2001年10月01日長嶋茂雄は永久に不滅です

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スターの中のスター


 カリスマの時代が終焉した。

 いや、終演したといったほうがいいかもしれない。

 とうとう、長嶋監督が巨人軍監督を勇退することになりました。

 長嶋さん、ほんとうにお疲れさまでした。



 9月28日に突然の退任記者会見。まだ、横浜戦・阪神戦と2ゲーム残しているものの、ファンへのあいさつもあるので若干早めに発表したという。

 昨日の東京ドーム。ホーム最後の試合では、同じくこの日、引退する槙原、斎藤両投手の登板に、マウンドで出迎えることで感謝の言葉に換えた。

 まさに千両役者の面目躍如。

 引退セレモニーでは、巨人優勝時よりもドーム全体がわき返り、感動の嵐に包まれていた。



 記者会見の翌日、読売新聞は編集手帳で「一つの時代が終わった」と書き、日経新聞は春秋で「淋しくなる」と結んだ(さすがに、朝日と毎日の両新聞はエイズ裁判における松村被告有罪判決について述べていたけれども)。

 たしかにそうだ。

 わたしより上の世代はまさしく長嶋世代。

 6大学野球での活躍、そして巨人軍入団に注目した。夢を共有したといってもいい。

 デビュー時に国鉄スワローズのエース金やんに4三振を食らうものの(実は次の対戦も三振だった)、見逃し無しにブンブン振り回す豪快なスイングには「失敗を怖れないチャレンジ精神いっぱい」の姿がいかにも新鮮かつ爽快に映った。そして、新人にしていきなり2冠王をものした。

 以来、日本のプロ野球はセピア色から総天然色カラーへと変わった。

 小学生4年生のとき、わたしははじめてユニフォームを買ってもらったときのこと、「背番号は何番がいいんだ?」という父親に「もちろん、3番だよ」と答えた。

 小学生時代に3回ユニフォームを作り替えたが、すべて3番だった。

 クラスで野球をすると、背番号3番が10人もいた。生来のへそ曲がりのわたしは、「これ、中日ドラゴンズの中利夫選手だからね。長嶋じゃないよ」とミーハーとは違うんだという態度に終始した。中選手は大根振りバッターとして首位打者を取ったこともある名バッターだったし、中日の監督に就任したこともあったはずだ。

 でも、ホントに好きだったのは長嶋茂雄選手だった。




世代交代をホントに望んだのかな?

 2度目の監督就任はホントに嬉しかった。

 でも、生来のへそ曲がりなためか、金にモノを言わせて各球団からエースと4番打者を引っこ抜く姿勢には反発を覚えた。

 「資本主義が健全な証拠」ともいえるが、やっぱり監督の采配で勝って欲しかったのだ。けど、なかなか勝てない。

 勝負の世界は厳しいが、つねに注目を浴び続ける巨人を見る目は厳しい。

 「これだけタマを揃えて勝てないのは、監督にマネジメント能力がないからではないか」

 たしかにそう思う。

 でも、長嶋巨人は常に勝負が終わるまでベストを尽くさなければならない。それは、巨人戦のチケットの取りにくさと比例する。オーナーと仲良しの大勲位なら、バックネット裏でいつでも観戦できるだろうが、一般庶民にとって東京ドームの巨人戦は一生に一回あるかないかというプラチナカードである。

 だから、手を抜くわけにはいかないのだ。捨て試合を作るわけにはいかないのだ。毎回、ベストオーダーで臨むのが球場まで足を運んでくれたファンに対する礼儀なのだ。

 このことを長嶋茂雄という人はよく認識していた。

 期待が大きいだけに、負けたときのマスコミの糾弾やファンの罵詈雑言はたいへんなものだ。

 でも、これらをすべて包み込んでしまう精神力を長嶋さんは持っていた。



 さてさて、今回の勇退劇だが、長嶋さんの本意ではないと思うんだ。会見では「世代交代」を連発していたが、これはウソだな。読売首脳がかつての解任劇のように新聞の部数激減にならないよう、静かにステージから去ってもらうようにシナリオを書いたのだ、と思う。だって、あの人にとって、監督業は永遠の道楽だったはずだもの。ファンもそれで楽しんでいたしね。

 退任後は、巨人軍の専務取締役、終身名誉監督という肩書きになるそうな。

 わたしは、長嶋さんにはセ・パ両球団のコミッショナーに就任してもらいたい。一巨人軍などどうでもいいのである。野球をまったく知らないお飾りのコミッショナーなどもうたくさんだ。

 メジャーリーグとの選手交換、ゲーム交流など風通しをもっと改善しては如何。

 「松井はずっと巨人にいて欲しい」などというケチな発言は忘れてもらいたい。

 もっとグローバルに、もっとロングスパンでスポーツを考えてみて欲しいな。・・・終身名誉監督など、ありがた迷惑だったのではないだろうか。

 小泉さんはめざといから、「国民栄誉賞」の授与を考えていると思うな。きっとやるよ。いまやらないと、チャンスないもの。



 追伸 わたしにとっては1冊の著書が長嶋さんとの遠い縁になっている。