして売るのなかなかむずかしい。下げる売るなら、大切なのは大量販売、つまり、回転率に注目することですね。
映画なんて、2時間もの、4時間ものでは回転率が全然違ってきます。2時間ものなら1日に5回転できても、4時間ものだとせいぜい3回。これで売上は一挙に4割減ですよ。となると、コストが同じなら利幅はガクンと減っちゃう。
対策を考えないとね。
たとえば、クェンティン・タランティーノ監督「キル・ビル」って映画。これ、元々、長時間(四時間以上)の一本の映画だったのね。
あまりにも長くて映画館で回転させられません。だから、「キル・ビル1」「キル・ビル2」と分け、2003年〜4年と別々に上映したんです。
で、パート1は「復讐」、パート2は「愛」を売りにし、まるでシリーズもののようにして売ったわけ。おかげで、ボロ儲け。
さすが!
200円高。
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2 「人をつくるという仕事」
テリー伊藤・木村政雄著 青春出版社 1470円
あの天才プロデューサーのテリーさんと、あの吉本の木村さん。この2人が人材育成についていろいろ語り合ってます。
就職活動でも、「有名企業に入りたい」っていう学生は多いけど、「俺はこれがしたい」っていう人が少ないって嘆いてます。けど、これっていつの時代もそうなんだよね。「有名企業に入って、こんなことがしたい」っていう学生は少なくないと思うんだけどなぁ。
では、どんな人間を採用するかというと、ちょっと前までは「俺と感性がすごく違うヤツ」(テリーさん)。最近は「あぁ、昔の俺みたいだなぁってヤツ」。
そこに昔の自分を見てるみたいなね。すると、「俺ももう一度、頑張るぞ」と発奮できるらしい。
つまり、昔の自分タイプを採用するようになったら、マインド的にはもうジジイになっちゃったってことです。
芸人でも、ストライクゾーンが広い人と狭い人がいます。広くウケる人、ある部分にはまると爆発的にウケる人ね。
「マネジメントしてると、後者のほうがおもしろい」(木村さん)
みんながいいと認めてる人って、売るのが楽だからおもしろくないのよね。プロデューサー冥利に尽きるってことがないもの。
吉本興業で常務になった時、木村さんが最初にしたことは、アルバイトも含めて東京事務所にいる社員全員との面接。百人くらいだったらしいですけど、聞いたのは「これまでやってきたこと」と「これからしたいこと」の二つのみ。
「これまでやってきたこと」というのはアウトプットですね。全員の個性、適性を知って、できるだけやりたいことをやらせてあげる。やりたいことやってダメだったら、本人も納得できますもの。
いずれにしても、会社というのは育つ場を与えているだけで、人というのは勝手に育っていくものです。とくに、芸人のようなスペシャリスト、プロフェッショナルの世界は年収5千円の人間が数億円に大化けしちゃう世界ですからね。
150円高。
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3 「叱る、だけど怒らない」
永六輔著 光文社 530円
好きなんです、永さん。バランス感覚がいいからね。
これは、ちょっとした箴言集、名言集てな感じかな。
たとえば、「学校では目標を設定してそれに向かって努力せよ、と教えすぎるから、失敗したときに辛い思いをする」と玄侑(宗久)さんは自分の体験から言います。
「人生に目標なんて立てられない。立ててもすぐに失敗することが当たり前。寄り道のなかで楽しさや意義を見いだしていくような人生こそ、意味があるのだと思う」
「涙は人を優しくする。汗は人を強くする。これがわたしの信念なんです。たしかに、桂小金治は出演料に目がくらんだ。しかし、落語を失いたくないという気持ちは持っています」
ちょっと解説がいるかな。
泣きの小金治といわれた名司会者ですね。元々、落語家だったのよ。永さんも大ファンだったの、それがいつの間にか、司会者とか映画の世界に行って大成功したんです。落語に比べると、出演料はとんでもなく良かったからね。
で、永さんはがっかりしてたわけ。ところが、この人、還暦、喜寿の独演会で落語を披露した。それがめちゃくちゃいいわけよ。
実はいも稽古してたんですね。師匠のところに小金治という名前を返そうと一時、相談したこともあります。その時、普段は優しい師匠が激怒したんです。
「小金治という名前はわしが与えた名前。取り上げるというならわかるが、おまえが返すとは生意気だ!」
これ、正論。で、激励でもあるんですね。
「季節の区切りを、暑さ寒さも彼岸までと言いますけど、あれは別の説明として、生きているから熱いだの寒いだのと言ってられる。暑さを感じるのはあの世へ行くまでのことにすぎない、という考え方からきています」
なるほど。
150円高。
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