2004年12月13日「豆富バカが上場した!」「面接力」「築地で食べる」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「豆富バカが上場した!」
 樽見茂著 中経出版 1470円

 豆腐じゃなくて、豆富。
 へぇ・・・。友人に京都の藤野豆腐の社長がいるけど、ここも凄いね! 豆腐屋で初めて上場したとか。
 たいしたものです。

 ブランドは「三代目茂蔵」。会社名は篠崎屋。

 知ってる?
 知らないでしょ・・・。スーパーやデパートにはないもの。だって、この人、怒りのあまり、スーパーから撤退しちゃったんだから・・・・。

 業界では後発組。それが小売、卸、外食、FC展開へと拡大して大成功。
 面白いのは、売上の8割を占めるスーパーから撤退しちゃったこと。

 ひどいらしいねぇ、この業界。
 毎年、何百軒という豆腐屋が廃業してるらしい。もちろん、後継者不足もあるでしょう。でも、「後継者がいない」ということは将来の展望がない、ということです。
 最初は小売価格の25パーセント、それが2000年には60パーセントもかすめ取られていたそうな。
 けど、だれも文句を言わない。儲からないのにね。
 で、スーパーのバイヤー様にヘイコラしてるのが常態だったらしいです。

 「いつかこちらから切ってやる」と闘志満々。その機会をうかがっていたらしい。

 チャンスは天然にがり入りの絹ごし豆腐を開発し、直販体制を敷く頃から。
 でも、度胸あるよね。普通、いくら儲からなくたって、8割もの安定収入を捨てることなんてできないもの。
 ということは、よっぽど我慢できなかったんだ。

 それが証拠にこんなことを書いてます。

 「俺はお金、お金という生き方が昔から大嫌いだ。どれくらい嫌いかというと、スーパーマーケットと同じくらい嫌いだ。だから、巨万の富を残したとしても成功だとは思わない」
 世の中、「お金のためなら何だってする!」という人が少なくないのに、偉いものです。

 ところで、世界で初めて開発された「天然にがり絹ごし豆富」。
 これを開発したのが著者。
 かといって、父親から手取り足取り教えてもらったわけではありません。
 しかも、このオヤジさん徹底していて、「お前を雇う気はない。篠崎屋の中で起業しろ」「場所は貸してやる。製造も手伝ってやる。だけど、会計は別にするよ」だって。
 だから、著者は豆腐の製法を見よう見まねで覚え、そして、実験を何回も繰り返して自ら編み出したわけです。
 もちろん、実験すると、豆腐がムダになります。ある時、包丁が飛んできたといいます。無駄遣いする著者に堪忍袋の緒が切れたんでしょうね。

 著者はスーパーに卸してた時でも、ちょっと違います。
 売場でずっと立ってるわけ。で、どういう売り方、買われ方をしたているかをじっと観察。すると、水に漬かった豆腐を取るのをお客さんが嫌がってることに気づきます。
 「濡れるの嫌なんだ」

 で、どうしたか? 全身、白装束、白い長靴、白い鉢巻き、白ぶちの眼鏡で接客。

 「お豆腐ですか? お取りしますよ」
 セルフ販売のスーパーでは画期的なサービス。もちろん、取るのは自分のとこの豆腐だけ。これで売上が二倍になった。
 これは深夜から豆腐作って、寝ないで働いた結果。

 無人店舗も大当たり。小売店(工場直売所)のFC展開でも豆腐が売れればいい、ということで、保証金も月々のロイヤルティも取らない主義。
 外食産業にも挑戦。そして、すべてに成功しているんだよね。

 コストの多くは減価償却。だから、設備投資にお金を使うくらいなら原材料に投資する。そのほうがお客のためになるわけです。
 たとえば、この会社が使ってる大豆。
 普通、一俵の大豆からとれる豆腐は600丁分。だけど、ここでは900丁もとれちゃう。一つは設備の良さ、もう一つは大豆のタンパク質含有量。ウンといい大豆だから、豆乳がたっぷりとれるってわけ。
 250円高。
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2 「面接力」
 梅森浩一著 文春新書 714円

 著者は「クビキラー」としてデビューした人。
 何千人ものクビを切った・・・ということは、逆に採用も数多くしてきたというわけで、本書では面接の極意、プレゼンテーションのコツなどを披露してます。

 面接官というのは、たいてい、就職本、面接本など読みません。だって、別に採用のプロなんかじゃないもの。
 わたしも面接を何回もやった経験がありますけど、その類の本は一冊も読んだことがありませんものねぇ。けど、面接研究を重ねた学生さんや中途採用志望のビジネスマンにも騙されることがない(女性にはよく騙されますけど)。

 どうしてか?

 「ピンと来る受け答えがない」
 「こちらの心に訴えかけるものがない」

 つまり、相手とのコミュニケーションに溝があるんですね。

 このコミュニケーションギャップは大きいですね。 
 会話、対話がうまい人ってのは、コミュニケーションをする時、「どうして、この人はこんな質問をするんだろう?」と常に相手の立場になってものを考える習慣を持ってます。
 これ、大事。

 ところで、面接でいちばん大切なことはなんですか?

 ありのままの自分を表現すること?
 自分を正しく伝えること?

 どちらでもありません。
 合格すること。これがいちばん大切です。優先順位のいちばん上に来るのはこれです。
 だから、誠実さがいくら大事だといっても、バカ正直ではダメなんです。もちろん、嘘つき、二枚舌、裏表があるのはもっとダメですよ。

 「あの子、いいと思って採用したけど、とんだ食わせものだったよ」ではいけないんです。

 「採用することでこんなにいいことがありますよ!」
 こうアピールできるものを持っているかどうか。これがポイントです。

 立派すぎるキャリアも命取りになるから、面接ってのはタイミングが大事ですねえ。
 「こんなに応募があった。すごい人材ばかりですよ」とある社長が小躍りして喜んでるわけ。
 「へぇ、良かったですね。で、だれを採用するんですか?」
 「Aさん、Bさん、Cさんはどうでしょうかねぇ?」
 「いいんじゃないですか? ほおぅ、MBAですか? いいですねぇ、即戦力になるかもね。だけど、だれが使いこなすんですか?」
 「・・・」

 「オーバー・クォリフィケーション」という言葉があります。立派すぎるというか、資格がオーバーしてるというか、早い話が「掃き溜めに鶴」というか、「醜い家鴨の子」というか・・・。
 「残念ながら、うちのような会社ではもったいなくて・・・」
 「うちの社風には合わないと思うんで・・・」
 応募者は採用してもらいたい。けど、あまりに立派すぎて尻込みしちゃうわけ。こんなことは現実にはたくさんありますよ。
 150円高。
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3 「築地で食べる」
 小関敦之著 光文社 735円

 著者はテレビ東京の人気番組「TVチャンピオン 築地王選手権」でぶっちぎりの優勝を遂げた人物。
 で、築地情報では右に出るものはないというホームページ「築地を食べつくせ!」を主宰しています。

 で、本業はなにかというとと、広告代理店勤務なのよねぇ・・・。
 食関連のマーケティング・プロジェクトのリーダーというから、趣味と実益を兼ねてるといえば、兼ねてます。

 この本、著者から謹呈されたんだけど、残念ながら、わたし、まだお会いしたことがありません。わたしが主宰するホームページで「B級グルメ」ってのがあるでしょ。ここで2カ月間にわたって築地特集をしたことがあんのよ。
 で、この時、「築地の寿司はまずい! 気をつけろ!」と非難囂々のコメントを書いてしまったのですが、「その通りです!」とメールをくれたのが著者なわけ。
 ご縁はここからです。

 わたし、毎年、小樽に行きます。「日本橋」という寿司屋が贔屓なんですけど(女将が元イレブンPMのカバーガール)、今年の夏はぼうっとしていて、ねずみ取りに捕まってしまいました(札幌ではいつも「寿司善」)。

 で、観光地小樽だけに、ここも観光客目当てで「まずい寿司屋」が続々とオープンしてんのよね。最悪なのは、北一ガラスのそばにある店。「日本橋」の姉妹店の隣にある店です。
 すぐわかりますよ。なんつったって、呼び込みやってますし、店内に料金表がありませんもの。

 この店、ボラれますから要注意。
 で、オヤジが寿司を握れないときた。握れないのがばれないように、「チラシがお勧め!」と盛んに店主が言ってます。
 もちろん、観光客からのクレームもナンバーワン! けど、蛙の面になんとかで平気の平佐。寿司組合にも入ってないからね(入れてくれないと思うけど)。
 「小樽の恥」「小樽の面汚し」と呼ばれても平気。一見さんを相手にしてるからね。ものすごい商魂ですなぁ。人を騙してもお金が欲しいんですなぁ。疲れるでしょうなぁ

 で、残念ながら築地も同じです。いや、小樽よりひどいでしょうね。観光客の数が小樽の比ではないものね。

 築地というと、寿司屋をイメージする人がほとんどだと思います。けど、「B級グルメ」を見るとわかりますが、わたし、寿司屋は紹介してないはずです。
 ラーメン屋、牛丼屋、カレー屋、ホルモン屋、オムライス屋、定食屋などなど、寿司屋は一軒もありません。

 実際に築地にどれだけの寿司屋があるかというと、場内に10軒、場外に16軒、その他、築地という住所にかまえる寿司店をカウントするとトータル70軒ほど。
 小関さんは中でもお勧めの店を紹介してます。わたしもメールで確認しましたけど、その店を紹介してました。
 ホント、ひどいのあるんだから、築地でも。テレビ受けするある店など、最悪。まずいのなんの。でも、鮪の解体ショーで客寄せして成功してるみたい。どうして、こんな店に客が並ぶのか?
 客が舐められてるんでしょうなぁ・・・。

 「築地で美味しいものを食べるための十カ条」を著者が紹介してます。
1 きちんと情報を集める
2 場内市場を見逃さない
3 裏築地にも目を向ける
4 ケチケチしない
5 寿司と海鮮丼には注意する(たしかに! 小樽もそうだよ)
6 日曜、祝日、休市日には訪れない
7 旬の魚、食べたことのない魚を食べる
8 足繁く通う
9 早く行く
10夜は「築地」にこだわらない

 代用魚ってのもありまして、ほら、味や形が似てるけど、偽物ってやつ。あれ、築地でもあります。
 著者がアドバイスしてます。
1 オオバコの店には入らない
2 呼び込みをやってるような店には近寄らない

 この本は別に寿司屋ガイドではありません。
 築地の歴史とか成り立ちとかを勉強したり、美味いものを食べるならここに行け、というガイドブックになってます。味な店がたくさん紹介されてますよ。
 明日、行こうかな!
 250円高。
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