2005年01月03日「塀の中から見た人生」「アキハバラ@DEEP」「空気の壁」
1 「塀の中から見た人生」
安部譲二・山本譲司著 カナリア書房 1575円
Wジョージの本ですな。
安部さんは元その筋の人。だから、塀の中は何回も経験済み。その経験を活かして書いた小説が例の「塀の中のプレイボール」です。
で、山本さんは菅直人さんの秘書を経て都議会議員。そして衆議院議員。それが2000年9月に政策秘書給与流用事件を起こして実刑判決。で、塀の中に・・・。
山本さんは、辻本清美さんのように控訴すれば執行猶予はついたはず。
だけど、この人、「税金を遣わせるほどのものではない」と控訴しなかったんだよね。これ、いい人ぶってるんじゃなくて、この人の性格だと思います。
人間、ギリギリの状況に追い込まれると人間性というか、育ちが出てきますよ。
山本さんは模範囚で早めに出られるはずだったのに、辻本さんが逮捕されたことで、山本さんにインタビューが集まってくる。そのおかげで延びてしまったとか。
がりがり亡者は他人のことなどおかまいなし。で、いつも割を食うのが正直者。
政策秘書給与流用事件など、土井たか子さんにしても、田中真紀子さんにしても、ほかの議員さんにしても、みな、彼を非難できるんでしょうかね。
「罪なき者、石もて打て」だよ。
さて、ジョージさんの年齢差は25歳。こうなると、塀の中の状況、すなわち、刑務所の待遇もそうとう変わってます。
「けど、本質的には明治41年の監獄法から変わっていない」
映画の「グリーンマイル」「告発」。あれとまったく同じ。極端に高圧的なのも同じ。下劣な言葉を機関銃のように浴びせるのも同じ。
映画の看守そのもので滑稽だった、と山本さんは言います。
昼夜独居、いわゆる軽屏禁は監獄法では二カ月以内と決められてる。けど、こんなものは所長の裁量でいくらでも延期できるんですね。
北九州の医療刑務所では40年以上も強いられている人がいるんです。ほとんど廃人。もう人との会話ができません。
こんな昼夜独居拘禁者がいま、日本にどれくらいいるか?
二千人以上。
名古屋の暴行死事件の影響で、情報公開が少しは進んだけれども、過去10年間、刑務所内で死亡した受刑者は584人。うち、262人は司法検死が必要なもの。けど、たった31人だけが司法解剖されただけ。しかも、立件されたのは名古屋の二件しかない。
ということは、あとは何かの理由で処理されたってわけ。
安部さんが山本さんに会って最初のひと言。
「あなた、いい懲役をされたね」
「???」ですよ。
だって、刑務所ではなにも教わることはありません。これって懲罰であって、教育ではありませんから。
たしかに法務省は教育刑だと言い張ります。けど、これ、ウソ!
だから、再犯が多いの。てんで、懲りないの。
「どこかが歪んだり、スレてしまったり、たいがいは刑務所に入る前より悪くなって娑婆に戻ってくるんですよ」
安部さんは67年間の人生で、良くなって出てきたのはたった2人だけだ、と言います。
「もう一人はね、江夏豊」
放免祝いに新宿に行った。あのわがままで傲岸不遜の男が、焼き肉店の仲居さんにまで気を遣う。
あまりの変化に感心!
「おまえ、もう一回行ってこいよ」
「出てきたばかりで、それはないでしょう」
警察、検察って、変なとこですね。
がさ入れなどがあると、係官がどっさりと段ボール箱を抱えてる姿がニュースで流れます。
これ、真っ赤なウソ。
ホントは二箱くらいしかないのね。で、あとはカラ箱。それをいかにも大量の証拠を押収しましたと、カメラの前でだけ演技するわけ。
調書にしても、インチキに気をつけないとたいへん。つまり、二行ぐらい空白にしてるんだって。で、捺印させたあとで、好きなことを記入してしまう。実際に、そんな刑事や検事がいるらしい。
こうなると、あとで弁護士がいくに頑張っても、「おまえ、署名捺印してるじゃないか!」と言われちゃうわけ。
「沖縄の刑務所なら五割増しでいい」
わかります?
暖かいからね、沖縄は。五年の刑なら七年半でもいいってわけ。いまでも、冷暖房ありませんからね。
例外は食事中の十五分だけ。この時だけは暖房だけは入れてくれる。でないと、かじかんで箸が持てないから。
福島刑務所なんか、冬場は零下12度だもの。
「そんなこと言ったって、税金で衣食住が保証されてるじゃないか!」
これも誤解です。
実は塀の中の人々は年間百億円もの売上があるんです。ほら、観光地なんかでいろいろ細工物を売ってるでしょ。あれ、作ってるんだよね。
で、百億円。この中から、受刑者の生活費が支出されるんです。作業賞与金ってのがあるんだけど、これ、一年二カ月務めて三万七千円くらい。
これ、ものすごく黒字なのよ。自給自足してるわけ。だから、暖房だって入れられるわけ、ホントはね。
いま、山本さんは社会復帰してます。自分の体験を活かして、「知的障害のある受刑者を受け容れるためのシェルター作り」に邁進しています。
応援したいですね。
250円高。
購入はこちら
2 「アキハバラ@DEEP」
石田衣良著 文藝春秋 1700円
なんと450ページもの大著。まっ、あっという間に読んでしまいましたけど。
これ、トレンディですね。映画を観てるような感覚で読んじゃったな。
アキハバラねぇ・・・。どことなく、語感がサカキバラに似てますなぁ。まっ、日本よりも世界で有名なことだけはたしかだね。とくに外国人向けのツアーガイドには必ずここ載ってるもんね。
むかし、「ナポリを観て死ね」、いま、「アキバで買い物して死ね」ってか。
アキバは一つのブランド。いまや、銀座と並ぶね。
だって、Tシャツにロゴが入ってる地名ってあまりないでしょ。Tokyo、NYCくらいかな。
秋葉原ではなくてアキハバラ、アキハバラというよりもアキバのほうがピッタシ。
いま、アキバはものすごい開発中。ヨドバシカメラが広大な土地を買って一大電脳都市を作ろうとしてるからね。
話はパソコン以外になんの取り柄もない「オタク」たちが集まって会社を作っちゃった。
オタクってのは、コスプレ喫茶のアイドルで格闘技の女王ことアキラ、不潔恐怖症のWebデザイナー、ボックス、中卒の天才プログラマー、デスクトップミュージックの天才タイコ、吃音でテキストデータを作成してる時だけまともに話せるページ・・・とかね。
それぞれスペシャリストなわけさ。
で、不眠不休で彼らが開発した商品ちゅうのが、なんとYAHOO! googleもびっくりする傑作サーチエンジンなわけ。
このAIを徹底活用したソフトなんだけど、それが世界第七位の富豪でもあるITベンチャーの経営者に盗まれちゃう。
復讐に燃えた彼らがいったいどうするか・・・。
まっ、あとは読んでください。
150円高。
購入はこちら
3 「空気の壁」
鮫肌文殊・山名宏和著 太田出版 1260円
空気の壁ねぇ。
空気を読めない人、多いもんね。
まっ、人のことは言えないんだけどさ。
「あなたは身に覚えがありませんか?」って、いちいちチェックが入ってるます。
たとえば、カラオケに行って一曲目にバラードを唄う人。これ、「嫌われ度★★★★★」です。
わたし、よくやるんだよねぇ。
「いきなりですかぁ?」なんて言われたことあったけど、あれ、思い切り嫌われてたんだねぇ。
たとえば、行列のできる店のカウンターで携帯電話してる人。
いますねぇ、こういう人。
「いま、ものすごく混んでんのよ。そうね、外にはまだ20人くらい立ってるんじゃないかな。オレ? いま、カウンターに座ってんの。で、寿司、食べるのよ。いま、中トロ食べてるとこ。これから、イクラにチャレンジ。うん、なかなか美味いねえ」
なんて、自分で食べてるとこを実況中継しちゃう。
周囲の目なんか気にしない。だって、空気が読めないんだもの。傍若無人ってヤツね。
たとえば、披露宴のケーキカットの瞬間を、携帯電話で撮影する人。
います、います。こういう人、います。
はい、わたしのことです。
どうも、この本、わたしの生態を見てる人が書いてるような気がしてならないねぇ。
たとえば、人の家の本棚をじっと見てしまう人。
います。います、います。
本棚というのは、いわば、分身というか、ある意味、その人の頭の中身、性癖をさらけ出すものですね。
じっと見られると、なんかくすぐったくなってしまいますね。
「へぇ、こんな本、読んでるんだ」
で、たいしたこたぁねぇな、みたいな顔されちゃうわけ。
余計なお世話だっての!
わたしは読んだら本はすぐに捨てちゃうか、売っちゃいます。年間三千冊は買ってるけど、こんなもの残してたらスペースなくなっちゃうものね。
だから、いつも、読みかけの本がそこかしこに散らばってて整理されてません。
まっ、こんなトリビアみたいな情報がわんさか詰まった本です。
250円高。
購入はこちら