2004年08月16日「天国の青い蝶」「お別れ作法」「生命のバカ力」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「天国の青い蝶」
 ピート・マコーマック著 ワニブックス 1300円

 この14日(土)封切りの同名映画の原作というか、アナザーストーリーでんな。
 これ、実話です。

 脳腫瘍のために、「余命半年」といわれた少年ピート。
 彼の夢はその蝶を見れば奇跡がわかる、というブルー・モルフォをつかまえること。そのため、昆虫学者として高名なアランの講演会に母親と訪れます、車いすに乗って。

 ピートの願いと違い、母親は体よく断られることを祈っていました。
 が、ピートの部屋に収集された昆虫の数々を見て心が変わります。そして、3人はブルー・モルフォを求めてコスタリカへ・・・。

 そこで経験したことが、3人の人生を大きく変えます。
 まさに、奇跡。
 アランは離婚直前に生まれたまだ見ぬ子どもと合うことを決意。ピートの母親テレサは「死んだ」とピートに伝えていた父親の存在を教えます。なにより、アランの心をテレサは従順に受け容れるようになっていました。

 ピートに起こったのは、まさに奇跡そのもの。「奇跡の蝶」を求めて森を彷徨っていた間に、脳に変化が起き、腫瘍が消えて無くなっていたのです。

 これ、何度も言いますが、実話です。
 「生きている限り、望みはある」
 わたし自身、「難病を克服した」という実例をいくつも知っています。知っていますが、自分自身がその立場に追い込まれた時、自分で自分を励まして生きていけるかどうか、それはわかりません。

 強そうに見えてポキッと折れるか、竹のようにしなって粘り腰を見せるか。人間は強いようでいて弱いですし、弱いようでいて強いものです。

 彼の心を支えたのは「ブルー・モルフォを見たい」「奇跡をこの手でつかみ取りたい」という希望だったのかもしれません。テレサとアランがその希望を支えてくれました。

 絶望的なメッセージではなく、希望の灯火をさりげなく点してくれる人。あなたの周囲には何人いますか?
 200円高。
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2 「お別れ作法」
 さかもと未明著 扶桑社 1200円

 こんな本、出していいのかなぁ・・・。
 これ、かなり実戦的な情報満載だと思うよ。いいのかなぁ・・・。使えそうだよなぁ・・・(まっ、わたしには関係ないけどさ)。

 女心ってわからないもんねぇ。とくにわたしのような経験不足、朴念仁の男だとまったくわかりません。
 その点、著者はレディコミで活躍する売れっ子漫画家であり、男との出会いも別れも経験豊富、質量豊富、で、自分の体験も赤裸々にコクってますから説得力は抜群。

 「女とは魔物であると同時に天使であります。愛する男には惜しみなく与え、憎んだ瞬間、惜しみなく奪うのが女なのです」
 「女は自分が一日でも若いうちに勝負を決めなくちゃいけない。女は男の100倍は計算高いのです」

 げっ、ホントかよ。
 恋愛ってのは、お互いが高まるものがいいよね。あちらが良ければこっちはダメだとか。その逆ってのはどうもねぇ。
 相乗効果ってのが、コンビネーションの極みだと思うけど。

 「二股男に必要な心得」なんて笑っちゃいます。
 1結婚の意志はないことをはじめから明言する。
 2自分の中で優先順位を決め、残しておきたい方を徹底的にかばう。
 3最後に払える限り、誠意を金にして渡す。
 4次の女で幸福になったという話は絶対にしない、見せない。

 なーるほど、ホントに勉強になるわ・・・って、こんな本、読んでていいんだろうか? ほかに読まなければいけない本が山積みされてるのに。どういうわけか心惹かれるバカな男。
 まっ、いいか。

 「ダメな男って一度ヤると一気に距離感を縮めて、とことん女に甘えてくるんです。洗濯させたり、料理を作らせたりしたあげく、やっぱ違うとか言ってくる」
 男はセックスすると安心してしまうけど、女はさらに迷うものね。この迷いって、女にとっては天敵ですよ。男で失敗するのではなく、この迷いで選択肢を間違えるんです。

 で、いい男ってのは、ヤってもヤらなくても距離感が変わらないヤツ・・・だそうです。

 「稀に、恋愛の数だけ女に社会的地位を与える男がいます。うまみのある仕事を与えたり、独立するに十分な支度金を与えたり、一切、自分との関係は黙ったまま、どんどん自分の社会的人脈に引き入れて、社会への足がかりを作ってあげる男。
 こういう男はいくら愛人を作っても、恨まれることはありません。
 むしろ感謝され、女たちから惜しみない助力を与えられたりします」

 ホントかなぁ・・・。でも、そうかもねぇ。

 男が女に与えられるのは五つしかありません。
 1結婚。
 2お金。
 3仕事のチャンス。
 4自信。
 5世の中の渡り方のノウハウを教えること。

 これ、著者のご意見です。
 わたしだったら、何が与えられるかなぁ? あなただったらどう?
 ちょっと考えてみてください。
 男が女に与えられるものって、いったい何がある?

 全世界を敵に回してもその女性を信じること?
 そんなんで許してくれる?

 恋愛感情は幻想にはじまり、幻想が冷めた瞬間から別れの序曲が始まります。つまり、恋って酔っぱらい状況なんですね。
 ズブズブの恋は泥酔状態ってことでしょ?
 酔いが覚めれば、二日酔いで苦しむ人もいるし、けろりとする人もいるでしょうな。慣れれば、どんどん体質も強くなるし、ハードなスピリッツばかり呑んでると肝臓を痛めちゃうしね・・・。

 「月に一度でいいから、会える約束して。一人に慣れるまで」
 これは著者が男にいった言葉だとか。インタバル再会でフェードアウト効果ってか。
 著者が男から学んだこと。それは次のこと。

 「進歩的な男なんてありえない。男はみんな保守的で、新しいことを考えるのはいつも女だけなのだ」
 たしかに・・・。
 200円高。
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3 「生命のバカ力」
 村上和雄著 講談社 880円

 筑波大学教授の村上さんの本。
 十数年ほど前、「ノーベル賞にいちばん近い」と船井総研の船井幸雄さんから紹介されたけど、こちらのほうはまだですね。
 けど、社会に対する影響力はものすごく大きいものがあります。

 遺伝子解読のスペシャリストです。

 われわれが常時使っているのは、全遺伝子情報のせいぜい3パーセント程度だそうです。どう多く見積もっても10パーセントがいいとこ。
 で、残りの遺伝子はいったいなにをしているかよくわからない。
 なにかのきっかけで眠りから覚める遺伝子もあれば、その逆に寝込んでしまう遺伝子もある。すなわち、遺伝子というのは固定されたものではなく、条件次第で働きがどんどん変わるのだそうです。

 「火事場のバカ力」のように、いざというときに遭遇すると、人間はとんでもない能力を発揮することがありますね。
 それと同じように、遺伝子にもバカ力があるのです。

 生体にはありとあらゆる異物に対して抗体を作ることができます。
 人間の場合、百万種類もの抗体を作ることができるそうです。抗体も身体の一部ですからタンパク質でできていますが、では、生体はあらゆるケースを想定して百万種類もの抗体の設計図を遺伝子に書き込んでいるわけではないのです。
 抗体の遺伝子をいくつもに分けて部品化しておき、それを自由に組み合わせて、その都度、必要な抗体を作り出しているのです。
 まか不思議な仕組みが、この生体には備わっているのです。

 人間の場合、六十兆もの細胞の中にある遺伝子はみな同じでありながら、なぜ心臓の細胞は心臓にしかならず、髪の毛の裁縫は髪の毛にしかならないのか?
 細胞が分化すると、不要になった遺伝子は休眠状態に入ってしまう。つまり、OFFの状態になるんですね。ONになった遺伝子のみが機能するわけです。

 「人が変わったようだ」
 「心を入れ替えてやる」
 これはそれまで眠っていた遺伝子が目覚めるってことですね。活性化するってことですね。
 150円高。
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