2005年10月11日「ブルったらオシマイ」 高木賢治著 光文社 1365円
忘れない中に言っとくけど、来週19日、大前研一さんが主催する「アタッカーズ・ビジネススクール」ってとこで講義します。
題して「リーダーのための人を動かす表現力」。会費5000円。これ、少人数限定の講義だから、申込は迅速によろぴこ。
さて、これ、Vシネになるね。「ミナミの帝王」の劇場版、Vシネ版ともにチェックしてるんだけど、ある意味、それより迫力あるね。
貸借関係って、いちばん、人間が現われるじゃないですか。どんなに偉そうなこと言ってても、わずかばかりのお金で転んじゃう人もいるし、ドカッと積まれても動かない人っている。お金って、人間を評価する最高のテスト。
著者はいま、池袋で著名な金貸し。「ブクロのヤミ金王」だって。
高校時代、体操で活躍し、世が世なら、つまり、少年院などに行かなかったら、もしかするとオリンピックで・・・ということも考えられた人物。
少年院送りの原因は、当時、つき合ってた彼女が、ヤクザ数人に輪姦されたことがきっかけ。帰りが遅いんでバイト先に向かうと、彼女も店長も様子が変。で、ことが判明。
そのままアイスピックもって組の事務所に乗り込んじゃう。
「○○はだれだ?」
そのまま、めった刺し。「死んだ」と思った。相手は一生びっこをひかないと歩けない身体になったけど、幸い、急所がずれてた。
少年院を出る日、迎えに来たのは両親とそのやくざ。両親といっても、育ての親。実の親は著者を孤児院に捨てた人間だからね。
やくざはスカウトに来たのよ。もち、断った。断るどころか、けじめとして謝罪させた。怪我させたのは悪いけど、あのときのオレは気間違っていないって認めさせたわけ。
暴力団にもスカウトされたけど、断る。ただ、やくざにはなりたくないけど、この人の下でならと惚れる人がいた。
で、見習いみたいなことをするわけ。
裏ばかりの汚いヤクザ社会の中でも、その人だけは本物だったんだね。著者が足を洗う時、刑務所に入ってたにもかかわらず、やかんで指を切断して、親分のところに届けさせた人。
「あいつを堅気にさせたい」
だから、やくざには絶対にならない。けど、この稼業、やくざが絡んでるケースが多いでしょ。
でも、その筋には入らない。
この業界、舐められたら生きていけない。「高木のところは緩い」と噂されたら、噂が噂を呼び、飛びそうなお客を押しつけられる。
そうやって、実際に倒産した同業者がたくさんいるわけ。かといって、貸さなければそもそも商売が成り立たない。
貸すも地獄、借りるも地獄。人の目利きが勝負。
融資していいお客なのか。嘘をついていないか。人間として信頼できるのか・・・を1回の面談だけで判断する。
でも、来るお客といえば、銀行が相手にしないレベルの人間ですよ。銀行どころか、サラ金も相手にしない。
当然、マニュアルのようなものもあるらしい。けど、著者は自分が信用できると判断したら、相手がだれだろうと貸す。
もちろん、失敗もある。金を貸すのはだれにだってできる。この商売、ホントに大変なのは回収だもの。
金貸しが裏稼業とつるんでしまうのも、この回収業務が大変なことがあるわけ。
著者も失敗することもあるわけ。たとえば、修業時代のこと。池袋で手広く商売してた金融業者の元でイロハを教わっていた時、1年以上のつきあいになる鋳物工場の社長が飛んだことがあった。
金利分も含めると、百万円くらい。
工場に行ってみると、がらーんとしてる。裏の住居もシーンとしてる。
その時、扉ががらがらがと開くの。「やっぱり、高木さんでしたか?」って。
「あなたに借金を一本化してもらったけど、どうしても困って、ほかのヤミ金から借りてしまいました」
「工作機械とられたら、商売できないだろ!」
怒鳴ってると、奥から小さな女の子が出てくるのね。「お父さん、お母さんを虐めないで下さい」って。
金貸し失格なんだけど、自分のお金、貸しちゃうのよ。もち、社長にはちゃんと報告するわけ。
「責任とります」ってね。
この社長、まったく笑わない人。反応を顔に出さない人。
著者が辞める時、一席、設けてくれた。「これ、退職金代わり」といって渡されたのが、なんと2千万円。
これだけあれば、金貸しとして少しは回せるだけの資金になる。けど、これを断っちゃうのよ、この人。
しばらく後に、間に入る人がいて、「顔を立ててもらっておけ」と諭される。けど、それまで突っ張って、「借りる」という形で落ち着く。でも、毎月、律儀に返すわけだ。
この社長が見込んだ理由は、金貸しの哲学かもしれないね。
普通、金貸しというと、どんな卑劣なことをしても平気という感じだけど、自分の中にルールがある。「人心」を忘れないというところ。
ビジネスに情が絡んだらダメになる。でも、ギリギリのところで商売する。その見極めがしっかりしてるってことかな。
普通、ヤミ金は「トサン」です。10日で3割の利息をとります。たとえば、10万円借りると、最初に利息分の3万円を引かれて、手元には7万円だけ。
こんな法外な借金でも成立するのは、そこに借りたい人がいるから。こんな利息でもOKという人はよっぽど詰まってる人。当然、銀行、サラ金は貸しません。飛ばれるリスクが高いもの。
トサン業者の飛び率は平均3〜4割らしいよ。でも、利息が高いからペイする。というか、このくらい高くしないと、ペイしない。飛び率がもっと減ったら、こんな法外な掛率にしなくてもいいわけよ。本当はね。
で、著者のところは1カ月に3割。これがビジネスと情とのギリギリの線だろう・・・ね。
やくざがお客さんになる場合も多い。けど、取り立てはきっちり。向こうは居丈高に出てきても、絶対、引かない。
「親分さんのところで話をつけさせてもらいます」
やくざに乗り込まれることもある。でも、返り討ち。飛びそうなお客を寄越したヤミ金には乗り込んで「けじめ」をつける。
この世界、舐められたら終わり。「ブルったらオシマイ」なわけ。
鋳物工場の社長さん、最近、お金を全額返し終えた。もちろん、利息なんてないけど。お礼がしたいって電話が来て、ある地方まで飛んでいった。
情をかければ必ず返ってくる。これが著者の生きるスタンスかな。
題して「リーダーのための人を動かす表現力」。会費5000円。これ、少人数限定の講義だから、申込は迅速によろぴこ。
さて、これ、Vシネになるね。「ミナミの帝王」の劇場版、Vシネ版ともにチェックしてるんだけど、ある意味、それより迫力あるね。
貸借関係って、いちばん、人間が現われるじゃないですか。どんなに偉そうなこと言ってても、わずかばかりのお金で転んじゃう人もいるし、ドカッと積まれても動かない人っている。お金って、人間を評価する最高のテスト。
著者はいま、池袋で著名な金貸し。「ブクロのヤミ金王」だって。
高校時代、体操で活躍し、世が世なら、つまり、少年院などに行かなかったら、もしかするとオリンピックで・・・ということも考えられた人物。
少年院送りの原因は、当時、つき合ってた彼女が、ヤクザ数人に輪姦されたことがきっかけ。帰りが遅いんでバイト先に向かうと、彼女も店長も様子が変。で、ことが判明。
そのままアイスピックもって組の事務所に乗り込んじゃう。
「○○はだれだ?」
そのまま、めった刺し。「死んだ」と思った。相手は一生びっこをひかないと歩けない身体になったけど、幸い、急所がずれてた。
少年院を出る日、迎えに来たのは両親とそのやくざ。両親といっても、育ての親。実の親は著者を孤児院に捨てた人間だからね。
やくざはスカウトに来たのよ。もち、断った。断るどころか、けじめとして謝罪させた。怪我させたのは悪いけど、あのときのオレは気間違っていないって認めさせたわけ。
暴力団にもスカウトされたけど、断る。ただ、やくざにはなりたくないけど、この人の下でならと惚れる人がいた。
で、見習いみたいなことをするわけ。
裏ばかりの汚いヤクザ社会の中でも、その人だけは本物だったんだね。著者が足を洗う時、刑務所に入ってたにもかかわらず、やかんで指を切断して、親分のところに届けさせた人。
「あいつを堅気にさせたい」
だから、やくざには絶対にならない。けど、この稼業、やくざが絡んでるケースが多いでしょ。
でも、その筋には入らない。
この業界、舐められたら生きていけない。「高木のところは緩い」と噂されたら、噂が噂を呼び、飛びそうなお客を押しつけられる。
そうやって、実際に倒産した同業者がたくさんいるわけ。かといって、貸さなければそもそも商売が成り立たない。
貸すも地獄、借りるも地獄。人の目利きが勝負。
融資していいお客なのか。嘘をついていないか。人間として信頼できるのか・・・を1回の面談だけで判断する。
でも、来るお客といえば、銀行が相手にしないレベルの人間ですよ。銀行どころか、サラ金も相手にしない。
当然、マニュアルのようなものもあるらしい。けど、著者は自分が信用できると判断したら、相手がだれだろうと貸す。
もちろん、失敗もある。金を貸すのはだれにだってできる。この商売、ホントに大変なのは回収だもの。
金貸しが裏稼業とつるんでしまうのも、この回収業務が大変なことがあるわけ。
著者も失敗することもあるわけ。たとえば、修業時代のこと。池袋で手広く商売してた金融業者の元でイロハを教わっていた時、1年以上のつきあいになる鋳物工場の社長が飛んだことがあった。
金利分も含めると、百万円くらい。
工場に行ってみると、がらーんとしてる。裏の住居もシーンとしてる。
その時、扉ががらがらがと開くの。「やっぱり、高木さんでしたか?」って。
「あなたに借金を一本化してもらったけど、どうしても困って、ほかのヤミ金から借りてしまいました」
「工作機械とられたら、商売できないだろ!」
怒鳴ってると、奥から小さな女の子が出てくるのね。「お父さん、お母さんを虐めないで下さい」って。
金貸し失格なんだけど、自分のお金、貸しちゃうのよ。もち、社長にはちゃんと報告するわけ。
「責任とります」ってね。
この社長、まったく笑わない人。反応を顔に出さない人。
著者が辞める時、一席、設けてくれた。「これ、退職金代わり」といって渡されたのが、なんと2千万円。
これだけあれば、金貸しとして少しは回せるだけの資金になる。けど、これを断っちゃうのよ、この人。
しばらく後に、間に入る人がいて、「顔を立ててもらっておけ」と諭される。けど、それまで突っ張って、「借りる」という形で落ち着く。でも、毎月、律儀に返すわけだ。
この社長が見込んだ理由は、金貸しの哲学かもしれないね。
普通、金貸しというと、どんな卑劣なことをしても平気という感じだけど、自分の中にルールがある。「人心」を忘れないというところ。
ビジネスに情が絡んだらダメになる。でも、ギリギリのところで商売する。その見極めがしっかりしてるってことかな。
普通、ヤミ金は「トサン」です。10日で3割の利息をとります。たとえば、10万円借りると、最初に利息分の3万円を引かれて、手元には7万円だけ。
こんな法外な借金でも成立するのは、そこに借りたい人がいるから。こんな利息でもOKという人はよっぽど詰まってる人。当然、銀行、サラ金は貸しません。飛ばれるリスクが高いもの。
トサン業者の飛び率は平均3〜4割らしいよ。でも、利息が高いからペイする。というか、このくらい高くしないと、ペイしない。飛び率がもっと減ったら、こんな法外な掛率にしなくてもいいわけよ。本当はね。
で、著者のところは1カ月に3割。これがビジネスと情とのギリギリの線だろう・・・ね。
やくざがお客さんになる場合も多い。けど、取り立てはきっちり。向こうは居丈高に出てきても、絶対、引かない。
「親分さんのところで話をつけさせてもらいます」
やくざに乗り込まれることもある。でも、返り討ち。飛びそうなお客を寄越したヤミ金には乗り込んで「けじめ」をつける。
この世界、舐められたら終わり。「ブルったらオシマイ」なわけ。
鋳物工場の社長さん、最近、お金を全額返し終えた。もちろん、利息なんてないけど。お礼がしたいって電話が来て、ある地方まで飛んでいった。
情をかければ必ず返ってくる。これが著者の生きるスタンスかな。