2001年09月11日「とことん文化」と「ほどほど文化」
カテゴリー価値ある情報」
何はともあれ、アメリカは「超たいへん」ですね。
映画ではなく現実ですよ、これ。
ハイジャックした飛行機で貿易センタービルやペンタゴンを狙う。それに対して、ミサイルで打ち落とすかどうか思案する大統領(演じる俳優はやっぱりハリソン・フォードかな)・・・。映画ではなく、こういうシナリオも現実のものになってしまいました。
冷戦が終わってから、軍事的にはアメリカの一人勝ち。いわば、勝ち組ですよ。でも、アメリカはCIAの予算も人員を削って、スターウォーズ計画だけ突出させてきました。ちょうど、そのすき間を狙われましたね。
テロは貧乏人の戦術としてはベストのものですが、今回のテロ行為は数千人、数万人もの一般人を巻き込んだ史上ワーストの大惨事です。現代の戦争では、実際の戦争よりもテロ行為による惨事のほうが被害は甚大なんですね。いまの時点ではなんとも言えませんが、このテロ行為は続きますよ。相手は破れかぶれ。「孫子の兵法」にあるように反撃される前に勝負を決めたいでしょうからね。
深夜テレビはこのニュース一色です。フジテレビでキャスターをしてる木村太郎さんは「アラファトさんは否定してますから、PLOじゃありませんよ」と中東問題の専門家をたしなめてましたが、自分の命を投げ打ってでもビルに突っ込むほどの特攻隊精神を持つ民族、組織はどこか。それを考えれば、自然といくつかの国家、組織を特定できるのではないでしょうかね。
アメリカという超軍事大国を相手にするんですから、これは従来のように、「わたしがやりました」というような声明など発表するわけがありません。でも、アメリカは捜し出して報復しますよ。民族すべてを殲滅するかもしれませんね。ブッシュ大統領ならやりかねない、と思います。
それにしても、ベトナム戦争以来、アメリカはこういうゲリラにはとことん弱いですな。アメリカの情報能力も大したこと、なかったんですね。水際で防げず、同時テロですよ。
しかも、狙われたのがペンタゴンに貿易センタービル。いってみれば、暴力団に警察庁と警視庁を同時に攻撃されたようなものです。ペンシルベニアで墜落した飛行機を乗っ取ったテロリストだって、きっとキャンプデービッドを狙ってたんでしょうね。それがクルーとか乗客の抵抗にあって目的を果たせなかったのかも知れません。
「もろいな」というしかありませんね。いくら宇宙開発しようが、軍事開発、核開発しようが、テロ一発で終わり。世界の笑いものですよ。
やっぱり世界の嫌われ者は日本でもロシアでも中国でもなくて、アメリカなんですね。この緊張はものすごいパワフルです。アメリカと軍事的、経済的に関連する国家はすべて緊張が走っています。もちろん脳天気な人間でもないかぎり、日本人もそうです。
いずれにしても、戦争が始まります。いや、もう始まったんです。アメリカが本土攻撃、しかも首都ワシントンとニューヨークを攻撃されるなんて、はじめてのことですね。皮肉なことですが、21世紀の幕開けも戦争なんですね。
さて、さて、何度も言うようですが、株価が戻りませんね。
1万円台でもみ合ったまま、割れるか割れないかのぎりぎりのところで行ったり来たり。
まっ、割れるときはあっさり割れますよ。そして割れた瞬間、ニュース速報で全国に配信されるでしょうな。今回のテロ行為で明日の前場(正確には今日なんだけど)は売り一色で、あっさり割れるでしょうね。為替だけが「今回だけは有事のドル売り」で円高に向かうでしょう。有事のドル買いが通じるのは、アメリカ以外で有事があったときだけなんですね。
小泉さんも写真集やCDなど出してる場合ではありませんね。
でも、慌ててもしょうがないことです。
株価が示すものはワン・オブ・ゼムであり、すべてではありません。彼がやるべきことは日本の実体経済を回復させることであって、株価を戻すことではありません。極端な話、株価など戻らなくてもいいんです。このテロ行為で株価もガタガタになると思いますよ。
株価が戻らなくて困るのは金融機関です。まっ、企業もそうですが、株価下落によって買収されることさえ気をつけていればいいんですよ。
幸いなことに、日本人はアメリカ人に比べ、日々の生活費まで株式運用に依存している人は多くはありません。もし、アメリカのように株を家計に繰り入れて資産形成を図るような風土だったら、土地暴落に株価の下落。まさに、「泣きっ面に蜂」のダブルパンチで国民の疲弊は想像を絶するものになるでしょうね。
でもホントに幸いなことに、日本人は賢明であり、ゼロ金利であろうとも銀行預金や郵貯を活用してきました。
ホントは軽く日経平均1万円など切ってたはずですよ。
というのも、日本の株式市場には「ストップ高」「ストップ安」というシステムがあるでしょ。
これは市場の混乱を防ぐために、「(ある個別銘柄の売りが集中して)もうたいへん。これ以上下落したら困る」という株価になったら、「はい、はい、もうそこは打ち止めです。さぁ、今度は違う銘柄で勝負しましょうね」とサーモスタットが動き出すんです。
つまり、「ほどほど」のところで止まるんですね。予定調和の世界なんですね。
予定調和の世界には「リスク・マネジメント」という発想はありません。このシステムですら、みなさん、リスク・マネジメントだと錯覚してきたはずですよ。それに、基本的な疑問ですが、そもそもどうして市場の混乱を避けるべきなんでしょうね。混乱しなければ、投資家は儲けられないじゃないですか。
たしかに「danger」は避けるべきですが、「risk」は果敢にチャレンジするものですね。
もちろん、海外にはこんなアホな制度はありません。日本国内だけで通じるシステムです。
アメリカなど、ガンガン上がるのもあれば、ガンガン下がるのもあります。でも、それを見て、「いけね。本腰入れてリストラするぞ」とか「もっと真剣に研究開発しないとダメだな」と市場に決断を促されることになります。
つまり、「とことん」行くから、ハッと気づくわけです。
ところが、日本という国は「ほどほど」がたいへん好きな民族です。とくに急激な秩序の転換についてこられない人(政治家もビジネスマンも)や企業、そして役所(永遠についてこられないかも)にかぎって、「ほどほど」が大好きです。
しかし、この「ほどほど文化」でいる限り、日本は変化、変革とはほど遠くなるんですね。良かれ悪しかれ、「とことん文化」でないと事態は変わりません。
経済政策は経済政策らしく
小泉さんが説く「痛み」とは、民には失業率5%(総務省の統計ではもっと悪いはずだけど)を越えることや、たとえ金融機関であれ、将来性のない企業や体力のない企業は市場から退場してもらうこと。
官に対しては、もう遊ばせておくだけの余裕はないから、特殊法人やその関連企業を隠れ蓑に税金をちょろまかしてきた役員や職員にはお引き取り頂くことですね。
まともな企業は常に競争にさらされていますから、だれから言われなくともバージョンアップしないと生き残れないことを知っています。
けれども、この人たちは違います。もともと自分たちの居場所を確保するために作ったものですから、「もう不要になった」ということに気づいても慣性の法則が効いているために自分たちで手仕舞うことができないのです。
それが役所仕事というものです。
これだけ不況になって、はじめて、自分たちの組織がいかに社会に貢献していないか、貢献どころか、技術的、コスト的にも、民間に任せたほうがはるかにハイ・パフォーマンスの仕事をしてもらえるか、ということに気づいたわけです。
そして、国会議員には定数削減で、形だけでも民に対して説得力ある行動を取ろうじゃないかということ。
この3つです。
いま、日本は構造的なデフレ不況です。いままで、「ほどほど」の対策しか取ってこなかったから、デフレ不況に突入してしまったわけですよ。もう、デフレになって7年目です。
デフレとは、供給よりもはるかに需要が少ない状態をいいます。
こんな中でも、勝ち組企業は需要を独り占めしてます。どうして独り占めできたかといえば、だれよりも知恵を出したからですね。
たとえば、ここにパン屋さんが2軒あるとしましょう。
いま、売れてるのはA店だけです。B店はまったくお客さんが来ません。もう店仕舞いしようか、「愛の貧乏脱出大作戦」に出ようか迷ってます。かつて景気のいいときは、「おたくのパンも一個か二個くらいは買ってあげる」というお客さんがいました。それが成り立っていました。
でも、この長引く不況で、お客さんはホントに美味しいA店のパンしか買ってくれません。売り切れていても、B店には寄ってくれません。
「今日はご飯かうどんにしようか」となってしまいました。
変化というのは良かれ悪しかれ現在の秩序を破壊しますから、必然的に勝ち組、負け組を生み出します。しかし、知恵を出した企業が成長し、のんべんだらりと効率の悪い仕事をしてきた企業がダメになるのは自然の理です。
厳しいですが、これが現実です。
経営者はこんなことは先刻承知でマネジメントをやってきているはずです。
経済政策はA店のような勝ち組をどう増やすかだけを考えればいいのであって、負け組へのフォローなど考える必要はありません。
それは福祉政策で救うべき問題だ、と思うのです。