2005年03月14日「人は仕事で磨かれる」「学はあってもバカはバカ」「間違いないっ!」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「人は仕事で磨かれる」
 丹羽宇一郎著 文藝春秋 1365円

 著者は伊藤忠商事の経営を立て直した経営者。
 普通、そういう人は社長を延々と続けるとか、社長を退いても「実力会長」としてずっと君臨するというケースが多い。おそらく、この人も財界でそんなになるとコックリコックリ見てきたんでしょう。
 「老醜をさらしてるな」と苦々しく思っていたのかもしれません。

 「ボクがボケはじめる前に、このままじゃダメな時はダメだと注意してくれよ。そしたら、さっさと後進に道を譲るから」
 「はい、わかりました」
 で、いよいよこれじゃダメだと感じて、ご注進に及ぶと、すでに権力欲にボケた後。
 「生意気なことを言うな」と直諌した部下は左遷・・・ということも少なくありません。

 この人は社長就任時に、「黒字になるまで給与返上」「電車通勤」を明言するとともに、「六年後には辞める」とも。
 で、今年、完全に引退する腹づもりのようですね。
 役員会にも出ない。いまの社長と二頭政治になてもダメだからね。

 しかし、満員電車に揺られ、雨の日など濡れ傘でぐっしょり・・・という経験をずっとしてきたらしいよ。
 でも、生来、細かいことは気にしないタイプらしく、あまりエリート風を吹かせない人のようですな。

 伊藤忠商事がどん底時に、この人が社長として登板することが決まった時、必ずこの会社は復活すると確信しましたよ。だって、覚悟が違うもの。
 あと、スピードね。

 この人は言行一致が持ち味なのよ。
 「言ったことは必ず実行する。しかも、早く行動する。たとえば、一回、わが社の人間をお宅にお邪魔させます、と言ったら三日後には行くように指示します。一週間後ではダメ。三日以内です。そうすると、相手は非情に強いインパクトを受ける。こんなに早くアクションを取ってくれるのか、とそれだけで信用してもらえるんです」

 「わからない時は半分切れ」
 これがこの人の相場観。
 九八年三月期に千四百二十八億円の特別損失を計上しました。この時、著者の性格だと、もっと早く徹底して処理したかったはず。
 けど、当時はまだたんなる業務部長ですから、そんな意思決定ができるポジションではありませんでした。
 で、会議で持論の「半分、目をつぶって切るべし」とやったわけ。
 「このバカ野郎!」と副社長は烈火の如く怒る。
 けど、結局、翌年には三千九百五十億円という不良債権を処理することになったわけ。

 会社の経営では、「怪我をしないですむように」と考えてはいけないの。これではいずれ重体になってしまう。
 怪我をしてもできるだけ軽傷で済ませるにはどうするか・・・を考える。これが経営なわけ。
 だから、できる範囲内で思い切って処理すること。これがポイントなのよ。

 商社マンとしての人材の見極め方として三つのポイントがあります。
 まず、「自分の意見をはっきり言える人」であること。
 次に「お客様からの評価が高い」こと。
 そして最後は「お金の匂いがする」こと。これ、おもしろいね。けど、重要。ずっと儲けてきたという実績があるってことですね。
 異動したとたんに儲かり出したりね。ツキもある人間ということですな。
 250円高。
購入はこちら



2 「学はあってもバカはバカ」
 川村二郎著 かまくら春秋社 1470円

 著者は「週刊朝日」の元編集長。
 朝日新聞といえば、大臣就任の所信表明の時、「靖国参拝は?」といつも突っ込んで踏み絵をさせてる印象ばかりが強いのよね。
 心情左翼が多いためか、北朝鮮礼賛の報道を熱心にしてた過去からか、この本もかなり朝日人特有の匂いがついてるのかな・・・って思ってたのよ。
 読んでみると、「この人、サンケイ新聞?」と間違えちゃうほど小気味がいい。いわゆる、建前じゃなくて、本音ズバズバって感じ。
 そういえば、うち、朝日新聞もとってるけど、毎週、「アエラ」と「週刊朝日」も配達してもらってるのよね。

 「学はあってもバカはバカ」という言葉。これ、「雙葉学園」てありますね。カトリック系女子教育の名門ですけど、ここの老シスターから聞いた言葉なんで強く印象に残ってたらしい。
 「バカの壁」のずっと前、十数年の前のこと。

 「あなたがたはなぜ、この学校に来ているか、知っていますか?」
 「いい大学に入るためです」
 「それは違います。みなさんは良きレディになるためにこの学校に来たのです」

 良きレディとはなにか?
 自分が使うトイレはいつも自分できれいにしておく。これが第一歩。だから、この学校のトイレはいつもキレイ。
 日本では偏差値の高い学校に入ると、それだけで尊敬され、頭がいいと言われます。けど、これって大間違い。

 「わたしは世間でエリートと呼ばれているバカを、たくさん知っています」
 こんな言葉が飛び出てきたわけ。
 「立派な大学を出ていても、役に立たない人がいます。わたしははそういう人を、学はあってもバカはバカ、と言います」

 で、この人、編集委員になった時に、「総力特集 日本をダメにした学のあるバカたち」という見出しで新聞紙面を飾ったことがあります。

 「学はあってもバカはバカ」と言う時、さて、あなたはだれを連想します?
 自分自身?
 わたしの場合、家族に聞いたら、「あんだだよ!」と返ってきました。たしかに学歴というか、知識はそこそこあるかもしれない。
 けど、教養というか、見識はホントにない。子どもに説教されてるくらいだもの・・・。

 で、この人は「宮沢喜一」という人を上げてます。
 総理大臣ですよ。けどね、
 「この人は自分を評論家だと思っているのではないか」と感じてならなかったそうです。

 英語に堪能で、経済理論に通じ、教育は最高のものを受けてきた。
 司馬遼太郎さんからもその博学は聞いていたそうです。
 「宮沢さんはお寺の難しい書でもスラスラお読みになる。あの真似は、ようできん」

 1991年11月、この宮沢さんが総理大臣になった。司馬さんと酒を飲むと、いい時期にいい人が首相になったと思った。
 ところが、3カ月もすると、「ちょっと待てよ。この人の学に惑わされて、期待しすぎたのではないか」と思わせる場面が目に付くようになった。

 宮沢さんはいま、日本が何をすべきかよくわかっている。どうすべきかも知っている。総理大臣だから、実行しようと思えばできる。
 しかし、じっとして動かない。相変わらず、評論家然としているだけ。以来、日本は「空白の十年」と呼ばれる年月を過ごすことになる。
 すべては「学のあるバカ」に期待しすぎたせいでもある。

 吉田茂の片腕といわれた白洲次郎さん。この人の奥さんは白洲正子さん。
 「うちの次郎さんは、宮沢さんのことを、あいつはすごいと言ってたの。でも、わたしは、この人は頭だけの人じゃないかと思った。だって、ボクは心眼なんてもの信じません、なんていうんだもの。でも、みてご覧なさい。次郎さんより、わたしの目のほうが正しかったのよ」
 
 わたしは断言しますけど、男の見る目は甘いですよ。女性のほうがシビア。とくに、同性を見る目の厳しいこと。
 「お勉強のできた人っていうのは、自分の身を安全地帯においておいて、それであれこれいうわけでしょ。わたしは卑怯だと思うのよ。だから、わたしは朝日が好きになれないの」といたずらっぽく笑ったそうです。

 学のあるバカとは、実戦に向かない人、修羅場を避ける人。うんと俗な言い方をすれば、ケンカのしかたを知らない人ってことですね。
 250円高。
購入はこちら



3 「間違いないっ!」
 長井秀和著 ベストセラーズ 1365円

 スピード感溢れるしゃべりで大好きなんだけど、「性格が悪そう」って評判はいまいち。そうかなぁ。でも、女って見る目あるからなぁ。

・小倉優子は、見た目やしゃべり方はトローンとして、「今まで生きてきた中で、いちばん感動しました」とか言っているが、頭の中の「芸能界世渡りコンピュータ」はものすごい速さで作動しているんだ。「ハイスペックゆうこりん」です。
 間違いないっ!
・うっかり八兵衛がうっかりするのは、年齢的にしかたがない。
 間違いないっ!
・あいのり。いい若い男たち女たちが車に乗って、あっちへフラフラもこっちへフラフラ。「あの子がいい」「あの女が気になっちゃう」って、日本の恥だから。さっさと換えてきてまともに仕事をしてください!
 お願いします!
・契約は無人だけど、取り立ての人材は豊富なんだ。
 間違いないっ!
・健康食品が、買った人を長生きさせているのではない。買った人が健康食品会社を長生きさせてるんだ。
 間違いないっ!
・マナ・カナは瞬きするタイミングも練習しているんだ。
 間違いないっ!
・合コンで、「好きな映画は?」と聞かれたら、とりあえずタランティーノと言っておけ。なんとか乗り切れる。
 間違いないっ!
・群馬県民は、中古車のことばっかり考えている。
 間違いないっ!
・いつまでも若い女優をみて、「お金さえかければわたしだって」・・・ありえないから!
 150円高。
購入はこちら