2000年06月30日『伸びる組織には理由がある!」
カテゴリー価値ある情報」
ソニーの「十訓」
日本には大企業がたくさんあるが、「世界的」というレベルになるとぐっと少なくなる。
その世界的な企業のなかでも中でも草分けはソニーだろう。
この会社はたんなる家電メーカーではない。いまの時代、広報は個報、広告は個告、そして家電は個電である。
テレビやビデオ、ラジオを考えればわかる通り、一家に一台から一人一台になって久しい。わが家など、たった三人でテレビ六台、ビデオはたしか八台くらいあったと思う。
それよりもインターネット全盛のいま、パソコンの普及を考えればすぐに連想できると思う。いまやたいていのビジネスマンは会社に専用パソコンが一台、自宅に一〜二台は最低あるはずだ。もし、そうじゃない、というならば、はっきり言って、情報化社会には生き残れないと覚悟しておいたほうがいいと思う。
そういうと、「いや、インターネットなど信じません」とのたまう人がときどきいるが、インターネットは信仰の対象なんかではない。これはツールであり、使いこなすべき代物なのである。
言いたいことは、ソニーという会社は創業以来、一貫して個電、つまりパーソナル・ツールを扱ってきたという歴史を強調したいのである。RCAが諦め、ベル研究所がタオルを投げたトランジスタをものの見事に製品化したラジオ、ウォークマンは若者の時代と文化を変えてしまった。それにプレステ、VAIO、ネットビジネスなど、本当に一貫している。
これだけ面白い会社だが、組織の内容とレベルを判断するためには、一人ひとりの社員を解析する必要などない。経営トップ一人に注目すれば、すんなり浮き彫りになってくるのである。
さて、どんな企業文化を持っているのか、育ててきたのか。
以前、本稿ではソニーの創業者の一人である井深大さんの研究スタンスについて取り上げたことがあるので、今回はもう一人の創業者である盛田昭夫さんについて取り上げたいと思う。
ソニー十訓にこんな言葉がある。
1 何でも半分にできると信じろ。
2 サイズ等は中身に関係なく決める。
3 目標は単純明快にしろ。
4 検討しないでOKの約束をしろ。
5 困難は可能であり、不可能は割り切れ。
6 説明する前に物をデッチ上げろ。
7 ブレスト(ブレンストーミング)は目標達成するまで帰るな。
8 新しいアイデア、おもしろいアイデアは上司に内緒で作れ。
9 頼み事は忙しい奴に頼め。
10本業を疎かにするな。
訓辞というのは必然的に「知ってるよ、わかってるよ、ただやってないだけだよ」というケースが多いが、ソニーの場合はそうではない。
組織の力を半減するな
どの会社でも技術と営業の人間はそう仲が良くない。
技術屋は営業マンはいつも客の言いなりになっていると思っていますし、営業のほうでも、どうせ言ったって、技術はちゃんと聞いてくれないと思っている。
そして、お互いに商品が売れないのは相手が悪いと思い込んでいる。
それを盛田さんは芽のうちにスパッと摘んでしまった。彼は営業部門と技術部門の人間を一緒に集めた席でこう言ったことがある。
「営業マンに車を持たせると、重要顧客を訪問するより車を泊めやすい得意先を優先して訪問するようになるから持たせない。それより電車やバスに乗れ。そうすれば、お客さんの声が直接、聞こえてくる。そういうときこそ、ソニーにとって役に立つ情報はないかを聞け。そのなかから、こんな商品を作れ、こんなサービスをしろという注文や希望を全部聞いてこい。そして、その無理難題をお前たち営業マンが技術屋にぶつけろ」
「営業はいつも無理難題ばかり聞いてくる」と技術屋はみんな思っている。そんな技術屋に対して、「できるかできないかではなく、どうすればできるのかだけを考えよ。できるかできないかはわたしが考える」「ソニーの技術屋は営業の無理難題を受けて立て」と檄を飛ばすのである。
組織というのは大きくなると、どうしても風通しが悪くなる。それに風穴を開けるのは実はトップにしかできない業なのである。常に風通しをよくしておく。それが組織を組織として昨日させるためには重要なのである。
釈迦に説法かもしれないが、組織というのは平凡な人間を集めて非凡な成果を出させるためにある。ところが、せっかく非凡な人間を集めたのに平凡な成果しか出せない組織が少なくない。これでは本末転倒。組織が組織として体をなしていないと言われてもしかたがない。そのような愚を犯してしまうのは組織を司るリーダーの力量不足、あるいは勘違いにある。
湾岸戦争のときの司令官ノーマン・シュワルツコフはこう言っている。
「リーダーとマネージャーとは異なるものである。マネージャーはシステムを管理し店や道具を買いそろえるのが仕事。そういう人たちは、財務管理やシステム管理には適しているが、組織の基本要素である人の存在を忘れている。リーダーは人をリードすることだ。人にはそれぞれ夢や希望があり、頭脳や感情を持っている。その人にやる気を起こさせ、その人が普段かやらないことも喜んでやらせてしまう。マネージャーは生身の人間を忘れがちだ」
人を知ることは大事。だから人間通でありたいし、リーダーならば、そうあって欲しい。しかし、人が集まった組織を主宰するにはたんなる人間通だけでは不十分である。組織を活性化するにはどうしたらいいのか。対立を逆手にとって良い意味でのライバル関係に成長させるにはどうしたらいいのか。リーダーは組織の妙味についても熟知しておく必要がある。
日本には大企業がたくさんあるが、「世界的」というレベルになるとぐっと少なくなる。
その世界的な企業のなかでも中でも草分けはソニーだろう。
この会社はたんなる家電メーカーではない。いまの時代、広報は個報、広告は個告、そして家電は個電である。
テレビやビデオ、ラジオを考えればわかる通り、一家に一台から一人一台になって久しい。わが家など、たった三人でテレビ六台、ビデオはたしか八台くらいあったと思う。
それよりもインターネット全盛のいま、パソコンの普及を考えればすぐに連想できると思う。いまやたいていのビジネスマンは会社に専用パソコンが一台、自宅に一〜二台は最低あるはずだ。もし、そうじゃない、というならば、はっきり言って、情報化社会には生き残れないと覚悟しておいたほうがいいと思う。
そういうと、「いや、インターネットなど信じません」とのたまう人がときどきいるが、インターネットは信仰の対象なんかではない。これはツールであり、使いこなすべき代物なのである。
言いたいことは、ソニーという会社は創業以来、一貫して個電、つまりパーソナル・ツールを扱ってきたという歴史を強調したいのである。RCAが諦め、ベル研究所がタオルを投げたトランジスタをものの見事に製品化したラジオ、ウォークマンは若者の時代と文化を変えてしまった。それにプレステ、VAIO、ネットビジネスなど、本当に一貫している。
これだけ面白い会社だが、組織の内容とレベルを判断するためには、一人ひとりの社員を解析する必要などない。経営トップ一人に注目すれば、すんなり浮き彫りになってくるのである。
さて、どんな企業文化を持っているのか、育ててきたのか。
以前、本稿ではソニーの創業者の一人である井深大さんの研究スタンスについて取り上げたことがあるので、今回はもう一人の創業者である盛田昭夫さんについて取り上げたいと思う。
ソニー十訓にこんな言葉がある。
1 何でも半分にできると信じろ。
2 サイズ等は中身に関係なく決める。
3 目標は単純明快にしろ。
4 検討しないでOKの約束をしろ。
5 困難は可能であり、不可能は割り切れ。
6 説明する前に物をデッチ上げろ。
7 ブレスト(ブレンストーミング)は目標達成するまで帰るな。
8 新しいアイデア、おもしろいアイデアは上司に内緒で作れ。
9 頼み事は忙しい奴に頼め。
10本業を疎かにするな。
訓辞というのは必然的に「知ってるよ、わかってるよ、ただやってないだけだよ」というケースが多いが、ソニーの場合はそうではない。
組織の力を半減するな
どの会社でも技術と営業の人間はそう仲が良くない。
技術屋は営業マンはいつも客の言いなりになっていると思っていますし、営業のほうでも、どうせ言ったって、技術はちゃんと聞いてくれないと思っている。
そして、お互いに商品が売れないのは相手が悪いと思い込んでいる。
それを盛田さんは芽のうちにスパッと摘んでしまった。彼は営業部門と技術部門の人間を一緒に集めた席でこう言ったことがある。
「営業マンに車を持たせると、重要顧客を訪問するより車を泊めやすい得意先を優先して訪問するようになるから持たせない。それより電車やバスに乗れ。そうすれば、お客さんの声が直接、聞こえてくる。そういうときこそ、ソニーにとって役に立つ情報はないかを聞け。そのなかから、こんな商品を作れ、こんなサービスをしろという注文や希望を全部聞いてこい。そして、その無理難題をお前たち営業マンが技術屋にぶつけろ」
「営業はいつも無理難題ばかり聞いてくる」と技術屋はみんな思っている。そんな技術屋に対して、「できるかできないかではなく、どうすればできるのかだけを考えよ。できるかできないかはわたしが考える」「ソニーの技術屋は営業の無理難題を受けて立て」と檄を飛ばすのである。
組織というのは大きくなると、どうしても風通しが悪くなる。それに風穴を開けるのは実はトップにしかできない業なのである。常に風通しをよくしておく。それが組織を組織として昨日させるためには重要なのである。
釈迦に説法かもしれないが、組織というのは平凡な人間を集めて非凡な成果を出させるためにある。ところが、せっかく非凡な人間を集めたのに平凡な成果しか出せない組織が少なくない。これでは本末転倒。組織が組織として体をなしていないと言われてもしかたがない。そのような愚を犯してしまうのは組織を司るリーダーの力量不足、あるいは勘違いにある。
湾岸戦争のときの司令官ノーマン・シュワルツコフはこう言っている。
「リーダーとマネージャーとは異なるものである。マネージャーはシステムを管理し店や道具を買いそろえるのが仕事。そういう人たちは、財務管理やシステム管理には適しているが、組織の基本要素である人の存在を忘れている。リーダーは人をリードすることだ。人にはそれぞれ夢や希望があり、頭脳や感情を持っている。その人にやる気を起こさせ、その人が普段かやらないことも喜んでやらせてしまう。マネージャーは生身の人間を忘れがちだ」
人を知ることは大事。だから人間通でありたいし、リーダーならば、そうあって欲しい。しかし、人が集まった組織を主宰するにはたんなる人間通だけでは不十分である。組織を活性化するにはどうしたらいいのか。対立を逆手にとって良い意味でのライバル関係に成長させるにはどうしたらいいのか。リーダーは組織の妙味についても熟知しておく必要がある。